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魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
ダンジョンの日常 vier!!!!
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閑話:野球盤

 続きが書き終わらなかったので、一旦閑話。


 ――ダンジョンにて。


「む、これは……!」


 DPカタログを何とはなしに見ていた俺は、ソレを発見する。


 前世関連のものなので、ちょっと高いが……見た瞬間に、欲しくなってしまった。


 ならば、躊躇などしないのが魔王である!

 が、どれくらいのDPを使用したかは、嫁さんらには内緒にしとこう!


 だって、全然実用品じゃないからね!



   *   *



「レフィー! 勝負しようぜ、勝負!」


「む、良いぞ。今日もまた、お主の負け犬の歴史に、新たな一ぺーじを加えてやるとしよう」


「いいことを教えてやろう、レフィシオス君。そうやってよく吠えるのは、弱者の証なのさ。強者は、黙して語らず、だ」


「ほう、言うではないか。では、お主と儂、いったいどちらが強者として相応しいか、決めねばならんな!」


 いつもの如くゴロゴロしていたレフィは、起き上がって、俺のところまで寄って来る。


 お前、ホントそういうところ可愛いよな。


「いいだろう! その勝敗は――コイツで決めるぞ!」


 ババン、と俺がレフィに見せたのは――野球盤。


 男ならば、恐らく誰しも一度は遊んだことがあるであろう、アレである。


「む、何じゃ、その珍妙な板は?」


「これはな、野球盤ってゲームだ。前に、お前と野球したことがあるだろ? あれをボードゲームで再現したものだ」


「ふむ? やきゅーは覚えておるが、それならば、普通に外でそっちをやれば良いのではないか?」


「いや、それは死人が出るので」


 主に死ぬのは俺だ。


 コイツとやるスポーツは超人スポーツになるので、死にたくなければ、バドミントンとか、卓球とか、軽い球でやるものに限る。


 バレーボールとかでギリギリだな。

 サッカーボールだと、仮にレフィのキックしたものを、一般人が顔面に食らおうものなら、首が飛ぶ。俺も、意識が保てるか微妙なところだ。

 

 ちなみに野球の硬球だと、簡単に死にます。はい。


「オホン、まあ今日は外に出る気分じゃないから、コイツで遊ぼう。お前、バッター側――そっち側座れ。俺が投手で、こっち側な。ルールは、俺がここからボールを放つから、それを打ち返すっていう、野球と同じモンだ。んで、ここの表示に……あー、わかり辛いだろうから、ちょっと待て。書き直す」


 レフィは野球盤に書かれた日本語が読めないので、俺はペンを取り出し、上書きしてこちらの言語に書き直す。


 将棋の駒とかは、ウチの住人はもう完全に覚えているのだが、それらは『文字』じゃなく『記号』として覚えられてるからな。


 日本語がわかる訳ではないのである。


「ふむ……そこのは、ろーま字、じゃったか? 前世のお主のところの文字は、ほんに数多あるのう」


「これは、龍族の文字とヒト種の文字が違うのと同じようなもんだ。前世だと、このローマ字使ってる文化圏が世界的に強くてな。だから、どこの国もローマ字は普通に読めるんだ」


