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ずっと一緒に  作者: 川崎 春
隣国編

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21 無礼者

 その日はエリーゼ様と一緒にお土産を探していた。もうすぐ戻るからだ。


 辺境伯家の一帯で織られている絨毯は王家にも献上する程の名産品で、この一帯で飼われている羊の毛で作られている。女性の仕事として有名なのだが、長時間の部屋での仕事は大変で、座りっぱなしで織る作業は体を痛めるし、部屋の換気を怠ると肺を病むと言う。量産は難しいそうだ。


 クリス様に勝手に逃げ出した事を詫びる為にも、普通に使える小さなものを探していた。

 元々好みがあまりないので、選ぶ基準が分からない。しかしエリーゼ様は判断はしてくれない。贈り物は悩んで選ぶまでしないと心のこもった贈り物にならないと言うのだ。

 今までジョセフと一緒に選んでいたクリス様の誕生日の贈り物は、ジョセフの心がこもっているから喜んでもらえたのだ。私の心はからっぽで、込めるものなんて無かったのかも知れない。


「もっと大きいものにしてはどうですか?」

「クララ様がお嫁に来るなら……困ると思うわ」

「そうはならないかと」

 私へは手紙が来ていないのに、エリーゼ様にはロザミア様から手紙が来ているらしい。王都に着いたら、子分にしてもらえるようにお願いしようと思う。


「お好きなものにされたらいいのですよ。もし宰相様が気に入らなければメイフィーア様が使えばいいのですから」

 そう言われると気楽になって、夜の星空の様な小さな絨毯を選んだ。何となく心惹かれただけ。

「好きとはそういうものですよ」

 エリーゼ様にそう言われて安心した。


 クリス様には先日手紙を出した。書けなかった分、書き始めると結構な量になった。

 まずは謝罪をした後で、母国を出てから沢山の経験をし楽しい思い出を作れた事を感謝した。その上で婚約を解消する場合には学園の寮に住む旨も書き添えた。……必ず王都には戻りますと締めくくり、分厚い手紙を郵便馬車に託した。


 辺境で領主代理をしているアリューゼ様はエリーゼ様の従兄で、私が外に出るといつも走ってやって来る。そしてご自分の話を延々とされていく方だ。エリーゼ様はアリューゼ様の話をしない。

 問題がありそうな方なので避けていたのに。


「宰相様との婚約は無くなるのですよね?」

 唐突に、近づいてきたアリューゼ様に言われた。

「もしよければ、わた……ガフッ!」

 物凄い勢いで走って来たエリーゼ様に飛び蹴りを食らって、アリューゼ様が倒れた。

「牢に入れて頂戴!」

「はぁ?」

「メイフィーア様は宰相様の婚約者よ」

「もう終わってるんだろう?」

 ツキンと心に痛みが走る。


「そんな事実はない!」

「でも、手紙に……」

 エリーゼ様の瞳孔が全開になり、空気が張りつめた。というか殺気?息が止まりそう。

「ロザミア様からの手紙……次期王妃様の手紙を勝手に読んだの?」

 周囲に居た護衛まで真っ青になっている。主家の姫に来た未来の王妃からの手紙を勝手に見たのだ。辺境伯代理でも許されない。

(王家に知れたら極刑だわ……)

「覚悟を決めておく事です。()()()()従兄殿」

 アリューゼ様は自ら牢に入り、私達は出発した。


 馬車の中で、エリーゼ様は忌々し気に言う。

「婚約は契約です。私もレビン様と婚約中は、関係が崩壊していても他の男性と親しくする事はしませんでした。アリューゼはそれを知っているのにメイフィーア様に言い寄りました。……しかもロザミア様が宰相様にお怒りになって、妄想と勢いで書き上げた……メイフィーア様が冷たく宰相様に別れを告げると言う話を勝手に読んで!」


 アリューゼ様が私に言おうとした事は、エリーゼ様の過去の努力を冒涜する行いでもあり、ロザミア様の黒歴史になりかねないものを信じての事だったのだ。


「内容にはスカっとはしましたが、現実とかけ離れ過ぎていましたね。ロザミア様もそう思われたのか、後から燃やせと言う電報が来ていました」

 ロザミア様とアリューゼ様の為に、全てなかった事にした方がいい気がする。

「アリューゼは、昔から馬鹿なのです」


 エリーゼ様は暗い表情で言った。

「次の婚約者候補で、今回の訪問にはそういう面も含まれていました」

「じゃあ、私に声かけたらいけないですよね?」

「だから馬鹿なんです」

 二人で大きくため息を吐いてしまった。

辺境伯代理として、隣国のスパイや密輸商人などの密書を上手く開ける方法を使い、ロザミアの書いた夢小説的なものを読んでしまった為に、生命の危機に陥っているアリューゼ。

王家からの手紙は、全て密書の扱いです。宛名の主と許可を得た者以外は読んではいけません。


アリューゼは文章の長さ(というか断罪ゼリフの長さ)にうんざりして、途中から斜め読みしています。だから「このくらいすればいいのよ」と言うシメを完全に読み飛ばしました。だから辺境に来る前に起こったメイフィーとクリスの別れの詳細だと思い込んでいました。


メイフィーの出した手紙を婚約破棄の手続き書類だと思い、クリスから一通も手紙がとどいていない事も知っていたので、完全にそうだと思っていました。メイフィーの人柄を分かっていればおかしいと思うのですが、爵位と見た目が好みでアピールするのに必死だったので全く理解していませんでした。

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