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二十日目前半 リオとの会話

 リオside

 昨日見つけた術式の作り手と直接話すために私は闇学科の教室に行こうとしたのですが、昨日入ってきた落ちこぼれ学科が絡んできて鬱陶しいです。口を開けば「これ教えてくれ。友達だろ?」「私これ分からないの。友達だから教えて」などと、人をなめているとしか思えない発言を連発しています。誰がいつあなたたちと友達になったんでしょうか。私にはそんな覚えはありません。‥‥メリッサは馬鹿なので落ちこぼれを引き取ってしまったようですね。合掌させていただきます。さて、自由になったので私は闇学科の教室に向かいますか。


(しかし、闇学科は私を警戒して全く近づいてこないですね)


 まあ、私が光学科で、堂々とここに居ること自体がすでにおかしいのでしょう。だって、光学科の先生はあのメリシアです。生徒思いなんですが馬鹿で、熱くなりやすいために疎まれていますしね。‥‥ですが、そのことと私がここに居ることは関係ありません。私には光魔法を極めるという目標があります。そのためにここに居るんですから。


(まあ、あの子のあの様子からすれば、盗聴術式を使っていたことは明白ですね)


 レイは、明らかに何かに怯えています。それが何かは知りませんが、その何かに怯えているせいで明らかに様子が変です。‥‥闇学科の人は優しいので、無理には聞きださないのでしょうね。そして、担任も優しいです。クライズ先生はメリシアなどとは比べ物にならないくらいに生徒思いです。精神的な面で。なので、レイの事も心配しているのでしょう。ですが、あなたたちのやり方では彼が打ち明けるのを待つしかないですね。


 私なら、そんな非効率なことはしません。この「自白術式」と「服従術式」で無理やり吐かせます。嫌われる?構いません。だって、そもそも相手を立ち直らせるのが目的なら、無理やりにでも吐かせた方が早いです。その上で対策を授けます。だって、仮に友達なら、相手に嫌われてでも間違いを正すのが正解でしょう?‥‥私は別にレイの友達でもなんでもありませんがね。


「これでもう終わり?」


 どうやら、また術式改造をさせられているようですね。‥‥嫌なら嫌だとはっきり言うなり、その理由を言ったりするべきだと思いますがね。まあ、私には関係ありません。周りが彼をどう思おうと、それは私には何の影響も与えません。‥‥さて、彼が帰るみたいなので、こっそりとついていきますか。‥‥どうやら、私の存在に全く気付いていないようですね。


ーーーー


「はあ……はあ……」


 全く、帰ってきて早々に魔法連発と術式改造ですか。しかも、トルネード以外にサンダーボルトまで覚えようとしていますね。‥‥このようなことをしてまで、あのバカから守りたいものがあるんですか。‥‥大した価値じゃないと思いますけどね‥‥。


