第1章 ここまでのあらすじ 登場人物
第2章から読まれる方、少し間が空いた方はご利用ください。
第1章あらすじ
毒酒によって命を落としたはずの鬼、外道丸は、気づけば魔法と魔物が存在する異世界の森にいた。
その前に白銀の髪を持つ少女、タマが現れる。彼女は人族として振る舞っていたが、その正体は九尾の妖狐であり、かつて別の世界へ逃げ、その世界の平安の世で外道丸と出会った後に、再びこの異世界へ逃げ帰って来た存在だった。
名をゲドーマルと改めた彼は、争いを望まず、ただ静かに酒を飲み、穏やかに生きる場所を探す。
王都リュシアに辿り着いたゲドーマルとタマは、門番のレオン、魔道具師のドゥール、近衛騎士のリラ、冒険者たちと関わりながら、この世界での生活を少しずつ始めていく。だが、王国の秩序は決して穏やかなものではなかった。第一王女アルティシアは王国を守るために強大な力を求め、魔族の干渉を受けながら、風の古竜アウル=ヴェイルを制御しようとしていた。
古竜の暴走は王都を巻き込む大きな危機となり、タマは武器を取らず、その風の前に立つ。逃げ続けてきた彼女は、そこで初めて誰かを守るために踏みとどまり、アウル=ヴェイルの苦しみに寄り添おうとした。しかし、王国の騎士団とアルティシアの介入によって事態はさらに悪化し、タマは傷つき倒れる。
その時、ゲドーマルは怒りではなく、静かな覚悟をもって立ち上がる。彼は力で世界を壊すこともできたが、最後までその力を振るい尽くすことを望まなかった。そして、彼の呼び声に応じるように、かつての右腕である茨木が、この異世界へ姿を現す。イバラキと呼ばれることになった彼女は、圧倒的な力で王国最強の騎士グラウと近衛騎士団を退け、ゲドーマルはアウル=ヴェイルを縛っていた魔力の痕跡をほどいていく。
その戦いの中で、アルティシア自身もまた、魔族による深い干渉を受けていたことが明らかになる。王女として国を守ろうとしていた彼女の意志には、いつの間にか他者の糸が混ざっていた。ゲドーマルたちは彼女を裁くのではなく、選択を返し、彼女は初めて自分自身と向き合うことになる。
戦いが終わったあと、ゲドーマルたちは王都を離れ、森の洞窟に身を寄せる。そこにはタマ、レオン、ドゥール、イバラキ、アウル=ヴェイル、ノクティス、そしてゴブリンたちが集まり、誰に命じられるでもなく、少しずつ生活の形が生まれていった。隠れ家だった場所は、やがて“棲家”になっていく。
王国も、魔族も、世界の歪みも、何一つ終わってはいない。
それでもゲドーマルは、火の匂いと食事の湯気、隣にいる者たちの気配の中で、静かに盃を傾ける。
斬るためではなく、向き合うために。
彼は今日も、盃を手放さない。
第1章までの主な登場人物
ゲドーマル
黒髪の異国風の男。その正体は平安の世で鬼神として都で恐れられた存在。人喰い鬼として狩られたが、人を食ったことは一度もない。
酒を好み、争いを避けるが、その内側にはこの世界の魔法体系では測れない力を秘めている。左腰には太刀《終座》を佩いているが、彼はそれを抜くことを望んでいない。
タマ
白銀の髪を持つ少女。ゲドーマルと行動を共にする冒険者であり、その正体は九尾の妖狐。第1章では古竜アウル=ヴェイルの暴走に正面から向き合い、逃げ続けてきた自分の在り方にも一歩踏み込んだ。
レオン
王都リュシアの門番だった男。種族や立場に縛られた王都の秩序の中にいながら、ゲドーマルたちと関わることで自分の選択を持つようになる。
ドゥール
ドワーフの魔道具師。ゲドーマルの指輪や翻訳の魔道具に関わる技術者で、魔法や魔道具の異常を現実的に見抜く目を持つ。第1章終盤では、王都の危うさと魔族の技術に対する警戒を深めていく。
リラ・ヴァン・ストライゼン
王国近衛騎士団第三団隊長。《緋髪纏雷》の名を持つ雷の使い手。王女に仕える騎士としての自分と、自分自身の選択の間で揺れ、第1章の終わりには「命令だからではなく、守りたいと思った時に守る」と答えを見つける。
アルティシア・クラウディア・レグナ
レグナ王国第一王女。王国を守るため、古竜アウル=ヴェイルを制御しようとしたが、その行動の裏には魔族による干渉があった。第1章の終盤で、自分の中にあった支配の痕跡と向き合い始める。
ルキアス・セリウス・レグナ
レグナ王国第一王子。アルティシアの兄。王国の混乱の中で、王子としてだけではなく兄としてアルティシアに向き合う。
ハル
ルキアス側に立つ第四団近衛騎士隊長。軽い口調を見せるが、状況判断と実力を備えた人物。第1章終盤ではイバラキの力を目の当たりにし、自分の刃が届かない場所を知る。
アウル=ヴェイル
風の古竜。アルティシアによる制御の影響を受け、王都を揺るがす存在となったが、タマとゲドーマルたちによって本来の在り方を取り戻していく。
イバラキ
ゲドーマルを「お館様」と呼ぶ鬼の女。異なる世界からゲドーマルの呼び声に応じて現れた、彼の最高の右腕。第1章終盤ではこの世界で暮らすために“イバラキ”と呼ばれることを受け入れる。ゲドーマルとイバラキが鬼であり、タマが妖狐であることは、仲間たちにも明かされている。
ノクティス
闇精霊。ゲドーマルやタマたちのそばにいる小さな影のような存在。言葉は多くないが、場の空気や危険に敏感に反応する。
アウレオン
エルフの冒険者。剣技を主とし、森精霊シルヴァンの力を併せ持つ実力者。第1章の終わりには、自分の居場所と立つべき場所の違いを見つめ、エルフの国へ戻る決意をする。
シオウ
冒険者ギルドのギルドマスター。王国と冒険者の間に立つ現実的な人物。王都の危うさを理解し、ギルドとしての線引きを選ぶ。
カイラン・ブランク
巡道教に属する聖騎士。魔族や王国の異変を追う中でゲドーマルたちと関わり、古竜の一件では王国と教会の間に立つ形となる。第1章終盤では、ゲドーマルやタマの存在を報告から外し、彼らが利用されることを避ける判断をした。
ミルザ
魔族側の人物。軽い口調を崩さないが、王国や古竜を巡る盤面に関わっている。第1章終盤ではイバラキによって右腕を斬られ、ゲドーマルたちを無視できない存在として認識する。
ヤグ
魔族側の魔道具師。アルティシアや古竜の件に深く関わる技術者。冷静に状況を観測し、同じやり方は通じないと判断している。
グラウ・アイゼン
王国近衛騎士団第1団団長。王国最強と呼ばれる男。アルティシアの命令の刃として動いていたが、イバラキとの戦いで敗れ、第1章終盤の王国側の大きな転換点となる。




