六日目 魔法水晶と学校の謎、模擬戦参加決定
今日は、セフィナ先生に聞きたいことがあるから、徹底的に聞くことにした。何か不思議なことが多いこの学校のシステム。上級生も居ないし、どういうことなんだろ?
「さて、じゃあ、何から話そうかな?」
「まずは、この水晶が何か、です。この水晶は魔力の塊のようですが、どうしてこれに触れると魔力が使えるようになるんでしょうか?」
「そうだね……。その水晶は、人の魔力を目覚めさせる「鍵」だとでも言えばいいかな。その水晶は人の魔力に働きかけ、その人の魔力を使えるようにするの」
「じゃあ、この水晶に触れる前から魔力自体はあるってことですか?」
「うん。魔力自体はだれでも持ってる。でも、その使い方は知らないの。魔力はそのままだと無色透明。感じることも、引き出すこともできない」
「つまり、無色透明以外の状態に魔力を染めて、認識と活用が出来るようにするって事ですか?」
「そうだよ。そうしないと認識も出来ないし、魔力があるって言われても理解できない」
「そうだったんですか。つまり、この水晶に触れたときに魔力が着色され、感じることも出来るようになったって事だったんですね。あの時の感覚は、魔力を着色された感覚だったんだ……」
「魔法についても説明しようか?」
「はい。どうして使えるのでしょうか」
「魔法の原点は魔力とイメージ。魔力に、何を引き起こしたいのかをイメージとして紡ぎ、術式を刻む。そして、術式を刻んだらそれを体に記憶させるの」
「つまり、イメージで効果が変わるってことですか?」
「そうだよ。現に、いくつかの魔法で見たでしょ?エアメイク、トルネードは効果を変えられたでしょ?」
「イメージが全てだったんですね。だから……」
「あの場所に居たら、イメージの事ばかり考える?」
「あ、はい」
「それこそ、魔法の開発に必要なことだね」
「分かりました」
「水晶と魔力、魔法の事に関してはそれでいいかな?」
「はい。次に、どうして、8色に分けているんですか?初めから全ての水晶に触れさせたら駄目なんですか?」
「それはね、魔力の使い方も分からない素人にいきなりすべての方向性を示した場合、中途半端になってしまうことが多いんだ。たとえば、炎と氷だけを極めた場合と炎だけを極めた場合。どっちが早く魔法の技術が上がると思う?」
「やっぱり、炎のみに特化した方ですか?」
「うん。炎のみに特化した方が上達が早い。そして、どれか一つでも極めたら自然と別の色の魔法も使う方法が分かってくる。最初は魔力の色が違うから失敗するけど、一度成功したら一気に上達する」
「他の魔法で使い方を分かっているから、ですか?」
「そうだよ。最初から極めているわけではないけど、一度コツを知ったら後は簡単。魔力の色が違うだけで、後は以前の魔法とほとんど同じなんだ」
「だから、特化させてるんですね……」
「うん。魔力の光は実はただの色だからあまり気にしなくても良いんだ。ただ、特化させて一人前になってほしい。そう思って特化型の計画を立ててるの」
「じゃあ、風から光へ、光から風へといった移動の際に、魔力の色はどうなるんですか?」
「染め直すけど、色が混ざり合ってしまうか、真っ二つに色のついた部分が分かれる」
「……え?」
「緑、白の魔力が合わさってしまって薄い緑になるか、白と緑の部分が半々になる」
「それで、魔法への影響はないんでしょうか?」
「無いよ。ただ、色が変わっているだけ」
「そうなんですか……」
「納得した?」
「水晶と魔力については。ただ、それならなぜわざわざ学科の対立を煽っている人が居るのか分かりません」
「ああ……。あれは、ただの嫌がらせ。ああいう人にはかかわらない方が良いよ」
「分かりました」
「他にはあったっけ?」
「どうして、協力科目が無いんでしょうか?」
「二年以降でやらざるを得ないからだよ。今のうちに協力関係を作ってたら、楽になるかも」
「二年以降で?」
「うん。二年以降はこの8学科制ではなくなるんだ」
「……え?」
「私達8人で生徒を学科無関係に山分けし、引き受けて育てるの。そこからは協力戦闘や協力課題もどんどん出るからね」
「じゃあ、どうして今対立を煽ってるんですか……?」
「さあ……。多分、嫌でも嫌いな人と組むことになるから、その前の準備段階?」
「よく分かりません……」
「レイも、光学科や土学科と否応なしに組むことになるかもね」
「少し、気が引けそうです……」
「まあ、簡単に構えていいんだけどね。気にしなくても大丈夫だよ」
「そういうものなんですか……?」
「うん。どうせ教師も後半になったら否応なく嫌いな学科を引き受けるの。一緒だよ」
「はあ……」
何でそんなことをするんだろ?ますます分からないよ……。あれ、上級生は?
