206話 パワーレベリング開始
◇王都セイクリッド・天刻の白砂◇
ここは王都から遠く離れた最果ての土地、砂漠のように広大に広がる砂浜は海が見えないほどにどこまでも続いている。
観光地としても人気を誇る美しい地形だがそこに鳴り響くのは万を超える軍勢の地響き、どこから来たのかも全て不明、ただそこには1人の悪魔が軍を束ねて進軍していた。
「はぁはぁ……疲れました」
「私も疲れたよぉ! 暴食さん確認って何するの? まだ対策も何も無いけど」
私たちはこの地に観光!……ではもちろん無くて視察って事で良いのかな?それで来た!
そして今私たちの目の前には1万を超える軍勢、いやこれもっといる気がするけど気のせいだよね……?
「これ1万どころじゃ無いな、その倍はある。もう小国との衝突規模だぞ」
「気のせいじゃ無かった……」
総勢2万、それに対して私たちの戦力は私、暴食さん、シルヴィアちゃん、アルト君、もしかしたら蓮兎君もだけど……
ノエルさんとかルノアさんも参戦してくれるとは思うけど王都はどうだろう。
今の【ツクヨミ】には信頼の欠片も無い、相手が蓮兎君を狙ってると分かったなら差し出せば良い。
そんな考えになってしまったら私たちは大罪と国、両方から狙われる羽目になってしまう。
そうしたら流石に敗色濃厚だ。
「このペースならあと2日程度で辿り着くってのも間違ってなさそうだな」
「どうするんですかこれ、ここで数減らします?」
「見えないがおそらく束ねてるのは憤怒確定、あいつなら俺の存在にも気がついてるだろうから刺激したら普通に襲ってくる。ここで争うのは避けたい」
私たちの勝率が少しでも上がるのはノエルさん、ルノアさんのSランク冒険者さんの協力があってのことだ。
もしかすると最初の発見者である私たちの知らないSランク冒険者【魁雷】ももしかしたら協力してくれるかもしれないけど……
「それじゃあ帰るんですか? 頑張って走ってきたのに……【堕天化】を使えば足速くなったりしないかなぁ」
「それだったら僕にもそのスキル使わせてください……肺が張り裂けそうですよもう」
今回天刻の白砂に来たのは私、アルト君、暴食さんだけだ。
何でよりにもよって体力無い2人を呼び出さなだろうか、久々の運動で疲れちゃったよ。
……運動しないと太っちゃうかなぁ。
「帰る? 何言ってんだよ勿体無い。こんなに良いレベリング方法があるんだからな」
「……? 目立つから戦いたく無いんじゃ?」
アルト君が暴食さんに問う。
「あいつは俺には激しく興味を示す。気色悪いくらいだが……つまり俺が戦わなければ良いんだよ、お前らはレベルが低いんだからレベル上げにはうってつけだろう?」
「えっと……相当あの兵士強そうに見えるんですけど」
遠くに見える兵士は黒く染まっていたり血のような紅で染まっている。
絶えず呪詛のような事を繰り返して呟いていて、中には翼の生えた天使のような存在も確認できた。
少なくとも私より強い存在がぽつぽつと確認できる。
「パワーレベリングってやつだろ? 蓮兎に聞いた事がある」
「それはゲームの話で……いやでも強くならないと……」
「キョウカさん?! ま、まさか戦ったり──」
私は思考を巡らせた。
そしてたどり着いた答えはもちろん──
「よし! 頑張ろうアルト君!」
「はぁ……了解です副マスター」
文句を垂れながらも得物である短剣を構える。
私も獲物を……って無いんだよね!
生前使ってた纏白の大杖はもう無いし武器を作れる蓮兎君は眠ってるし市販品だと性能低いし……
て事で得物無し!魔法と肉体言語で頑張る!
「せっかくなら試してみたらどうだ? 固有スキル」
「まだあんまり説明欄読んで無いんだけど……確かに良い機会かもしれない! よし【堕天化】発動」




