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八日目 風学科の本当の実力

 ついに今日が来た。他の学科の人が帰ってきて、さっそく模擬戦をするらしい。僕とセフィナ先生はどこにも行っていないから、先に会場で待っていることになった。会場には、何か不思議な結界が張られている。


「周りの学科の人達って、どれくらい強いのかな?」


 ドグラ先生の言葉を聞くに、本当に強いみたいだし。


「もう、まだ歪んで捉えてる・・・。まあ、ドグラの自業自得だね」


 ・・・?・・・どうしてドグラ先生の自業自得なんだろう?サイクロンでも勝てるか分からないのに。


「ほう。本当に来たか」


「あら、噂をすればなんとやら・・・」


「ふふふ。いかに貴様が強くても、わしの生徒に勝てるはずがない。わしの生徒は最強なのだ!」


 ・・・!この人の自信、本物だ!サイクロンでも駄目かな・・・?


「本当にすごいけど、後で後悔しても知らないよ?ドグラ?」


「ははは!負けるなどありえん!」


 本当に強いみたい。土学科相手の場合は開幕からサイクロンを連続で叩き込もう!


「あーあ。もうどうなっても知らない・・・」


ーーーー


 他の学科の人達が入ってきた。赤いローブの人達は炎学科、青いローブは水学科、黄色いローブは土学科。水色のローブは氷学科の物、紫のローブは雷学科だ。闇学科は黒いローブを着ている。先頭の人はクライズ先生だ。その次に入ってきたのが光学科。白いローブをきたあの先頭の人には見覚えがある。


「さて、これより親善試合を始めるが、ルールは少し変えさせてもらった。戦闘のルールは変わらず、非殺傷結界で安全な状態で戦うが、戦う相手を選ぶルールを変えさせてもらった。相手学科を指名し、その学科と戦うのだ!」


「なるほど、そうきたか」


「?」


「さて、最初に戦う相手を決めるのは、土学科だ!」


「決まっている!風学科!出てこい!」


「あーあ。馬鹿だ」


「じゃあ、僕は行ってきます」


「うん、まあ、自滅だけは無いようにね」


「大丈夫です」


 指名されたので舞台に上がった。戦闘準備は万全だ。向こうからは土学科の代表が上がってきた。


「さあ、土学科の代表が勝つことが確実視されて・・・いないですね?光学科の先生、どうかしましたか?」


「い、いえ。何もありませんよ・・・」


「はっ、臆病者の光学科か。お前を倒したら、そのまま光学科も潰してやるよ!」


「相当な強敵だと聞いたので、全力で行きます!」


 この人が恐らく切り札なんだろう。試合開始と同時にサイクロンを当てよう。長引かせると負けるかもしれない。


「両者、準備は良いですね?」


「ああ!当然だ!」


「いつでも構いません!」


「試合、開始!」


 一瞬で決める!出し惜しみは無しだ!


「これでもくら「サイクロン!」ぎゃあああああ!!」


 対戦相手の人は大竜巻に飲まれ、切り刻まれてから(実際には切れないが)回転して落ちてきた。あっけなく勝ったけど、運がよかったのかな?


ーーーー


 第三者side

 まさに一瞬。何が起きたか分からなかった。勝てるはずの土学科の生徒は、突然竜巻に飲まれて巻き上げられ、そのまま切り刻まれて戦闘不能になったのだ。非殺傷結界の中で気絶しているなど、前代未聞であった。


「ば、馬鹿な!何が起きたのだ!?わしの生徒が一瞬でやられただと!?最強だったのだぞ!?」


「マジかよ・・・。本当に改良してやがった。そんなことは無いだろうと思ってたが、俺の認識は甘かったか」


「うわー!少年、強っ!マジで!?」


「あわわ・・・あんな恐ろしい生徒を出してしまうなんて・・・。だから私は反対したのです!」


「うわあ~!雷魔法が使えたら、ぜひとも欲しい!あれはなかなか手に入らないタイプの生徒だ!」


「落ちこぼれというのはやはり嘘でしたか。真実を見ないといけませんね」


「あれで落ちこぼれだというなら、われわれの生徒は全員落ちこぼれ以下ですね・・・」


 各学科の教師たちはその光景を茫然と眺めていた。気絶した土学科の生徒が運ばれてきても、まだ頭が追い付かなかったのだ。当然、生徒側も動揺していた。素人の自分たちにもレベルの差ははっきりと認識できたのだ。それは、次に戦う光学科も例外ではない。


「あれとこれから戦うのですか・・・。まさに死刑宣告ですね・・・」


「リオ。メリッサの代役で戦うなんてやめようよ。あんなのには勝てないって・・・」


「そうだよ!あんなの、メリッサが戦うべきなんだ!君が戦っても駄目だよ!」


「ちょっと!それこそリオが行くべきでしょ!」


「分かっています。メリッサの代わりに私が生贄となってあの子と戦うことは、メリシア先生の意思でもありますしね」


「そうよ!・・・でも、本当に行くの?辞退しても良いわ。いいえ、辞退しなさい。あんな化け物にあなたが戦いを挑んでも、無駄よ。あの中では、戦いが終わるたびに体の魔力も全回復するのよ。あなたがどれほど頑張っても」


