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ずっと一緒に  作者: 川崎 春
隣国編

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31 ドレスコンテスト

「貴族の役目とは何か!かつてドレスや宝飾品を高額で買い漁る行為をそうだと断言した方が居ました。無自覚なその行いの結果、我が国は危うい状況に陥りました」


 学園の講堂でそう話すのはロザミア様だ。

 王妃は幽閉されているだけで、まだ王妃だ。こんな風に王妃を揶揄しても不敬にならないのはロザミア様だけだ。


「貴族に求められるのは、庶民の血税をより安定する社会に変えて還元する事です。確かにドレスも服飾業界に貢献しています。しかし無制限に金銭をかけるべきでしょうか?貴族にも節度が求められています。新しい時代にふさわしいドレスが必要です」

 男子生徒はつまらなそうにしているが、女子生徒の目は輝きまくっている。


「婚約者にドレスを贈るのは男性の役割です。私はダンスをするだけで息の切れるドレスを贈られました。その後は皆さんもご存じかと」

 男子生徒の半数以上が慌てて背筋を伸ばした。


「妻や娘のドレス代で首が回らなかった時代が、ほんの数年前の事。戻りたくないからと平民の様な木綿のワンピースで過ごせますか?それで夜会に行けますか?」

 あなたは出来ますね。

「男性の衣装にもお金がかかっています。夜会に木綿のシャツとズボンで来られますか?」

 更に半数以上がロザミア様の方を向いて背筋を伸ばす。……後は聞いていない人達だろうから、放置ね。


「外国からの賓客を迎えてのパーティや結婚式など、どうしてもドレスが必要な場面はあります。貴族には貴族の役目があり、ドレスは女性貴族の武装です。国の豊かさ、安定、そして美しさを他国に示すものです。新しいドレスで私達の戴冠式を祝って下さい!」

 拍手と喝采が一気に巻き起こる。……盛り上がって良かった。私ではこうはいかない。


 学園での演説は新聞にも載せられて、ドレスコンテストはどこでも聞く話題になった。

 細かい規定は、ロザミア様から話の行ったクリス様が議会に提出して規定を作った。議会でも景気の悪かった服飾産業の正しい再生が期待されている。


 全てを並べるには応募が多すぎる為、地方予選や王都予選があって、展示会があらゆる場所で行われた。ほかの地方のドレスも見たいと、行き来する人々や外国の方々の訪れもあったとかで盛況だったと聞いて嬉しくなった。私もエリーゼ様と幾つかの展示会を回った。

「新しい時代になっている事をアピールできた」

 そう言うクリス様は上機嫌だ。ロザミア様はあらゆる場所で賞賛を浴びている。製紙の女神と言う二つ名が外国でも有名なのだが、更に箔が付いたのだ。


 エリーゼ様も楽しそうにしている。

「このコンテストの後なら、父に反対されずにドレスが着られそうです」

 エリーゼ様は美しい上に乙女な人だ。きっとドレスなら結婚相手も見つかる筈だ。……というか見つかって欲しい。切実に。たまに死んだ目でいちゃついているオスカー様とロザミア様を見ているから。


 そして……コンテストで王族も認めるドレスの基本型が三種類選ばれた。

 価格だけでなく軽さでも貴婦人たちを喜ばせたそれらは、母国のドレスとは違う趣で、この国らしいと言える。私も着たい。あれこれと色が浮かんでウキウキする。楽しい。


 宝飾品や布の質を変えれば、いくらでもドレスは高くなる。クリス様はそこを制限しなかった。


「今の最善が、未来の最善とは限らない。母国の様に、選べない女性がでてはいけないからね。少なくともロザミア殿下の時代はこれで十分だよ」

 クリス様は言った。

 確かに、貴婦人の最高峰である筈のロザミア様があの調子だから、彼女が王族の時代は国が潤っても衣装は簡素化されていくかも知れない。……平民ワンピースの愛用者だし。


 授賞式があった。

 三つの型の中でも一番選ばれるだろうとされているドレスを生み出したベサルタ工房の代表を見て、私だけでなく周囲も唖然とした。


 ピンク色の長い髪を一つにまとめた高身長の美青年が代表だったからだ。

 顔の造形は女性と見まごう程に麗しい。しかし、腕や足の筋肉が布越しでも分かる程に鍛えられている。エンキーである、ローエル・フォクシー子爵だ。


「!?」

 横に居たエリーゼ様が彼を見た瞬間、虚ろな目で涙を流したのを見て私は驚いてしまったのだった。

裏情報


メイフィーの専属侍女のミリアは、母国からついてきた子爵令嬢です。メイフィーより一歳年上です。

縁談が持ち上がっていましたが、「お嬢様のお側を離れる訳には……」と結論を先延ばしにしていましたが、辺境行きに置いて行かれたショックもあって婚約しました。

噂話や令息の無遠慮な突撃を止められなかった自分をかなり責めていた感じです。


コリーヌが連れて来られ、メイドの仕事はできても侍女としては未熟な彼女に教育を施した後で、専属侍女を辞めます。丁度ドレコンの時期で、コリーヌに引き継げたことに安堵しています。


ちなみに縁談の相手は伯爵家の嫡男です。

城に来たメイフィーについている所を見初められました。見た目が好みな上に、異国から来ていて過去の事に関わっていない所も気に入られ、熱烈に口説かれていました。


将来的には、伯爵夫人としてメイフィーと親交を持っていく事になります。

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