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78) 星の下の血塗れの舞踏

広大な草原。


風が古の呪いを囁き、空には砕けた剣の欠片のような星々が散らばる。


遊牧民の部族が野営を張っていた。


焚き火が獣のように咆哮する。


乾いた枝を喰らい、影を踊らせる。


戦士たちは半円になって座る。


太陽と風に焼かれた体。


軽い毛皮と布だけ。


筋肉質の胴体が露わだ。


無数の戦いの傷跡が刻まれている。


男も女も、同じく獰猛。


笑い声を上げながら、馬乳酒の皮袋を回す。


倒した敵の血を混ぜたやつだ。


風の民。


嵐のように自由で、飢えた狼のように残酷。


中央にハーンが座す。


草原の岩から削り出されたような体躯。


高い。


肩は世界を背負えそうだ。


目は焚き火の炭のように燃える。


長い黒髪は敵の骨で飾った三つ編み。


腰には曲刀。


千の命を味わった刃。


城壁の陰に隠れる弱い支配者とは違う。


人間の姿をした嵐。


カリスマの化身。


一言で戦争を起こし、嵐を鎮める。


今、ハーンは手に髑髏を持っていた。


つい先刻落とした城の戦利品。


地平線に残る廃墟が、オレンジの残光を夜空に放つ。


まだ温かい血が顎を伝う。


一口飲む。


戦士たちが遠吠えのように歓声を上げる。


「草原のために! 血のために!」


ハーンの声が響く。


心臓が速く鼓動する。


焚き火の近く。


粗末な縄の輪の中で。


捕虜たちの余興。


落城した城の二人の騎士。


かつては輝く鎧を誇った貴族。


今は膝をつき、泥と血にまみれている。


遊牧民が笑いながら、互いに戦わせる。


「戦え、鉄の虫ども! 自慢の剣を見せてみろ!」


一人の戦士が煽る。


錆びた剣を投げ渡す。


疲弊し、屈辱にまみれた騎士たち。


武器を交える。


鎧が奴隷の鎖のように鳴る。


サー・エルドリッチ。


老練な体躯、灰色の髭。


サー・ヴァルガー。


若く、衝動的。


瞳に怒りの炎。


死に物狂いで斬り合う。


だが動きに絶望が滲む。


ただの勝者の娯楽だと知っている。


ハーンは見据える。


唇が嘲笑に歪む。


突然立ち上がる。


髑髏を脇へ置く。


足音は雷鳴のよう。


野営が静まる。


戦士たちが道を開ける。


ハーンが輪に近づく。


革の鎧を脱ぐ。


一枚、また一枚。


草原の精霊の刺青が刻まれた筋肉が露になる。


鎧を泥に投げ捨てる。


曲刀が鳴って地面に突き刺さる。


騎士たちの足元。


「見ろ」


ハーンの声が空気を裂く。


「鉄に隠れる者ども!


鎧の裏で怯える臆病者だ。


城は檻。


そこで腐り、風と太陽を恐れる。


我ら風の子は素手で壁を裂く!


鋼が強さだと?


違う。


それは弱さを隠すだけの輝きだ。


我、風のハーン。


お前たち二人に挑戦する。


武器は好きに選べ。


騎士の誓いとは何かを、その鉄の殻なしで見せてみろ!」


騎士たちが凍りつく。


兜の下で顔が青ざめる。


遊牧民の目が興奮に輝く。


エルドリッチとヴァルガーが視線を交わす。


希望が一瞬、灯る。


二人とも完全武装。


胸当て、脛当て、閉じた兜。


手に重い鋭い剣。


対するハーンは上半身裸。


武器なし。


ただ拳と獰猛な笑み。


「お前……死ね、蛮族!」


ヴァルガーが跳ね起きる。


剣を振り上げる。


戦いが始まる。


一瞬で。


エルドリッチが左から斬り込む。


剣が首を狙う。


ハーンは黒豹のように身を翻す。


鞍と戦いに鍛えられた体が風となる。


腕を掴む。


ひねる。


骨が鳴る。


剣が飛び、落ちる。


ヴァルガーが突進。


横薙ぎに払う。


ハーンは潜り込む。


足を払う。


騎士が転がる。


鎧が空の樽のように鳴る。


「鉄が弱さだ! 遅くする!」


ハーンが叫ぶ。


筋肉が弓の弦のように張る。


エルドリッチの胸を蹴る。


胸当てが凹む。


騎士が後ろに吹っ飛び、血を吐く。


ヴァルガーが立ち上がる。


絶望の弧を描く剣。


ハーンは素手で受け止める。


血が噴く。


顔一つ歪めない。


咆哮と共に剣を奪い、投げ捨てる。


拳が兜にめり込む。


金属が潰れる。


面頬が飛ぶ。


恐怖に歪んだ顔が露わになる。


二人が再び襲う。


同期した動き。


騎士の大会さながら。


エルドリッチが足元を狙う。


ヴァルガーが頭を。


ハーンは跳ぶ。


空中で一回転。


エルドリッチの背後に着地。


肘が背に突き刺さる。


鎧が裂け、騎士が泥に突っ伏す。


ヴァルガーが振り向く。


遅い。


ハーンは喉を掴む。


持ち上げる。


地面に叩きつける。


大地が震える。


終幕は残酷で壮絶だった。


エルドリッチが這い上がろうとする。


ハーンが腕を踏む。


骨が砕ける。


兜を剥ぎ取る。


拳が顎を砕く。


首がのけぞる。


命の灯が消える。


ヴァルガーが剣に這う。


脇腹に蹴り。


肋骨が鳴る。


ハーンが髪を掴む。


耳元で囁く。


「鉄は救わなかった。


草原は常に勝つ」


最後の拳。


二人目も静かになる。


野営が爆発する。


歓声。


ハーンが立つ。


自分の血と敵の血に塗れて。


原初の獣のように咆える。


咆哮が草原に響く。


焚き火さえ震える。


そして。


歓声の中。


踊り始める。


野性的な、原始の舞。


倒れた体を回り、跳ぶ。


拳を空に打ち。


渦のように回る。


筋肉が炎に輝く。


瞳は勝利の狂気。


戦士たちが加わる。


地面を叩く。


夜が自由と血のリズムで満ちる。


◇◇◇


(俺は風だ。


鉄の檻に閉じこもる奴らを、素手で砕いた。


これが俺たちの生き方。


草原は永遠に俺たちのもんだ)

皆さん、こんにちは。久しぶりの更新です。


また2週間以上空いてしまって、本当に申し訳ありません。


待ってくれていた方がいるのはわかってるし、黙ってるのが一番迷惑だってこともわかってます。ありがとう、まだいてくれて。


正直に言うと、今は定期更新を約束できる状態じゃないです。


英語圏のサイトで別の作品を書いてて、そっちの流れが止まらなくて。


向こうの読者が増えて、反応も来て、つい優先してしまってる。


こっちは少し燃え尽き気味で、無理に書くとクオリティ落ちるのが自分でもわかる。


だから「明日から週一!」みたいな派手な宣言はしません。


この作品は投げてない。


ハーンと草原は、ちゃんと続きます。


気分と体力が戻ったら、次の話を書きます。


1週間後かもしれないし、1ヶ月後かもしれない。正直、わからない。


でも、絶対に戻ってきます。


残ってくれてる皆さんのコメントやブックマークが、ちゃんと見えてます。


それが「やめんなよ」って言ってくれてるみたいで、助かってる。


次の章でまた会いましょう。いつになるかわからないけど。


(作者より)

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