「行きます」


 光学科の少女リオ、自らの意思でレイの相手になることを決めた瞬間だった。


ーーーー


 リオside

 すごく怖い。今までこのような恐怖を感じたことは無かった。目の前には初日に医務室に運ばれてきた男の子がいる。その身体が何かおかしいわけではない。でも、その魔力は明らかに感じ取れた。あの時の男の子は、私たちが遊んでいる間に得体のしれない怪物へと成長した、といってもいいのだろう。


「くっ、手が震えそうに・・・」


 生贄の感覚とはまさにこんな感じなのだろう。絶対的な強者の餌となり、食われる生贄。今の私はまさにその状態だった。目の前の男の子は、まさに生贄を待つ大蛇のように見えているのだから。


「駄目!私は、絶対に・・・屈しないんです・・・」


 恐怖に飲まれ、泣き出したくもなるが、必死にこらえる。絶対に、この恐怖に飲まれるものか・・・。


「・・・本当にやるの?」


「当然です。光学科の代表として、戦います・・・」


「手も、声も、震えてるけど?」


「っ!?」


 それでも、私は、退けない!ここでメリッサの代わりにこの子に潰されるのが、私に与えられた役目なんだから・・・!それを、私も望んだのだから!


「良いんですね?」


「はい、僕は良いですよ」


「私も、構いません」


「試合、開始」


「シャインウォール!」


 その直後に防御魔法を張る。光の球体のようなバリアが私を包み込んだ。全力で生き延びることだけ考える!その直後、私の視界は緑一色になった。


「トルネード!」


「やっ・・・!身体がバリアごと竜巻に巻き上げられるっ・・・!」


 そう、先ほどの試合と違ってこちらが魔法を使うのが早かったといえど、そもそも竜巻に巻き込まれてしまえばどうなるでしょうか?身体は風圧で巻き上げられ、バリアはみるみる切り刻まれ、瞬く間に平衡感覚は無くなります。このバリアを破壊されれば、私は即戦闘不能でしょう。


「くっ!私を守って!シャインウオール!」


 もう一度防御魔法をかけます。これは一度にコストを3も使う中級魔法です。私の魔力は18なので、6回使えばもう魔力が切れて勝てないでしょう・・・。


「・・・?・・・トルネード」


 この人は悪魔ですか?私が必死で魔法を使っているのに、バリアに包まれていると知るとすぐにトルネードを当ててきます。もう、一方的な展開です。勝つどころか、一撃入れる隙すらありません。そもそも、巻き上げられて回転させられ感覚が滅茶苦茶な私にはもう狙いも定められません。


「シャインウォール!」


 3度目のシャインウォールを使った。もう、魔力は半分だ。もちろん私はまだダメージは受けていません。ですが、戦えるかと言われると、無理です。目を開けたら、ぐるぐる視界が回転して、正しく正面を見ることもできません。


「おかしいな。バリアを壊せないのかな?・・・サイクロンで攻めようかな?」


 まさか、サイクロンはこれよりもっと強いのでしょうか?そんなものを撃たれたら・・・。


「サイクロン!サイクロン!」


 ここまで絶望を感じたことは今まで一度もありませんでした。まさか、あんな威力の魔法が2連発出来るんですか?どう足掻いても、私はここで負けますね…。その直後、二つの竜巻に挟み込まれました。バリアが瞬く間に削り落とされていきます。もう無残に刻まれて負けることは確定でしょう。いや!まだ、そうやって負けると決まったわけでは!


「シャインウォールで駄目なら、もっと強力な魔法ならば・・・」


 1つだけ、この暴力から逃れる手段を思い出しました。コストは9。もう私の出せる魔力を全て捨ててしまいますが、これしかないでしょう。同じ敗北でも、せめて結果だけは・・・!


「どのみちやられるならいっそ・・・!セイントバリア!」


 光学科の防御魔法でも最も強力な魔法の1つ、上級魔法セイントバリア。シャインウォールの強化版のくせにコスト9、維持できる時間も短いと問題だらけですが、その強度は保障できます。魔力を0にしてまで無理矢理発動させましたが、使わなくてもどのみちサイクロンに刻まれるので、一緒です。


「壊れない?ううん、かけなおしてるのかな?」


 もしかして、気づかれたんでしょうか。でも、もう私に抵抗する術はありません。魔力は空、感覚は滅茶苦茶。これが今の私の限界だったんでしょうね。


「せめて、一撃入れたかったですね・・・」


 これだけはちょっと心残りです。こんな一方的な暴力に少しでも抵抗してみたかったです。その直後、バリアが砕けて私は地に落ちました。無傷で終えられたこと、これが最大の成果でしょうか?サイクロンで刻まれることは無かったんですから。


「う・・・」


 目が回っていて、さらに魔力も無い。まさに惨敗ですね。前の方に冷たい物が当たっていることを考えると、私はうつぶせに倒れているんでしょうか?


