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ずっと一緒に  作者: 川崎 春
隣国編

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45 神様(仮)

『苦そうになっているな、どうした?』

「神様(仮)」

『かっこかりって……』

「それで、何の御用ですか?」

 ロザミア様の事で心が一杯一杯だから、お話相手を出来る状態ではないのだ。


『礼をしたい』

「エリーゼ様の記憶を返してくれるのですか?」

『それは無理だ』


 幸せで楽しい記憶は甘い、そして悲しい記憶はしょっぱい、怒りの記憶は辛い、苦しいと苦い。主に記憶に絡まった調味料……感情が原因だそうだ。そして食べてしまえば戻って来ない。

 エリーゼ様の甘くてしょっぱい記憶を思わず食べてしまった責任はとても大きい。契約は履行されたのだから、二重取りで契約違反は神様(仮)なのだ。


 こういう取引で不正な事をすると……元居た世界との通路が狭くなっていくそうだ。理屈は分からないが、結果神様(仮)とそのお仲間は、人で言う所の窒息死をする事になるそうだ。

 この事が不安なのか、私の夢にたまに出てきて不安をぶつけてくる神様(仮)。

 今日でなければお礼の事を色々考えられたけれど、今は考えられない。


「少し待ってください」

『それでは困るのだ。通路が狭くなってきて苦しい』

 自業自得だ。

「だったら、王妃様と双子のお子様を助けて下さい」

『分かった』

 目が覚めた。

 自棄になって言ったのに……。


 それから数か月後。


 まだ暗いのに、外で慌ただしい物音がする。

 ガウンを羽織ってそっと扉の外を覗くと、クリス様が速足で歩いて来る所だった。

「起こしてしまったね。ごめん」

「何か、あったのですか?」

 クリス様は少し黙ってから言った。

「ロザミア様が産気づいた」

 ロザミア様は死を覚悟していた。子を諦められなかったのだ。子はまた出来ると言う者も居たが、ロザミア様は拒否した。……陛下は痩せた。王としての威厳は増したが痛々しい。


 皆が、ロザミア様とお子様方の無事を祈っていた。


 そして……僅か半日で双子の王子と王女が無事に誕生したとクリス様から連絡が来た。

 正に奇跡だった。その報せを聞いて、私はコリーヌに縋って泣いてしまった。コリーヌは優しく抱き返してくれた。

 小さな赤ちゃんは、泣き声も大きくてとでも元気な上に、御殿医が驚く程の安産だったと言う。


 まさかね……。


『お前にお礼をしたら、急に通路が広がった!』

 眠って驚く。そのまさかだった!

『あの通路は喜びを好む。今回は特大だった。お陰で仲間が更に増えた』

「あちらに帰られないのですか?」

『我々は霊峰に根を張っている。動けんのだ』

 どんな姿なのか見た事はないけれど、何だか人とはかけ離れている様だ。

「ではお仲間様方も……」

『そうだ。新しい者は小さな種で、通路を抜けて来た。……ここは少し息がし辛いが捕食者が入って来られないのだ』

 こちらに捕食者だと言う何かが来たら大変な事になりそうなので、通路拡張はほどほどにして欲しい。


『覚えた。もし通路が狭くなったら、権力者に恩を売ればいいのだな』

「売り方を間違えると窒息しますから……誰かに相談する事をお勧めします」

『契約なしでお前の様に話せる者は滅多におらんのだ。……他の者に伝えておこう。達者でな』

 まるでお別れの様な言葉に、神様(仮)は続ける。

『契約を食べるのは時間がかかるのだ。喋る口は百年開かぬよ』

 寿命が百年延びると言っていたけれど……百年かけて食べると言う意味だったらしい。

「お元気で」


 この日から、夢に神様(仮)が出て来る事は無くなった。

 クリス様に打ち明けるか迷ったけれど、言わないと決めた。クリス様は宰相だ。国のためになると思えば未来の為に記録を残す。エンキー族がどう思うか分からないし、通路が拡がって捕食者がやってきてしまうかも知れないのだから。


 後日、ロザミア様のお見舞いに行った。

「見て!愛らしいでしょう?」

 そう言って、私に双子を抱っこしろと言う。

 恐る恐る私が抱いた赤ちゃんは、どちらも本当に小さかった。みるみる視界が悪くなっていく。


「感動してしまって……本当に……良かった……」

 ロザミア様の侍女が赤ちゃん達を受け取ってくれたので、急いで涙を拭く。

「心配をかけたわね」

「本当ですよ」

 二人で泣き笑いしてしまった。

 元気なロザミア様もお子様方も居なくならなくて……本当に良かった。

エリーゼは、新婚旅行を兼ねた辺境領周辺の領地への挨拶周りで留守でした。

双子誕生の知らせを聞いて、大急ぎで戻ってきました。


「かわいい服がいっぱいあるわ!素敵」

「ローエルからの贈り物です。だいぶ前からお針子さんの発案で、用意されていたみたいです」

「そうなの。靴下もあるわ!……水色とピンクでかわいい。でも男の子二人だったら困ったと思うわ」

「こっちではそうですね。単に見分けがつかないと不便だからと言う程度では。エンキーではピンクは男女共に身に着ける色ですから」

「そうね。……メイフィーア、何?その顔」

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