閑話:怪獣ごっこ
すんません、ぜーんぜん続きが書き上がらなかったので、緊急回避的に閑話を投入。
「おにいちゃんおにいちゃん!」
「おう、なんだー」
「肩車してー!」
「? わかった、いいぞ」
イルーナが、ストレートにこうしておねだりしてくるのは珍しいので、俺は少し不思議に思いながらも彼女を肩車する。
「わっ、たかーい! えへへ、ありがと、おにいちゃん。それでね、お願いがあるんだけど、このままみんなのところへ行ってほしいの!」
そこまで言われ、俺は彼女が何を求めているかを理解する。
「なるほど、怪獣ごっこでイルーナが怪獣役なんだな?」
「そうなの! お願い出来る?」
「任せろ、立派な怪獣として哀れな一般市民達を薙ぎ払ってやろう! ぐわーっはっは!」
「やったぁ! ぐわーっはっは!」
一瞬で怪獣へと変貌した俺達は、高笑いして肩車状態のまま草原エリアへと向かい――。
「む! あらわれたネ、イルーナかいじゅー! あるじはかいじゅーでもつよいけど、まけないんだから!」
「……いいや、勝つのはエン怪獣」
「あぁ……やはり、お主も連れて来られたか」
「イルーナちゃんが中に戻って行ったところを見て、予想はしてたっすけど、案の定って感じっすねぇ」
そこにいたのは、シィを肩車したレフィと、エンを肩車したリュー。
なるほど……てっきり、怪獣ごっこでヒーローならぬヒロインと怪獣に分かれるのかと思ったら、そうじゃなくて怪獣大戦なのね。
ウチの幼女達は、こう、遊びに一捻りを加えてくるのが好きだよな。
誰の影響だろうか。俺か。
「フッ、怪獣達よ。我が怪獣として名乗りを上げた以上、お前達はただ我の養分となるのみだ!!」
「なるのみだー!」
「何を言うかと思えば。怪獣と言えば儂! 儂と言えば怪獣! お主らなど、小指だけで一捻りじゃ!!」
「うおー! レフィおねえちゃんは、ツよいぞー!」
「フッフッフ、わかってないっすね、二人とも! ウチの秘められしメイド力を解放すれば、ウチの実力は何倍にも跳ね上がり、二人を凌駕する真の怪獣へと至るっす!! ……ま、マズいっす、ウチ二人程体力ないんで、すでにちょっとキツくなってきたっす」
「……頑張って、リュー」
我々ももう、慣れたものなので、それぞれ怪獣になり切って肩車したままポーズを取り、続いて幼女達が元気良く声をあげる。
あとリュー、頑張れ。もうちょっとだけ耐えろ。
戦闘になったら、先に倒してやるからさ。
ちなみに、ここに来て気付いたのだが、レフィが魔法で整えたのか地面の芝生が物凄い柔らかくなっていた。
ともすれば、足を取られそうな程である。
恐らく、頭から落ちてもケガしないのではないだろうか。
多分、幼女達が肩車から落下しても、大丈夫なように準備したのだろう。
アイツも、大分無駄な魔法の使い方を覚えてきたな。
「フーハハハ、いいだろう、我々の中で誰が真の怪獣か、その身体にわからせてやろう!!」
「きゃーっ」
そう言って俺は、イルーナを落とさないよう気を付けながら突撃を開始。
まず狙うのは、怪獣として体裁を保てなくなりつつあるリューである。
「ぐぬぬ、ウチとて一端の怪獣!! ただやられるばかりじゃあないっす!!」
だが彼女は、力を振り絞って俺の突撃を回避すると、そのままこちらに組み付いてくる。
「今っす、エンちゃん!! ウチの半身として、攻撃を仕掛けるっす!!」
「……任せて」
「おわっと」
「あっ、あははは、エンちゃん、くすぐったいってぇ!」
「……イルーナの弱点は、把握済み」
リューから分離し、俺に乗り移ってきたエンが、上のイルーナをくすぐり始める。
「フッフッフ、ウチを気遣ってくれたんでしょうが、その気遣いが命取り!! くたばるがいいっす、ご主人!!」
そして、自由になったリューが俺の服の中にズボッと手を突っ込み、エンと同じようにくすぐり始める。
「うひっ、お、おま、うひひひ、ちょ、直接はやめろよ!! 色々触ってるところが際どいぞ!!」
「バカめ、ウチらは夫婦!! ならばご主人の身体はウチら嫁陣のもの!! である以上、どこを触ろうが自由っす!!」
「くっ、あひっ、お、お前、後で覚えてろよ!!」
「げっへっへ、ご主人、いい身体してんじゃないっすかぁ、このこのぉ!」
俺が二人の幼女達を支えて動けないのをいいことに、さわさわと遠慮なくくすぐってくるリュー。
どうにか反撃を、と考えていた俺だったが――救いの手は、横から訪れる。
「お主ら、儂を忘れてもらっては困るのう!! 行くぞ、シィ!! 奴らを恐怖のどん底へ陥れてやれ!!」
「まかせて、おねエちゃん! はっはー、かくごしろー!」
そこに突撃してくる、レフィ怪獣とその半身のシィ。