「ええと、降参する?」


 ・・・ふふ。光学科の人間など、一思いに吹き飛ばすと思ってましたが。それにしても、あれだけ上級攻撃魔法を使っておいてあなたにはまだ魔力があるんですか?どれだけ魔力が多いのやら・・・。


「魔力も切れました、視界も全く定まりません。この状態で続けても、すぐに倒されるだけです。完全に私の負けです」


 いろいろと吹っ切れてしまいそうですね。勝手なことをし続けたためにこの子はここまで強くなったのでしょうか?もしそうなら、実にうらやましい。それにしても、今日はこのまま眠れそうですね。次に戦うときは、この子と対等に戦えるくらいに私も、強くなって・・・。


ーーーー


 レイside

 対戦相手の子、最後何か変だったけど、大丈夫だったのかな?・・・まあ、勝てたからいいかな。もう、戻っていいかな?


「さあ、このまま挑戦者が出ないとなると、風学科は試合を終えることになります。指名しなくてもよろしいですか?」


「はい、どちらでも構いません」


 交流試合だっていうし、これ以上戦わなくても良いよね?


「風学科の圧倒的な勝利でした!挑戦者は先ほどの2クラスのみ、他はそれぞれ別の学科との対戦を望んでいるようです」


 階段を降りて風学科の席に戻ることにした。


ーーーー


「もう、どこまでやれば気が済むのよ・・・」


「何がですか?」


 ・・・?


「あんな連続魔法を叩き込まなくても、トルネードを後3回か、サイクロン1回でも十分に勝てたでしょ?」


「だって、なかなかバリアが壊れないなって・・・」


「最初のバリアも、その次のバリアも、三度目のバリアも、あっという間に壊れてたわ。壊れてないように見えたのはあの子が必死に張りなおしていたから」


 やっぱりそうだったんだ。別に良いけど。


「もう、無関心にならずにちゃんと聞きなさい。最後のサイクロン2発はどう考えてもやりすぎよ。あの子、ついに上級魔法まで使っちゃったじゃない」


 それがどうかしたのかな?


「あの子のクラス、光学科では、勝手にやるのはあまり褒められないものなの」


「それと、僕とどう関係あるんですか?」


「あの子が上級魔法を使ってたってばれたら、余計にあの子の立場は悪くなるの」


 ・・・?それと僕は関係ないよね?


「光学科の子に、上級魔法を使わせるようなことをしちゃ駄目って事」


「えっ?聞き間違いでなければ、僕には、わざと光学科のために手を抜けっていう意味に聞こえましたが」


「間違ってないよ」


「そんなことには従えません。いくらセフィナ先生の言葉でも、八百長をする気にはなりません」


 敵に手加減する理由は無いし。


「はあ、やっぱり言うだけ無駄か」


「当たり前です」


「でも、あんなトラウマを植え付けるような攻撃は駄目。最悪、復帰できなくなるから」


「あんなことでトラウマになるなら、どうやって魔法と関わるんですか?」


 今は敵だし、別にどうとも思わない。向こうが落ちたら、競争相手って減るよね?


「ああ、まずは、人との関わりからしないと駄目かもね・・・。完全に個人主義だ・・・」


「・・・?」


 本当に、何が言いたいんだろ?さっぱり分かんないや。


ーーーー


 第三者side

 結局、その後の試合は風学科に挑む者が居なくなった以外は、普通に進んだ。この勝負を見ていた生徒たちは、それまでの風学科に対する認識が180度変わってしまった。一方、先生は・・・。


「なんてざまなの!全く、本当に生贄になってしまったなんて・・・。私の計画が!ドグラがそもそも・・・!」


「雑魚だと思ったら、まさか、あれほどの逸材とはな・・・。過去の風学科の生徒と同じくらいの強さだったな。わしが愚かだったか。プログラムを見直さねばな・・・」


「あれを超えることが今年の目標か。さて、闇学科の生徒にしっかりと教育しなければ。あれに追いつくのは非常に難しいが、やりがいはあるな」


「ああ、雷が使えないなんて本当に惜しい。雷さえ使えればすぐさま引き抜くのに。ええい、あれに負けない逸材を育てるだけだ!」


「少年に負けないように、勢いに任せて走りますか!」


「炎学科を潰す以外に、目標は無いわ。炎学科に勝てばいいの。それだけよ」


「まあ、あのような鬼才を私が得ても、もてあますだけでしょうね。私の生徒には、安全な道でもいいでしょう」


「・・・やっぱり、仲間が居ないと歪んじゃうかなあ?一人だけっていろいろ問題があるからなあ・・・」


 8人全員、今後の教育計画を急いで考えて直していた。

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