「ほう? 確か、にほん語は三種類あるじゃろう? つまり、それらも別々の文化圏で使われておるのか?」


「いや、それは日本だけだが」


「……そうか。ようわからんとこじゃな」


 まあ、漢字圏は日本だけではない訳だが、そこまで詳しく説明しなくてもいいだろう。面倒なので。


 そんな雑談を交えつつ、野球盤のルールを教えた後、俺達は野球盤を挟んで相対する。


「じゃあ、行くぞ! 我が投球を見るがよい! 食らえ、火の玉ストレート!」


「ぬっ!」


 何の捻りもないストレートで発射された球を、レフィはカン、と打ち返し――が、盤上を転がった球が入ったところは、アウト表示だった。


 一アウトである。


「ぬぅ、アウトか。上手く弾き返したと思うたのじゃが」


「そこは、半ば運ゲーだな。こんな感じで、交代してやっていくんだ。じゃ、次行くぞー」


 そうして無難に一回は進んでいったが、両者得点はなく終了。


 俺も、特に打つことはしなかった。


「ふむ、大体理解した。これは、どちらが狙ったところに、球を飛ばせるか、という勝負なのじゃな」


「そうか、理解したか」


「……何じゃ、その胡散臭い笑みは」


「さて、次行こうか、次」


 俺は答えず、ただニヤリと笑みを浮かべてそう促す。


 一回が終了したので、次は二回表。


 再びピッチャーは俺、バッターはレフィだ。


 ――勝負は、ここから。


 ゲームに慣らしてやるため、とても優しい俺は、一回は何もしなかったが……レフィはまだまだ、このゲームを理解していない。


 ククク、ここから、野球盤の本当の(いや)らしさを味わわせてやるぜ……!


「じゃあ、二回表だ。――行くぞ! カーブボールだ!」


「ぬっ!?」


 放ったボールは、ギュイン、と打者の手前でカーブし、バットは空振り。


 野球盤をやったことがある人なら知っているであろう、磁石の操作で変化するアレである。


「な、何じゃ今のは!」


「これはな、カーブボールだ! 投手の握りによってボールは千差万別に変化する……そう、俺は、七色に変化する、黄金の右腕を持つ男なのさ……」


「持つ男なのさ、じゃないわ! 握りも関係ないし! さ、先に説明せんか、そういうものは!」


「いやいや、何を言うのかね。最初にカーブボールと宣言して、こうして実演し、手の内を親切に教えてやったではないか。はー、理不尽な難癖を付けられると、嫌になっちゃうなー」


「ぐっ、た、確かに宣言しておったが……!」


 ちなみに、何も理不尽じゃない、正当な抗議だと俺も思う。


「フ、フン、いいじゃろう、お主の手の内は理解した! 次で打つ!」


「その意気や良し! 我がライバルに相応しい! 是非ともこのカーブボールを打ち破ってみせよ――と思わせて消える魔球!」


「ぬわぁ!?」


 カコン、と打者の手前の部分が下に窪み、ボールがその中へと消えていく。


 今度もまた、バットは空振りに終わる。


「か、かーぶぼーるではないではないか!?」


「フフフ、七色に変化すると言っただろう? これはな、消える魔球だ! ボールは虚空に消え、打者は幻惑され、ただ空しくバットの空振る音が響き渡るのさ……」


「虚空というか、物理的に消えただけじゃろうが!」


「何を言っているのかわからんな! 次、三球目だ! フン! と思わせてフン!」


「ぬわぁ!?」


 俺は、投球モーションに一回フェイント入れ、それに見事引っ掛かったレフィはバットを振ってしまい、その後にボールが通過する。


 これ、ピッチャー側の仕掛けを動かすと、設置されているピッチャー人形の手が同時に動くので、ただの直球でも、かなりのフェイントになるのである。


 やられる方はかなりイラっとする。

 やる方はメッチャ楽しい。


 そう、それが、野球盤なのだ!


「そ、それは確か、実際の野球ではぼーく、という奴じゃないのか!?」


「これは現実じゃなくボードゲームなので、ボーク判定はないんですー。残念でしたー。――さあ、どんどん行くぞ!」


 そのままレフィは、俺に翻弄され続け、三者凡退で終了。


 バットに掠らせることも出来ず、得点無しである。


「…………」


「おっ、レフィさんのピキりゲージが、一つ上がっていますねぇ。悪いな、レフィ。俺はお前の喜怒哀楽、全てを愛していてな。だから、ついそれを見たくなってしまうんだ……」


「そのような歪んだ愛情はいらぬわ、阿呆!」


 ちなみに、ビキりゲージが十溜まると、大怪獣レフィが誕生する。

 そして、魔王と大怪獣によるガチンコファイトが勃発するのだ。


 大体魔王の敗北で終了なのだが、それでも俺は、コイツが悔しがって、怒るサマが見たいんだ……!


