子持ち夫婦
諸君、あけおめ!
去年一年ありがとう、そして今年もどうぞよろしく!
「さて、ユキよ」
「何だい、我が麗しの妻よ」
リウとサクヤを存分に世話し、寝かしつけた後。
「儂らは子持ち夫婦となった。これからの儂らの日常は、常に子らの世話と共にあるじゃろう」
「そうだな、元々イルーナ達の世話はあったが、それに加えてこの子らの世話と、忙しくなるな」
つっても、イルーナ達はもう、そんなに手が掛からなくなってきたから、忙しさで言えばそんなに以前と変わらないかもしれない。
俺、皇帝じゃなくなって自由でいられる時間が増えたし。
まあ、元々少女組って、そう俺達が何でも世話しなきゃならない、みたいな子達ではなかったがな。
「うむ。しかし、故にこそ儂らは、夫婦の時間というものを、もっと大切にしていかねばならんと思うのじゃ」
「なるほど、確かにその通りだ。つまり……あなたのその構えは、夫婦の語らいのためのもの、という訳ですか」
「よく理解出来たの、流石儂の旦那じゃ」
眼前のレフィが構えているのは、俺が造ったスポンジ製竹刀。
スポンジ製なのに竹刀とはこれ如何に、という感じではあるが、とにかく竹刀を構えている。
だが、侮るなかれ。レフィは母親の面が多く出るようになったとはいえ、変わらず覇龍なのだ。
恐らく、豆腐を投げつけただけで相手に致命傷を与えることが可能な女。いや、流石に豆腐は無理かもしれない。
とにかく、である以上たとえスポンジ製であろうが、気を抜いたら殺られる……!
「……夫婦の語らい兼、運動不足解消、ということか」
俺もまた、スポンジ製竹刀を構え、レフィと相対する。
「そうじゃ! この、えっと、確かお主が言っていた……ケンドゥーでの!」
「剣道な」
「そう、ケンドーンでの!」
「剣道な」
二回目はわざとだな、お前?
「オホン……うむ、良いだろう、我が妻がそれを望むのならば、夫として相手を――と思ったけど、いや、ちょっと待て。何でそれで剣道なんだ。わざわざ俺にスポンジ竹刀まで用意させて」
「それは、儂がお主のど頭をすぱーん! とやりたいからじゃ!」
「最悪な理由だった」
夫はサンドバッグではないということ、ここらで一度知らしめねばなるまいか。
「まあ、別に、何か他のすぽーつでも良いんじゃがの。ユキ、何かやりたいのでもあるか?」
「え、いや、そう言われると特に思い付かないが……」
何だかんだコイツとは、色んな遊びをしてきてるし、ここであえて剣道っていうのは新鮮ではあるが……。
「それなら、ちゃんばらで決定じゃの! ほれ、構えよ」
チャンバラ言っちゃってるがな。
「……仕方あるまい、何故か無駄にやる気満々な我が妻のためだ。是非とも俺が、剣道というものをお前に教えてやろう! 見よ! これが我が魔王流一の型!」
そう言って俺は、元々持っていた竹刀に加え、脇差サイズの竹刀をさらにアイテムボックスから取り出し、二刀を構える。
決して二天一流ではなく、魔王流一の型である。なお、二の型は存在していない模様。
「ほう! 二刀流か! 良いじゃろう、相手にとって不足なし! では儂は、覇龍流……なんか語呂が悪いの。ユキ、何かないか」
「邪知暴虐流覇龍の型」
「天誅!」
「ぐべあ!」
ダメか、邪知暴虐流。ピッタリだと思うんだが――おっと、不敵な笑みが怖いからこの思考はここでやめておこう。
「じゃあ……無難に、覇龍奥義か、もしくは夫しばき流覇龍の型、とかか」
「ほう、良いの。後者を採用で。――夫しばき流覇龍の型! とくと見るがよい!」
レフィは、無駄にカッコ良く上段に構え――ぬ!?
レフィの姿が、消える。
いや、正しく言うと、竹刀はその場に残り、それを握っていたはずのレフィの姿だけが、その場から消失した。
文字通り、目にも止まらぬ動き。
「なっ、どこに……!?」
「ぬはは、油断大敵! 竹刀を持っておるからと言うて、それを使うと思うたら大間違いじゃ! 食らえ、必殺くすぐりケンドー!」
「それは剣道とは言わない――わあはははは、ちょ、あははは!」
後ろから抱き着かれ、そのまま投げられたりするのかと思った俺だったが、そうではなくレフィはくすぐり始める。
俺の脇腹や首筋などをレフィの小さな手が這い、耳をむしゃむしゃとやられる。
「くひっ、あはは、こっ、のっ!」
「おっと危ない! たわいないの、魔王流。その程度では、儂を捉えることは出来んぞ?」
俺をくすぐっていたはずのレフィは、いつの間にか目の前に戻り、竹刀を構えていた。
「や、やるじゃねぇか、その剣道だかどうだかわからない攻撃……だがな、レフィ! 俺は魔王であり、しかしそこから覇王へと至った者! 覇者たる王の力、今こそ見せてやろう! これが、魔王流最終奥義、覇王の剣、だ!」
「ぬっ……!」
突撃をかました俺を、レフィはやはり目にも止まらぬ速さでかわそうとするが――集中すれば、今の俺なら、見える!
視界の端に残像だけ、であるが、レフィの姿を捉えた俺は、竹刀の二本ともから手を離し、その腕をぐわし、と掴む。
捕まえた!
「さっきの仕返しだ! 覇王の剣――尻尾重点爆撃!」
「うにゃあっ!?」
レフィを一気に引っ張りよせ、抱き締めるようにして動きを拘束した俺は、そのままヤツの弱点である尻尾を重点的に攻める。
撫で、くすぐり、ギュッと握り締めると、わかりやすく身体を跳ねさせ、くねらせるレフィ。
「し、尻尾はずるいぞ!」
「悪いがそんなレギュレーションは存在しないのでな! 弱点があればそこを突く、これが戦いの基本だ!」
「うにゅうっ、くひっ――この、お主がそういうつもり、うひぃあ、なら儂にも考えがある! これがるーる無用の残虐ふぁいとであると言うのならば、こうじゃ!」
「ぬあっ!?」
身体を揺すって振り解かれたかと思いきや、突如俺の身体が動かなくなる。
金縛りのような状況。十中八九、レフィの魔法だ。
「おまっ、魔法はずるいぞ、魔法は!」
「魔法が駄目、というれぎゅれーしょんが存在しているとは聞いておらんからの! さあ反撃じゃ! 食らえ、必殺くすぐりケンドーばーじょん2!」
「さっきと全然変わってないうひゃひゃひゃっ!」
そうして俺達は、決して剣道ではない戦いを繰り広げ、後程埃が舞うし、うるさくてリウ達が起きるから外でやれ、とレイラに怒られるのだった。
リウとサクヤが大きくなったら、恥ずかしくてこういう遊びしてるとこを見せらんないだろうし、今の内にやっとかないとな。
……いや、案外何も気にせず、二人が大きくなっても同じことをしてるかもしれんが。
新年一発目がこれよ。
まあ、ウチの作品らしいか……。