絡み合っている俺達のところまで来たレフィは、両手を広げてぐわしと俺とリューを掴むと、上に乗っている幼女達もろとも、驚異的な力で全員を持ち上げた。
「ぬおお!?」
「うわああ!?」
「うひゃあ! レフィおねえちゃん、すごーい!」
「すゴーい!」
「……力持ち」
「ハーッハッハ!! 全く、規模が小さい戦いをしおって!! 怪獣とは、全てを力で捻じ伏せるのよ!!」
「キングコングレフィ」
「よし、ユキ。童女どもを放せ。お主を投げ飛ばす」
「なっ、き、聞かれていただと!?」
――そうして六人で遊んでいた時、ふわふわと宙を浮きながらこちらに飛んでくる、レイス娘達。
三人とも自信満々な顔を浮かべており、何かを企んでいることがよくわかる顔を浮かべている。
「む、現れたな、レイス娘達よ。その顔は、何か企んでいる時の顔! 是非ともその企み、見せてみるがよい!!」
俺の言葉に、彼女らはニヤリと笑みを浮かべて魔力を練り始め――突如、ズゥン、と地面が振動し、合わせて砂埃が立ち昇り、その向こう側に何やら巨大な影が見え始める。
砂埃のカーテンが晴れ、やがて出現したのは――俺の城にも匹敵しそうなサイズの、大怪獣。
どことなく、放射能を食らって生み出された、巨大怪獣を思い浮かべるようなデザインである。
内閣総辞職ビーム出そう。
……それにしても、芸が細かいな。
登場の仕方までこんなに凝り始めたとは……良いことだ。
多分、いや間違いなくアレは、レイス娘次女ルイの幻影魔法で生み出された幻影だと思われるが、俺達は現れた幻影に気圧されたように、それぞれ一歩後退る。
「くっ、な、何て恐ろしい……だが、我々が力を合わせれば、あの怪獣とて倒せるはずだ!! 今こそ、怪獣同盟を結んで、あの巨大怪獣を倒すのだ!!」
「いいじゃろう、我ら怪獣、一時停戦じゃ!! ここに同盟を締結し、力を結集するぞ!!」
「わ、わかったっす! 覚醒せしウチのこの力、その全てをアレにぶつけるっす!!」
怪獣同盟を結んだ俺達は、巨大怪獣に向かって走り出し――と、動き出したヤツは大咢をガパリと開き、その口にまばゆいばかりの光が溜まり始める。
「い、いかん、お主ら逃げ――」
レフィの静止も間に合わず、発射される極太のビーム。
空気を震わし、大地を割き――なんてことはないが、まあとにかく凄い勢いで迫り来るソレに、俺達全員の身体が包み込まれる。
「どわーっ!?」
「ぬわーっ!?」
「うひゃー!?」
そして俺達は、ビームによって五体をバラバラに吹っ飛ばされ、死んだ。完!
* * *
「すごーい!! 三人とも、いつの間にそんなの出来るようになっちゃったの?」
「これは、レイちゃんルイちゃんローちゃんのかちだネー」
「……負けを認めるのに、吝かでない」
「やぶさかやぶさかー!」
「やぶぶブー!」
キャッキャと喜ぶ幼女組の横で、俺達大人組は、ドサっと地面に腰を下ろしていた。
「あー、疲れたっす……ウチ、本気で身体を鍛えようと思うっす」
「童女どもの体力は、ちとおかしいからのー……今度儂と一緒に、魔境の森へ行くか?」
「……検討するっす」
割とマジの顔でそんなことを言うリュー。
大人とは、子供のために無条件で全力を尽くすのである。
「ハハ、鍛えるのはいいが、ケガしないようにな。――うし、これで幼女達は満足しただろうし、俺達は風呂に行くか。今日はリューが頑張ってたし、俺がしっかりと労を労ってやろう」
よっと立ち上がり、ニヤリと笑うと、彼女は頬を赤くしてはにかみながら答える。
「え、えへへ……じゃあ、お願いするっす! いっぱい労ってほしいっす!」
「うむ、任せるがよい」
と、そう言いながら俺がチラと視線でレフィの方を指し示すと、リューはすぐに俺の意図を理解したようで、いたずらっぽい笑みと共にピトっとこちらにくっ付いてくる。
俺は彼女の腰に手を回して、二人で歩き出し――。
「ちょ、ま、待つのじゃお主ら!」
その俺達の様子を見て、慌てて声をあげるレフィ。
俺達は揃って後ろを振り返り、同時に一度顔を見合わせ――ニヤァ、と笑う。
「おやおや、レフィ。自分が忘れられたと思って、焦ったかぁ?」
「心配になっちゃったんすねぇ、レフィ様。こういうところ、レフィ様は可愛いっすからねぇ」
そこでレフィは、自身が担がれたことに気付き、途端にかぁっと顔を赤くさせる。
恐らく怒りと、羞恥心から。
「お、お主ら! いいじゃろう、お主らがその気だというならば、ここで怪獣大戦せかんどしーずんと行こうではないか!! 今の儂は、先程よりも怪獣としての出力が上がっておるぞ!!」
「あっ、やべぇレフィがキレた! 逃げるぞ、リュー!」
「あははは、あーばよーっす、レフィ様!」
俺達は、笑って逃げ始めた。




