66話 逃走劇
「抜刀ッ!」
万物切断を使用した抜刀攻撃!
相手が神だろうと何だろうと全てを両断するこの一撃ならッ!
ーーパリンッ
「その技だけは警戒してたからね、対策バッチリ!」
「刀がッ?!」
「武器の時間を加速させて風化させたんだよ、ざっと100年くらいは加速したかな? でももう魔力が足りないよ〜! 神じゃ無いんだからそんなに魔力量多く無いからね? 私」
「なら作戦変更、冥府ノ大地揺ルガセ」
この魔法は触れてる箇所に振動を与える魔法、つまり零距離で当てれば逃れることの出来無い地獄が完成する。
「零距離は卑怯じゃ無いかな〜?」
「そうか? ならもっと追加な!」
暴風穿風の一点特化を追加で放つ、これなら流石に致命傷を与えられるんじゃ無いか?
「女の子に向かって酷いなぁ、そんなんじゃモテないよ?」
「モテなくて結構ッ! 轟脚!」
ー」ドゴォォンッ
「くふっ……」
鳩尾に命中した轟音はそのまま仮面の女を近くの大木まで蹴り飛ばし、木にめり込ませる事に成功する。
次いで現れたのは冥府ノ大地揺ルガセによる振動攻撃、これにより多大なるダメージを受けた仮面の女は何かの魔法で黒の障壁を生成する。
「本当に女の子相手にする技じゃ無いよ? 胸が小さいからって体を傷つけて良い理由にはならないからね?」
「胸? あぁすまんそれ正面だったのか、背中かと思ったよ、悪かったな」
「あ、それ禁句だよ? 私相手に1番言ったらダメだからね?!」
煽りは効いてる、技も着実にダメージを与えてるしこのままなら押し倒せるか?
煽りで判断能力が鈍ると良いんだが……
期待はあまり出来ないかな、まぁ煽るのはやめないけどな!
「でも本当に魔力と時間が無くなってきたから今回はお預けかな〜」
「逃げるのか? 神の使徒とか名乗ってるやつがただの人間から?」
「人間じゃ無くて混血でしょ? だからセーフ、まだ力を引き出せて無いけど十分脅威だもん」
力を引き出せて無い?
確かに混血の力とか何一つ知らないけど……
それとも負け惜しみか?
「そろそろ私は逃げに徹しようかな? 怖いもんね」
そう言うとあたりの空気が揺らぐ、そして時間が止まり仮面の女は逃走を図る。
「残念、これが動けるんだよなッ」
「気づいちゃったか〜、厳しいなぁ」
こいつが時間を止めれるのは自身を半径にしたドーム型になってるのでは無いか?
そう俺は錬成を使い木を操って確認すると範囲外と思われる所から伸ばした木は先程のように動けたが、範囲内から動かした木は時間が止まり壊すことは出来ても動かすことは出来なかった。
「つまり範囲外から範囲内に入り直せば時間はたまらないってことだよなぁ?!」
「私が時間を止める時に範囲外に瞬間移動したね? それは反則だと思うな〜」
「時間を止めてるやつに言われたく無いなッ!」
時間止めの対処法はわかった!
だがそれで勝てるかと言われたら厳しいな……
こちらが対応してきたら現在使ってる時止めを解除して他の魔法に全魔力を注ぐかも知れない。
「これは負荷が強いからやりたくなかったんだけど……しょうが無いよね? 肉体加速」
「何も変わって無いが不発かぁ? なら蹴り飛ば──」
ーーポンッ
瞬き1つの内に仮面の女は蓮兎の背中に到達し一度軽く叩く、予想外の箇所に力が加わったことで僅かな力で重心が崩れてよろける。
「残念成功してるんだな〜これが」
「負荷……自分の体の速度を上げたな?!」
「正解! よく分かったね、でももう遅いよ? このまま逃げちゃうもん!」
そう言い残し天を軽く蹴りながら空中を走り抜ける。
辛うじて目で追える速度なのであまり加速は施していないのだろうが今の蓮兎の魔力を考えると辿り着くのは不可能に近いだろう。
ーーバタンッ
蓮兎は疲労でその場に倒れ込む。
10万オーバーしていた魔力は1000を切り、立つことも困難な状況だ。
今モンスターが来たら終わりだな、などと考えながら蓮兎の瞼は静かに落ちていった。
◇ ■■・代行者自室◇
ここは■■と思えないほど黒で構成された部屋は木のテーブルなどがあり、ベットは無いが人間が生活するには十分なスペースと家具が置いてあるごく普通の空間だ。
「先輩〜! 可愛い後輩が戻ってきましたよ」
「予定より遅かったですね? これはお仕置きが必要でしょうか……」
仮面の男が「お仕置き」と言うと仮面の女は血相を変えてそれを否定した。
素顔は隠れているのであくまで推測だがその仕草からして相当焦っているのだろう。
「ふむ、まぁ今日のところは許して差し上げましょうかね。それより報告を」
「ふぅ危なかった……よし、分かりました! 報告は転移者達にペナルティを説明したのと多少の交戦が起こりました。ですが想定以上に蓮兎と言う人物は力を持っていて私も苦戦するほどで──」
「交戦は避けるようにと言ったはずですが? まさか戦ったんですか?」
これがアニメの世界であったら「ギクッ」と言う効果音がつきそうなほどに動揺した仮面の女は慌てて話題を変える。
「そ、そう言えば最近何者かに天使が殺されたらしいですね〜! 私達も気をつけないと何が起きるか分かりませんし!」
「ふむ、天使を殺したのは確か人間でしたね? 私が人間程度にやられる器だと言いたいのですか?」
「ゲッ、いやそう言うわけじゃ……」
「後でお仕置きが必要ですね」
その日の■■には女性の悲鳴が聞こえたのはごく一部の者だけである。




