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神獣の執刀医 Case2 消化器内科医トモマサ・ウジハラ「ヤマタノオロチに対する経食道内視鏡止血術」4

2209 VCE投与時刻

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「ごめんなさいクローディア。腐食性毒素の同定には成功したのだけど、それに完全に対策することはできなかった。防護フィルムで全体を覆うくらいしかできていないわ」

「はい」


ROAの総力を結集しても3時間という短い時間ではカプセルを防護フィルムで包む程度しかできなかった。

ただ体内を進むだけならそれでいい。しかし今回は…


「それにウジハラの状況次第では船外活動も考慮される。ウジハラを救出すると同時、この防護フィルムは意味をなさなくなる。率直に言うわ。腐食性毒素が十二指腸レベルで無毒化されていなければあなたは死ぬ」

「覚悟の上です」


居並ぶ小型潜水艦サイズのカプセルは8つ。

1つは私が乗るもの。あとの7つは体内に酸素と電源を届けるためのものだ。

用意できた保護フィルムは1つ分だけ。無人機7つは防護無しで投与せざるを得ない。


再び内視鏡検査着を着用しつつデイレ先生と最終調整を行う。


「ヤマタノオロチ!!これからあなたにはこのカプセルを飲み込んでもらう!!」

「XXXXX (ふむ)」

「このカプセルは生体に無害な金属と複合樹脂で作られている!! 万が一体内で破損してもあなたに実害はない!! 中の人は死ぬけど!! だから安心して飲み込んで頂戴!!」

「XXXXXXXXXXXXXXXXX (自ら我の体内に飛び込むなど、人の子には物好きが多いのだな。かまわん。酒の肴にちょうど良い土産話になる。)」

「いや、酒はやめろよ。また血を吐かれたらたまったもんじゃない。」

「XXXXXXX (む、それはまぁ、うむ……。努力するさ……)」


こいつは絶対また血を吐くな……。



2231 幻獣ヤマタノオロチ空腸内

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ロープが切れてから4時間が経過した。

本来一時的な酸素供給不足に対応するための非常回路にしてはよく持ったほうだろう。


命綱が切れた後、ほとんど抵抗する事もできず小腸まで流されてしまった。

普通なら噴門や幽門と呼ばれる胃の出入り口で引っかかるのだが、それをあっさり通過してしまったのは消化器内科医としての性だろうか?


十二指腸を通過した時救出が極めて困難な状況になったのを悟った。

正直諦めようかと思った。

開腹手術をあの厳格な消化器外科医が許すとは思えない。むしろ許したら自分が怒る。

となると自分の知る限り救出手段はない。


こういう時に自分の限界を感じる。

自分は他の幻獣医と比較して頭脳で劣っている。

幻獣医に選ばれたのも第30番目の候補だったとからしい。

自分よりも上の奴らはことごとく推薦を蹴り倒して順番が自分に回ってきたというわけだ。

推薦順位1番や2番で選ばれた天才共の会話にはたまについていけない事がある。


例えばもし落ちたのがクローディアだったら?

あいつなら食道や胃のような蠕動の激しい器官は避けて、はじめから十二指腸を狙ったはずだ。

外科の幻獣医は思い切りがいいからな……。停滞するのではなく今頃盲腸付近まで駆け抜けているだろう。


自分だけがどっちにも振り切ることができずに失敗に失敗を重ねた挙げ句、この状況というわけだ。

それでも……。


「悪いけど少々悪あがきさせてもらおうか。」


小腸に存在するヒダの一つに手をかけつつ自分に言い聞かせる。

内視鏡操作のために日々酷使し続けた腕の持久力は尋常ではない。

5時間だろうと10時間だろうとしがみついてやる。


これが俺が幻獣医に選ばれた理由。内視鏡操作の腕なら負ける気がしない。


警報と共に呼吸器が停止した。

これで酸素供給はなくなった、遠からず低酸素血症で意識を失うだろう。

頭痛が生じる、胃液が食道を逆流する。

それでも諦めないのは俺の為に限界まで努力している仲間が居ると知っているから。


視界が暗転していく。俺の限界はここらしい。

でもこれは諦めじゃない。俺がぎりぎりまでつないだからこそバトンが誰かの手に渡るのだ。


うっすらと白い光が見えた気がした。



2235 トモマサ・ウジハラ CPA(心肺停止)

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2237 SB3コヴィディエン級カプセル内視鏡 MillCam 船内

    バイスタンダーCPR(心肺停止後すぐに行われる心肺蘇生)開始

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2339 ROSC(心拍再開)

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