「こんにちは」


「……!?……誰!?」


「さっき、いえ、闇学科の術式の授業の時からずっとついてきていましたが、本当に気づかないとは‥‥」


 全く、注意力散漫どころではありませんね。


「……光学科の人だよね?何か用なの?」


 まあ、警戒していますよね。


「いえ、ちょっと光学科の机の中に術式を見つけたもので」


「……!」


 そんなに驚くでしょうか。光学科は彼の中ではボンクラの集まりみたいに捉えられているみたいですね。まあ、否定はできません。丸暗記学科には何もできませんから。


「あ、そんなに警戒しないでください。別に「言うこと聞かないとメリシアにばらすぞ」とか、そういった脅しに来たのでは無いので」


「……は?」


 ‥‥少し傷つきますね。光学科をなんだと思っているんですか。私はメリシア親衛隊ではありませんよ?まあ、周りはほとんどがその親衛隊でしょうけど。


「少しお話がしたくて来たんです」


 せめて、話くらいはさせてもらわないと駄目です。術式をかけて自白させてすっきりさせるにしても、簡単にはいかないでしょうしね。


「……何?」


 どうやら、話は聞いてくれるようですね。じゃあ、まずは名前や顔でもいい加減に覚えて貰いましょう。


「本題に入る前に、自己紹介でもしませんか?」


「は?なんで?どうせ一度しか話さないよ?」


 ‥‥厄介ですね。個人主義どころか、人の名前も顔も覚える気が無いのでは?ですが、負けません。


「いえ、何度もお話しする機会はあるでしょう?一週間に二回は会うんですから」


「ああ……そういえばそうだっけ……」


 酷いですね。完全に忘れていませんか?‥‥まあ、関係ありませんが。


「ええ。ですから、自己紹介もして、仲良くなろうかなと」


「……必要ないよ」


 これはまた、厄介です。コミュニケーションが取れないとは‥‥。


「どちらがですか?」


「両方。特に後者。君とそういう関係になっても無駄」


 なるほど。闇学科もセフィナ先生も迂闊に手が出せないわけです。


「光学科と仲良くなって無駄とは、どういう意味ですか?」


 まあ、大体は分かりますが。


「あんな丸暗記集団、使い物になるの?」


 確かに。丸暗記は意味が無いですね。


「光学科全てが丸暗記集団では無いですよ?」


「丸暗記とあのゴミ、それと君とでも言いたいの?」


「落ちこぼれに何か恨みでもあるんですか?」


 まあ、答えてくれるはずがない。だから、油断した隙にかけるつもりですが。


「君には関係ない。あいつらを引き取った光学科が僕に指図するな。あいつらの味方になるものは全て敵だ」


 まあ、本心はさすがに酷い言葉が出ますよね。


「……私は、あの人たちなどどうでもいいと思っていますけどね、むしろ、鬱陶しいです」


 本当に、メリシアは何であんな馬鹿を呼び寄せたんでしょうか。


「……そうだろうね」


「ですから、あのバカを嫌いな者同士で仲良くなってもいいかなと」


「……話すだけ無駄だよ。僕が君と関わってもメリットが無い」


 まあ、この人が闇学科の人達と関わってるのは仕方なくでしょうしね。無理矢理関わらされているといっても良いでしょう。


「じゃあ、何一つメリットが無い術式添削をどうしてしているんです?どうして、闇学科と関わっているんですか?」


「仕方ないじゃん。僕を使い捨てにするためにあいつが逃げ道を潰したんだから。断れないように闇学科に変なこと吹き込んで祭り上げられたんだ」


 ああ、やっぱりこう思ってるんですね。本心では。


「あいつ……クライズですか?」


「そうだよ。自身の生徒のレベルアップのために僕を使い捨てにしてるんだ。あいつら(アル、ミリア)が関わってくるのも同じ理由だろうしね。必要なくなったらあいつらも僕を捨てるんだよ。きっと」


 まあ、闇学科の人にはこんなこと絶対に言えないですね。向こうの本心がどうであれ、疑ってることを出すと不味いですから。


「私には言っていいんですか?」


 どうしてこんなことを私にだけ話すんでしょうか。


「わざわざこんなところまで来て、僕を使い捨てにしようとしているんでしょ?隠すだけ無駄だ」


 この子はなんていうか、光学科の大半と似た感じがしますね。彼らも、この子と同様の思考を持っていたりします。メリッサは案外世話焼きですけど、他の出来る子は皆この子のように冷淡ですしね。陰では落としあい、潰しあいと椅子の取り合いですし。私も案外そういった思考を持ってますし。周りと比べられ、自分の付加価値を取られると考えるとどうしても周りを信じられなくなってしまいます。