「フフフ、次、二回裏だ。お前の投球だぜ? だが、このゲームを熟知している俺に、果たして変化球が通用するかな?」


 実際のところ、仕掛けを知っていたところでどうこうなるものではないが、レフィを焦らせるためのブラフである。


 焦ろ、焦ろ……それがお前の首を絞めるのだ……!


「……そうか。そういうことをしてくるのであれば、儂にも考えがある。お主が七色ならば、儂は百色の変化じゃ! 儂を怒らせたこと、後悔するが良い! 食らえ、我が百色ぼーる!」


「はっ、百色――何ッ!?」


 その瞬間だった。


 放たれた球が、突然クイッ、と停止する。


 タイミング良く振ったはずのバットは空振り、そこで再度ボールが動き出し、ストライク。


 ……今の停止は、この野球盤には存在しない機能である。


 まず間違いなく、レフィが魔法で何かしたのだろう。


「おまっ、それは反則だろ!?」


「反則ぅ? 何を言うておるのかわからぬのぉ~。このげーむに、そのような反則が存在するのならば、かーぶぼーるも、消える魔球も、全て反則じゃろう?」


「ぐっ……! ……ま、まあ、俺は心が広いからな! お前の反則紛いの投球も、見逃してやろうではないか!」


「やれやれ、恩着せがましい奴じゃ。心の広さで言えば儂の方が広いじゃろうが、可哀想なお主のためにそこは否定しないでおいてやろうかのう。――じゃが、勝負はここからじゃ!」


 そうしてレフィは、次のボールを発射する。


 何が来るかと身構え、魔王の超視力で注視していた俺だが……ボールに動きはない。


 若干怪訝には思いつつも、ならばとタイミングを見計らってバットを振り――が、当たる寸前でポンとボールが跳ね、バットを避ける。


 当然空振り、ストライクだ。


「待て待て待て、それは流石にずるくねぇか!?」


「何を言う、消える魔球があるのならば、跳ねる魔球があってもおかしくないじゃろう?」


「それを言い出したらお前、マジで何でもアリじゃねぇか!?」


「ほーう? 何も知らぬ儂に、色々しておったくせに、儂の方が何かしたら狡いと? それは、道理が通らぬのではないかのう?」


 顔を引き攣らせて声を荒らげる俺に対し、道理は我に有り、と言いたげな様子で、勝気な笑みを浮かべるレフィ。


「……レフィ! どうやらお前には、教えなければならないことがあるようだな! いいか、野球は、変化球が多ければ偉いのではなく、全ては使いようだ! つまり、頭脳だ! 浅はかなお前に、野球の奥深さを味わわせてやろうではないか!」


「はん、言いよるわ! 口を開けば変化がどうの、頭脳がどうの! 全ては力よ、圧倒的なる力こそが、相手をねじ伏せるんじゃ! お主の浅はかな知恵など、赤子の手を捻るが如く、粉砕してやろうではないか!」

 

 その後、案の定俺達の戦いは白熱し、終わることはなく。


 ギャアギャアと騒ぎ続け、一触即発となりながらも勝敗は付かず、外部勢力による「夕ご飯ですよー」という声で休戦に至り、戦いは終了する。


 我々の日常である。


 調べて知ったんだが、今の野球盤って上下にも跳ねて変化するんだな……いや、打てんだろ、それは。


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こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] 消える魔球はあかんよw俺みたいに、友達とリアルファイトするハメになるからねw
[良い点] 今日もダンジョンは平和です。 ご飯って呼ばれて、ちゃんとすぐに向かうの偉いな。 すぐに来ないとイライラするからな…。 [気になる点] ユキは言語翻訳スキル持ってるけど、こっちの世界の言語習…
[一言] いやぁ毎度ほのぼのしつつ小学生みたいなテンション内容でで勝負してるの好きw ……え!?今3次元に変化するの!?( ゜д゜)
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