「あの、上級生が居ないのは何故なんですか?」
「上級生はね、別の場所に行くの。ここじゃない、別の場所に」
「え!?」
「ここの上の階には実はワープがあってね、そこから別の場所にある学校に移動するの」
「そんな馬鹿な……」
「初耳でしょ?こっちも、初めて来たときには「はあ!?」って叫んだもん」
「この学校の謎がますます深まった……」
「あはは……。まあ、気長に行こうって事だよ」
そう言って行ってしまったセフィナ先生。‥‥ますますこの学校の謎が増えたよ。それなら、あのたくさんの教室のほとんどが普段空き教室なのかな?
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第三者side
「それで、何で私を呼び出したの?」
「ふん。風学科も生徒が居るのだ。例の行事に参加したらどうだ?」
その言葉を聞いて、教師たちのうちの二人の顔色があからさまに変わった。片方は驚き、片方は恐怖の表情を浮かべていた。
「ああ、あれね。良いの?いっつも邪魔をするのはそっちじゃなかった?」
「ふん。たまには構わないだろう」
「まあ、レイには私から伝えとくよ」
「あの小僧に、わしの生徒が倒せるとは思えんが、せいぜい頑張るがいい」
「そだね。失礼します」
セフィナが職員室を出て行った。教師のうち、半分以上はこの土学科の提案を驚きこそしたものの好意的に受け止めた。レイの魔法の才能を知っている二人だけは、この後開催される模擬戦の結果が手に取るように分かってしまい、戦々恐々としていた。
「一体何を考えているのです!あの子を参加させるなどと!」
レイがトルネードを使っていた事実を知っているだけあり、何とか止めようとする。だが、目の前の男は説得などできなかった。
「ほう?怖気づいたか?メリシア?」
「何を呑気な!あの子は!」
「ただの落ちこぼれに、何を期待する必要がある。何、すぐに片が付くさ。5分もかからんだろう」
この男の中ではレイは魔法を全く使えないわけではないが、大して強くは無いという考えだった。実際のレイは術式を改造したためトルネードを連発できるうえ、エアメイクで防御もできる凶悪魔道士だったのだが‥‥。少なくとも、この男の学科の新入生では150人集めても勝てない。トルネードで即座に壊滅させられる未来しかないだろう。
(この男は馬鹿ですか!?せっかく風学科は駄目だという意識を与えたのに。こんなことをさせるわけには‥‥)
(マジか……。レイ相手に勝てる奴は……居ないな。確実にやられる。こいつは馬鹿か?)
二人が自分を馬鹿だと思っている視線にも気づかず、土学科の教師、ドグラは風学科を叩き潰す未来しか見ていなかった。‥‥そんな未来は、レイの魔力が切れない限り絶対にありえないのだが。
「絶対に勝てる!今年の新入生なら確実だ!あの小僧くらい、すぐに倒せる!」
「なんという事を……」
「敗北決定だな……。どんなにあいつらが頑張っても、トルネードは防げないな……」
レイの実力を実際に見たわけではないが知っている二人は、今回の試合を完全に諦めてしまっていた。相手が悪すぎるのだ。エアメイク、トルネードは非常に強力なのに、こちらにはそれに対抗する手段など無い。まだ魔法に関しては素人のような彼らが、初心者とはいえ上級魔法を手に入れた者に勝てるか?答えは否である。
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レイside
「レイ。明後日の親善試合に、あなたも出ることになったから」
「え?」
そんなことをいきなり言われても‥‥。でも何?この、絶対に勝てるよ!な空気は?
「不安?心配いらない!絶対に勝てる!向こうが何を考えてるのかは知らないけど、確実に勝てるよ!」
「ええと、分かりました。じゃあ、明日は準備をしておきます」
「だから、準備すら要らないんだけどなあ……。相手は、一週間遊んでただけ。クライズの生徒も素人ばっかり。一方、レイはずっと頑張ってたし、トルネードもある。負ける要素は無いよ」
‥‥は?余計にわけがわからない。何でそれで出してくれたの?
「土学科の教師のドグラがね、レイくらいうちの生徒なら確実に勝てるって言って、出してくれたの」
「トルネード以上の魔法を持った強敵か……!すごく強そう……!すぐに魔法を改良しないと……」
そんな恐ろしい強敵が居るなら、こっちも全力で対策しないと!
「え?いや、レイの力を向こうが過小評価してるだけ!そんなわざわざ恐ろしいことをしなくても……」
過小評価?あの人に限ってそんなのありえないよ!
「先生、それは違いますよ」
「へ?」
「その人は、きっと本当に強い人を連れてきたんです。僕の力を知ってる人が近くに居たのに聞かなかった。すごく強い敵が出てくるみたいですね……」
そうに違いない。というか、そうとしか思えないよ。
「ああ、こっちも勘違いしてるよ。もう、どうなっても知らないからね……」
「頑張ります!どんな強敵でも倒して見せます!」
トルネードだけじゃ不安だから、更にいくつか作っておこう。念には念を入れないと‥‥。
「……ドグラ、きっと凄まじいオーバーキルを食らうよ。あなたの生徒……」
そう、地獄を見ることになるのは、参加を許したドグラの方である。ずっと頑張っていたレイがその辺で遊んでただけの素人に負けるはずは無かった。努力の量も質も、時間もレイが上、術も数段強力、と勝てる要素だらけであった‥‥。