「……そんなつもりで来たつもりじゃなかったんですがね。あなたを見ていると、鏡を見ている気がします」


 だって、私も必要ないのに他人とは関わらないですし、邪魔するものは叩き潰して目的のために進みます。周りを私が育ててしまうと、私に不利になると考えてしまいますしね。


「は?鏡?君と似てるって?光学科の丸暗記と僕が?」


「目的のためなら何でもし、邪魔するものは払いのける。違いますか?」


「……そうだよ。邪魔者を払いのけて悪いとは思わない。自分の力だけ磨けば問題ないでしょ?」


「奇遇ですね。周りにはそこまで同調してくれる人は居ないんです」


 だって、光学科の人間は冷淡ですけど、世話焼きも多いですし。


「そこまで分かってるなら、何でわざわざここまで来たの?教えてもらえるなんて思わないでしょ?」


「ええ。ですから、その可能性はありません。それに、人に教えてもらうのは基礎だけでも良いですから。後は勝手に進めていきます。そうやって上手くいったので」


「じゃあ、僕にもう君は要らないって言いに来たの?」


 どうしてこう思うのか、その辺を話してもらわなければ。そうしないと友人にも敵にもなれません。だって、基本的にこの子は全て門前払いしていますから。


「その、自分を要らないって言いに来たって思う部分を知りたいって言ったら、どうします?」


「はあ?なんでわざわざそんなことを……」


「それを知らないと、あなたの友達にも敵にもなれないからですよ」


「……わけが分からない。頭に変な物でも湧いてるの?」


「いくらなんでも、女の子にそれはないでしょう?」


「そんなことを知って、どうするの?誰にも言ってあげる必要はない」


 仕方ありません。ちょっと過激な事でもしてみますか。これで駄目なら術式で吐かせます。


「教えて……もらえないですか?」


「は!?……ちょっ!いきなり何を……!」


 ここまで近くにいたら、突然相手が抱き着いてきても避けられないでしょう。‥‥こんなことを考えた時点で明らかに私は変な人扱いですけどね。


「教えて……ください」


 これだと、私はただの馬鹿ですね。‥‥色仕掛けで落とすも何も、たかだか10歳の子供がやっても、効果は無いでしょうね。何でこんな方法考えたのでしょうか。‥‥姉の持ってた本にこんな事で相手を次々に自白させていた漫画もあったからでしょうか。


「ああ!もう!暑い!どけ!」


 まあ、こうなりますよね。振りほどかれてしまいました。‥‥さすがに、駄目でしたか‥‥?


「一体なんなの!?突然やって来てわけの分からないことを言うし、断ったらいきなり抱きついてくるし!君馬鹿なの!?まさか丸暗記馬鹿以上に馬鹿!?それともあれ!?」


 あ、これでよかったのですか?‥‥さすがに、馬鹿呼ばわりは傷つきますが。


「こんな方法で釣れば、また言う事を聞かせられるとでも思ったのあいつは!?先生の権力まで振りかざして自分の言う事聞かせたくせに、まだ懲りてないの!?それとも、何度も手伝うとか言って邪魔した方法が通用しないからって、手駒同然にした女の子を僕の所に出して邪魔しようとしたの!?」


 ああ。典型的な小物のやることですね‥‥。


「大体なんなのあいつは!自分達が勉強できないから助けてくれって周りの生徒を巻き込んで先生まで使って僕に命令して、実際にやらせたくせに、終わった途端にあっさり切り捨てたんだ!ああ、あの屑!全く反省していないみたいだし今すぐサイクロンでぶっ殺してやりたい!サンダーボルトを改造した物作成して連続で当ててやる!」


 ‥‥要するに、イビルは周りの生徒も使って巻き込んだためにこの子も従わざるを得なかった。先生にまで頼まれれば断れませんしね。そして、勉強を教えさせるだけ教えさせて必要がなくなればポイ捨てしたんですね。こんなことされれば当然怒ります。私もこの子の立場なら確実にキレます。ああ、だから今の状況が気に入らないんですね。クライズ先生がその学校の先生に、周りの生徒がイビルのように見えているんでしょう。もしくは、先生がイビルでしょうか?‥‥さすがにこれは無いですね。


