閑話:幼女達の秘密基地
まさかの二週連続閑話。
すまんな!
イルーナは、眼前に揃っている幼女軍団に向かって、言った。
「しょくん! これより、ひみつきちお泊り大作戦を開始します!」
「おー!」
「……おー」
シィとエンの拍手に続いて、レイ、ルイ、ローの三人が、音はならないものの透明な身体で同じように拍手をする。
――現在彼女らがいるのは、幼女達のお気に入りの遊び場である城の中庭、その一角に造られている秘密基地である。
ダンボールに布、ガムテープ、木材と釘を使用し、かなり本格的な造りとなっている。
中は、スペースのある一室と、小さめで物置として使っている一室の、計二部屋が存在している。
床にはまずダンボールが敷かれ、その上にレジャーシートという構造になっているので、防寒に関しては完璧だ。
窓も数か所に造られているため、通気性もバッチリである。
欠点と言えば、全員で騒いでいると若干暑くなる、という点だろうか。
それも、魔力を使用して回る扇風機の導入によって、緩和されているが。
ちなみにこのダンボールだが、これは何かを入れていたものの残りではなく、DPカタログに載っていた『ダンボール箱』というそのままのアイテムである。
前世由来のものなので、実はガムテープと並んで結構高いのだが、「ひみつきちが作りたいの!」という幼女達の声をユキが聞き、「よし、じゃあいいもの出してやる! 秘密基地ならこれだ!」と、大量のそれらをババンと用意したのだ。
後程、ユキだけが怒られている。
この二部屋の内、スペースのある方は、何と二階建ての造りとなっており、一階にテーブルとイス、棚などの簡単な調度品が置かれ、二階では一泊出来るように、毛布等の寝具が人数分置かれている。
明かりに関しては、これもまた魔力で光るランタンが数個設置されており、夜でもしっかり照らすことが可能だ。
調理用の器具も、幼女達が使えるよう小さめに設計されたものが一通り揃えられており、秘密基地の外に併設する形でキッチンがあり、ユキによってそこに水道も引かれているので、料理も可能な環境になっている。
火の扱いに関しては許すかどうか大人組で少々協議したのだが、「魔法があるし、お主のえりくさーもあそこには置かれておるし、まあ大丈夫じゃろ。変に火を扱っておったら叱らねばならんが、あの子らはそこらの分別はしかとつけられるぞ」というレフィの言葉により、許可された過去がある。
秘密基地の二階部分だけは柔くしてしまうと危険なので、若干ユキの協力があったが、それ以外は全て幼女軍団だけで作り上げられている。
身体の小さい彼女らにとっても若干の狭さはあるが、その狭さがむしろ、ワクワク感を高揚させるのである。
魔法が使えるから、という面は確かにあるが、基本的にハイスペックで賢く、どこかの誰かの影響で『遊びには全力!』を信条に掲げている彼女らによって、この最強の秘密基地は誕生していた。
「まず、本作戦の流れと、注意事項を話すよ!」
一階部分に設置されている小さ目のホワイトボードの前で、イルーナはみんなに向かってそう話す。
このホワイトボードは、今日のような何らかの作戦会議でよく使用されている。
つい最近では、かくれんぼ大作戦や遠足大作戦、宝探し大作戦等で使用されている。
大人っぽい雰囲気になれるので、割と全員気に入っているのである。
そして、こういう時の進行役は、やはりイルーナである。
エンは基本的に受動的だし、ダンジョンによって生まれたシィ、レイ、ルイ、ローの四人は、すぐに話があっちこっちに行ってしまうので、しっかり者のイルーナでないと会議が進まないと本人達自身が理解している結果である。
「――はい、こんな感じです。質問をどうぞ!」
「……はい。ご飯は、どうする?」
「こういう時はカレーだってお兄ちゃんが言ってたから、カレーです! 火の扱いだけは気を付けるように、っていうレイラお姉ちゃんからの言葉です!」
「ヒは、こーげきりょくたかめで、こわいもんね~。アチチなったら、こまっちゃうよ」
「……ん。火は強い。アチチは駄目。みんな、気を付けて」
火の怖さを何度も教え込まれている幼女達は、そう互いに注意し合い、うんうんと頷き合う。
「じゃ、次の質問、どうぞ!」
「はい! トランプたいかいのかいさいを、しょもーします!」
「良い案だよ! トランプ大会は勿論、是非とも色んな遊びをしようと思います。今日はね、夜更かししちゃうために、準備もしてきたから!」
「あっ、イルーナ、きょういっぱい、おひるねしてたもんね~。じゅんびばんたん!」
「……ん。素晴らしい体力管理」
「わたし、みんなより体力ないからね、いっぱい楽しむための戦略だよ!」
イルーナは別に体力が無い訳ではなく、というか同年代の子供と比較すれば相当に体力がある方なのだが、彼女にとって比較対象となるのは他の幼女達である。
ダンジョン出身であるシィとレイス娘達は、分類としては魔物だし、エンは魔剣だ。ただの子供など、比べ物にならない程の体力がある。
故にイルーナは、客観的に判断してそのように思っているのである。
「……ワクワクしてきた。早くカレー作ろう、カレー。それで食べて、お風呂入って、歯を磨いた後も、いっぱい遊ぶ」
「うわぁ、よふかし、たのしみだね! レイちゃん、ルイちゃん、ローちゃん、きょうはながいじかん、いっしょにあそべるね!」
シィの言葉に、レイス娘達が、嬉しそうにクルクルと中空で小躍りする。
彼女らは肉体がないため、突出して疲れ知らずであり、故に夜が長く暇な時間が多いのだ。
「よーし、それじゃあ作ろっか! エンちゃんは切るのを、シィはお野菜洗うのお願い! レイちゃん、ルイちゃん、ローちゃんは、お米をお願い! 魔力食材も、お兄ちゃんが用意してくれてあるから、楽しみにしててね!」
そうして彼女らは、『ひみつきちお泊り大作戦』を開始する。
協力し合い、ちょっと苦労しながらも料理を終え、作り終えたカレーを「美味しく出来たね!」「……ん、上手く行った」「なんだか、いつもよりおいしくおもっちゃうよ~」と感想を述べながら食べる。
それから旅館にある滝温泉に浸かり、歯を磨いた後は、最高のワクワクの時間だ。
いつもの真・玉座の間ではなく秘密基地へと戻り、幼女達だけでワイワイと騒ぎながら満足するまで遊び続け、そして疲れて泥のように眠るのである。
――ユキが、自由に楽しく、人生を謳歌してほしいと願っている、幼女達。
だが彼女らは、現時点ですでに、心から日々を楽しみ、満喫し、人生を謳歌していた。




