289話 穿つ弾丸
自立して起動している鎧の軍隊、おそらくは双玉と同じ飛鉱石を使って魔力をあらかじめ込めての自立を可能にしている。
まぁ双玉はマニュアル操作、腕が2本増えたような感覚で状況に合わせて動かさねければならず操作が難しい。
「自立思考、相当な高価な宝石を使っているのだろうな。全て壊してもいいのか?」
「できるものならやってみろ。どうせ戯言だ」
「なら遠慮なく壊させてもらおう!」
雷天の冷却時間はまだかかる。流石に蒼天よりも威力が高いからか冷却時間も比例して長いな。
だがマニュアル操作による打撃は可能、蒼天と同時に動かし鎧の軍を退ける。
その間に私は大元を叩くッ!
ーーギィィィッ!
魁蕾に接近、短剣での斬撃を試みるが当たり前に魁蕾の得物である大剣に阻まれる。
「軽いな」
「それはどうかなッ! 火薬媒体ッ!」
刃の背後から火薬を爆ぜさせ推進力を獲得、もちろん私にも被害はあるが元々は自分の体の一部、多少なりとも威力軽減の効果はある。
「ッチ、流石に痛いがな」
前衛職の防御極振りならダメージは皆無に等しいだろうが私は後衛職の攻撃力振り、自傷ダメージで出血はもちろんする。
魁蕾は鎧が多少焦げる程度の被害になっているが先ほども言った通り私は出血、その返り血はちゃんと浴びせてきた。
「爆ぜろ」
命令と同時に私の血は火薬に変化、後は指を鳴らすと同時に発動したFランク炎魔法【着火】を使えば大爆発を起こす。
体が鉛のように重い、出血が激しいのだろうが治すのは最低限で止め流血は武器として使う。
「少し煙いな。この程度か?」
黒煙から帰還した魁蕾は余裕の表情で少し咳をする仕草だけをした。
まぁ全身鎧だから本当にそんな表情をしているか知らないが感だ。
「さっきから人を煽るのが好きなのだな魁蕾、いつか足元を掬われるぞ?」
「それは怖いな。だが退場のお前に何ができる」
確かに最低限の治療をしているから耐えているが、本来なら即巫女様の魔法が発動、強制退場となるだろう。
鎧の軍勢とSランク冒険者の同時対処、しかも常にマニュアルで双玉を操り鎧を対処し続ける。
その過程で自身の体の操作が疎かになり過度な動きをすれば双玉に向けるリソースが無くなり停止、本当にこれは人間用に創られているのか?
「さぁ皆さん! この展開を予想した者はいたでしょうか?!正直に言ってシルヴィア選手は第一回戦の相手であったエリフ選手との戦いでは鎧に苦戦しギリギリの勝利、この対面は負けてしまうのでは? と考えた方も多いでしょう! ですが見てください! 新たに使い出した2つの銃(?)を使い互角以上に競り合っています!」
実況が何か言っているがあまり耳に入ってこない、それ程に負傷が激しいのか?
ただ聞こえた互角以上の言葉、そんなわけが無い。
このままいけば私が順当負け、この状況から入れる保険などありはしない。
そんな簡単に奇跡が起こったら世界はもっと豊かになっている。
「小細工も終わりか」
「そうだな。だから強行突破ッ!」
蒼天は魁蕾に集中させ私はその場でしゃがんでスナイパーライフルによる狙撃を試みる。
雷天はその場に残り私の護衛、ただ護衛があったとしてもそれもマニュアル操作、集中力を使う狙撃とは不向きだがそれしか無い。
それに全ての鎧を雷天のマニュアル操作だけで事足りるはずが無い。
「……!」
「邪魔だッ!」
無言で距離を詰め、そのまま刃を振り下ろす鎧を蹴り上げ核となる宝石を一撃粉砕、蹴りに爆薬を混ぜたから流石に一撃だ。
外見だけでは分からない核の位置を把握し一撃で屠る、そうしなければ反撃を喰らって終わりだ。
本当に嫌になるよこんなの、それでも私は後に託すために、いや自分が満足するために戦う!
ーーギギギ!ガンッ
「ッ?!」
蒼天を動かし魁蕾の動きをその場にとどめ、その間に私が狙撃する。
放った銃弾は多少兜と拮抗の後に見事貫通、顔の中心を穿つには足りなかったがあの位置なら左耳を削いだだろう。
だが足りない、もっと速く、もっと硬く、もっと貫くイメージを……!
「次は頭部破壊だ」




