主人公
◇帝都ゲルバド国境付近・1ヶ月後◇
国境付近のこの森にはCランクのモンスターが多く出現すると言われていて、現在海斗を含む5人でその討伐に来ていた。
やはり僕には才能があったようだッ!一般人の限界と言われているBランク冒険者を1ヶ月で撃破!つまり僕は一般的な才能から逸脱した優秀な人材ッ
「ふふ、やはり僕は主人公のようだな」
「どうされました?カイト様」
赤髪の女性が話しかける。この者は同じパーティの赤魔道士メイア、海斗が所望した美女の中に入っていた宮廷魔導士だ。
「いや何でも無いさ、ただ僕がやはり勇者に相応しいと言うだけさッ!」
「はい♪カイト様は正真正銘勇者です!」
ちなみにパーティの皆には海斗の固有スキル魅了眼が使用されている、つまりはハーレム状態だ。他のメンバーも見た目だけで選ばれている為、メンバー構成が槍使い1人、魔導士が2人、僧侶が1人、盗賊が1人と前衛の海斗に負担が大きい構成となっている。
「カイト様!こちらに亜飛竜が接近しています!」
「何だと?!」
盗賊のルトが言うなら間違いないだろう…だがそれが問題だ。亜飛竜はAランクモンスターだぞ?今の僕に勝てる相手なのか…
「カイト様なら余裕ですよ!」
「ん、カイトなら余裕」
「で、ですが──」
メイアの発言に青魔導士のティアが賛同する。ただ1人僧侶のミアは海斗を心配しているが、他のメンバーに遮られて発言を取り消されてしまう。
(不味いぞ!ここで勝てないから逃げよう!などと言ったら幻滅されてしまう…魅了眼で魅了は済ませているが僕が望むのは無理に惚れさせるのでは無く純粋なハーレムッ!まぁ下準備で惚れさせはしたが…)
「カイト様?どうされましたか」
「い、いやメイア、何でも無いよ」
そう迷っていると前方上空から竜の咆哮が聞こえてくる。この状況下で出現する竜など一択、そう亜飛竜だ。
「チッ、やるしか無いか!」
「ギュガァァァッ!」
「風紋一閃!」
シュンッ
疾風の一撃が亜飛竜を捉え、放たれる。だが速度が僅かにならずに空中でひらりと避けられ反撃を喰らってしまう。
「ギャウッ!」
「ティア!氷魔法を──」
皆の方向を見るとそこには誰もいなかった。そして海斗は悟った、自分は見捨てられたのだと言うことに。
「ギャガァ!」
困惑している海斗など気にせず放たれるのは亜飛竜のブレスだ。灼熱の炎は瞬く間に海斗に接近し、触れた者を焼き尽くす業火となる。
「我命ず、暴風鎮まり、凪げ!暴風薙ぐ尾!」
省略詠唱を使い何とか直撃を避ける。無詠唱よりは速度が劣り、フル詠唱よりは威力が低い省略詠唱だが今の状況下だと十分に役に立つ技術と言えるだろう。現に業火を薙ぎ払い、追撃を与える隙が生じた。
「風紋投擲ッ!」
自身の槍を投げ、亜飛竜を貫こうとする。
「ギャガ…」
だがその投擲された槍は亜飛竜の羽を貫くのみで致命傷には至らなかった。そして得物失った海斗は予め無詠唱で発動していた魔法を使う。
「暴風薙ぐ鞭!」
風の鞭を使い、投擲した槍を手元に戻すことに成功した海斗は次の一撃を放つ為に構に入る。
バサッ!
「ギュアア!」
「増援だと?!」
無慈悲にもやってきたのは3匹の亜飛竜であった。3匹はブレスの準備をし、喉が赤く染まっている。次の瞬間には3匹による豪炎が放たれ、海斗はなす術なく灰燼と化すだろう。
(僕はこんなところで死んで良い人材では無い!何か、何か手は?!)
「ギュ…ガァ?」
グチャッ
先程でブレスの準備をしていた3匹は突然謎の力によって肉塊に変貌してしまった。何が起きたのかはその場に居合わせた海斗と生き残った初めの一 1匹も理解しておらず、ただ立ち尽くしている。
「手を出したらダメだったかしら?まぁ中々のイケメンだし…助けちゃって良いかしら?」
そう言い現れたのは露出の高い服を着た女性だった。胸元が大きく開いた服装をしていて髪はピンクの長髪、妖艶な笑みを浮かべながら海斗に接近して顔を触る。
「っ?!」
「まぁまぁそんなに警戒しなくても良いのよ?お姉さん悪魔だけどイケメンには優しいから♪」
「悪魔…」
悪魔だと?僕が知っている知識だと悪魔は人の外見に近づくほど上位な生物…この女は人間にしか見えないと言うことはもしかして悪魔王?!
「ギュ、ギュア…」
「あら、まだ居たのね」
グチャッ
妖艶な女性から視線を向けると亜飛竜は他の3匹と同じく肉塊とかした。海斗の危険察知スキルは異常なまでの警戒音を鳴らし、主に直ちに逃走せよと伝える。
「あ、貴女は誰なんですか…」
「私?私は七つの大罪第6柱、色欲よ、気軽に呼んでね♪」
(大罪だと?!そんな大物が何故ここに…?)
思考を巡らせるが蓮兎と違い高速思考などのスキルを所持していないので考えを巡らせる前に色欲が喋り出す。
「君、私の加護を受ける気は無い?憤怒には暴食の殺し方を命じられてないし!好きに殺していいわよね?」
「加護…だと?」
この世界において加護持ちは希少だ。一部を除いて加護は生涯に一度しか付与できず、与える者を厳重に選ぶ必要があるため余程の人格者じゃ無い限りは獲得は難しいだろう。
「さっき女の子達に逃げられてたわよね、私の加護を上げればあんなやつらを従えるなんて簡単よ?なんせ私は色欲を司ってるからね」
一瞬の沈黙の後に海斗はそれを了承した。そしてその後帰還した海斗の性格は更に荒れ、欲に忠実に動くようになり、金を、酒を、そして何より女を欲したと言う。