「しかもあのゴミ!周りには「俺とレイは友達だから」とか言ってたから当然先生はそれを信じるよね、だからあのゴミが起こした問題は全部僕にも連帯責任とか言って押し付けられて!その上あいつはすぐに逃げるから全部僕がやったんだ!ああもう!むかつく!ボルケーノの効果時間を一分にしたものやサイクロンの威力を6倍にしたもので潰してやる!二度と人前に出られないくらいに痛めつけてやる!」


 「友達」は利用するための免罪符ですね分かります。それを使われると、さすがに子供学校の先生にはあなたが言った事は通用しなくなりますよね。仮に真実でも、「友達を貶めるようなことを言うのはいけません」とか言われて却下されても無理はないです。だって、子供の争いとか思われて軽く考えられているでしょうし。‥‥当事者にはかなり深刻な事だったりするのですが。‥‥さて、そろそろ止めてあげましょう。吐きだしたら、すっきりしたでしょうしね。


「そういえば、あの屑手伝うとか言って必ず邪魔をしに来たね。そして拒否したら先生に言うんだ。そしてまた僕が悪いって言われるんだ。‥‥あのゴミ屑……絶対に叩き潰す……二度と僕に近づこうとしないように徹底的に叩き潰す……」


 有難迷惑もするんですか。‥‥4歳で入学したとして、6年間も積もった恨みや怒りですからね。ずっと溜まっていたものを彼の発言で爆発寸前にさせられたのでしょう。良く今まで爆発しなかったものです。‥‥はけ口を作ってあげられるのも現状私だけですね。セフィナ先生にもまだ知られていないようですし。‥‥下手に言わない方が良いでしょう。だって、闇学科とつながってる先生に教えると、あまり良いことにならないでしょうし。


「……吐きだしたら、すっきりしましたか?」


「はあ、はあ……え?」


「怒りやら何やらが鬱積していたようですし、わざと怒らせて吐いてもらいました」


「……それで、何?このことを報告でもするの?」


「いえ。むしろ逆に、仕返しの機会を与えようかなと思いました」


「……は?」


「明日、光学科の模擬戦があるんですよ。それに、あなたも参加してもらおうかと」


 これでイビルが潰れれば私の邪魔者も減ります。


「……出られないよ。光魔法は覚えてない……それに」


「魔力なら、マジックペインターで白色にすればいいです。それに、ローブなら持ってきますよ?」


「……それでばれない保証があれば」


「大丈夫です。最悪、私が逃がしますよ」


「それで君に何の利益があるの?」


「鬱陶しいゴミの掃除です。代わりにあなたがやってくれれば、凄く助かります」


「ふふ。良いね。じゃあ、乗ってあげる、そのかわり、絶対にイビルと取り巻きを僕の相手に出してよ?」


「取引成立ですね。じゃあ、改めて自己紹介させてください」


「はあ、しょうがないな。まあ、イビルを潰す機会をくれるっていうなら構わないよ」


 ふう。やっとまともに名前を名乗れますね。まあ、あそこまであれがクズだったとは思いませんでしたし。6年もそんなことをされていれば人間不信になっても仕方ないですね。


「私はリオ。まあ、説明不要ですけど光学科です」


「僕はレイ、風学科。君には説明自体要らないけど」


「ふふ。じゃあレイ。互いの利害が一致するうちはよろしくお願いします」


「そうだね。……リオの方がまだ話しやすいからいいんだけど」


「まあ、自分のような人間との縁の切れ目は良く知っているでしょう?互いに組む理由が無くなったときが、縁の切れ目です」


 まあ、私もレイのようなタイプの方が周りの光学科よりも話しやすいですが。‥‥今は利害だけで組みますか。それで意気投合すれば、関係を続けていきましょう。‥‥今日はレイを食事に誘いましょうか。明日のことを考えなければいけませんしね。

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