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魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする  作者: 流優
龍の里

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閑話:今宵はいいクリスマス


『メリークリスマス!!!』


 パンパン、と連続でクラッカーの音が鳴り、我が家の住人達が元気良く声をあげる。


 レイス娘達も、声こそ出せないが憑依した人形の身体でクラッカーを引き、そして紙吹雪とテープが舞い散る部屋の中を楽しそうに飛んでいる。


「えへへ、お部屋、汚れちゃったねー」


「あぁ、後で皆で掃除だな。けど、クラッカー楽しいだろ?」


「うん! 楽しい! パンパンパーンって!」


「ぱんぱんぱーン!」


「……パンパンパーン」


「じゃあ、クラッカーごっこね! わたし、紙ふぶきやる!」


「シィはてープ!」


「……エンはクラッカー本体」


 何が「じゃあ」なのか全くわからないが、そう言ってクラッカーの真似らしい遊びを始める幼女達。ちなみにレイス娘達も紙吹雪である。最高に可愛い。


 と、遊び始めた幼女達に和んでいると、隣のレフィが口を開く。


「お主は本当に祭りごとが好きじゃのー」


「まあな、それなりに好きだな。けど、祭りが嫌いなヤツも中々いないだろ? ウチの幼女達も喜んでくれているようだし」


 彼女らはウチからほとんど出られない分、こういうイベントごとはしっかりと消費して、楽しい思い出を作ってもらわねば。


「ま、童女達には色々と経験してほしいというお主の思いも、よくわかるでな。お主の突拍子もない思い付きにも、ある程度は付き合ってやるさ」


「お、ホントか? サンキュー、じゃ、これ」


「えっ」


 俺が渡したのは、ミニスカートのサンタコス。


 受け取って固まるレフィに、俺はいい笑顔で言葉を続ける。


「いやぁ、今年は誰に着せようか悩んでたから、お前がそう言ってくれて助かったぜ」


 とか言いつつ、サンタコスは全員分用意してあるので、女性陣には後で皆に着てもらいます。


「ほら、去年も着たんだから、恥ずかしがる必要ないって。ほらほら、絶対似合うから。絶対可愛いから」


「わ、わかった、わかったから急かすでないわ!」


 今の俺の迸る情熱の勢いは止められないと思ったのだろう。


 大人しくレフィは、シュルシュルとその場でいつものワンピースを脱ぎ、サンタコスに着替える。


「ほ、ほら、着てやったぞ! どうじゃ!」


「うむ……うむ。最高だ。最高に可愛いぞ、レフィ。やはりお前は最高だ」


「ふ、フン、当然じゃ! この儂が着たんじゃからの」


 照れからか若干顔を赤くしながらも、わかりやすく胸を張る我が嫁さん。

 お前は本当にチョロくて可愛いヤツだな。


「じゃ、レフィ、あとこれを持って、それで決めポーズと決めセリフはー……」


「えぇっ、き、着替えて終わりじゃないのか!?」


「? そりゃ勿論、それだけで終わりにしたら面白くないだろ? よしレフィ、今からお前に真のサンタとなるための御業を伝授する。しっかり覚えるように」


「ぐっ……し、仕方がない。さっさと此奴を満足させて、この茶番を終わらせるか……!」


 ――そうして俺から真のサンタの御業を伝授されたレフィは、プレゼント袋を持って、キャピッとポーズを取り、ダンジョンの住人達に向かって言った。




「はーい、皆、覇龍さんたじゃよ~! ダンジョンの皆は、今年一年、いい子にしていたかの? 悪い子には、ぷれぜんとはあげないんだゾ!」




 その時、ダンジョンの時間が停止した。


「あ、あの、レフィ……何か悩み事があるなら、僕、聞くからね……?」


「れ、レフィ様、ちょっと疲れてるんじゃないっすか? お布団敷いて、ちょっと休むっすか?」


「可愛らしい恰好ですねー」


「…………よし、ユキ。お主を殺す」


「何で!?」


「うるさい! お主の阿呆な思い付きに付き合ったのが間違いじゃったわ!!」


 顔を真っ赤にし、シャアア、と怒りのポーズを取るレフィに、俺は両手を前に伸ばして必死に制止しながら口を開く。


「まっ、待て、レフィ! 見ろ、幼女達にはしっかり大人気だぞ! 大人組には受けが悪かったかもしれないが、今ので幼女達の心はバッチリ掴めたはずだ!!」


「む……!」


 俺の言葉に、レフィは幼女達の方へと顔を向ける。


「わー、はりゅーサンタだ! 可愛いー!」


「さんタさんだ! ありがたヤ、ありがたやー」


「……ん、とても可愛い」

 

 レフィを見て、歓声をあげる幼女達。

 シィ、君は多分、何か少し勘違いしている。


「ど、どうだ、俺の伝授した真のサンタの御業、決してムダなものではなかっただろう! お前はその恰好をやめ、幼女達をガッカリさせるのか!」


「ぐ、ぐぬぬ……いいじゃろう、わかった。童女どものために、この恰好のままでいてやろう。じゃがユキ、お主はムカついたから一度殴る」


「何故に!?」


 そして始まるのは、血の惨劇。


 キレて追い掛ける覇龍に、必死の形相で逃げる魔王。


 だが、本気の覇龍から彼が逃げられるはずもなく、すぐに追いつかれ……鉄拳の制裁をその身に受けることになる。


 掠れゆく意識の中で、彼は最後に、壁にもたれかかるように倒れながら、言ったのだった。


 メリー、クルシミマス、と――。


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こちらもどうか、よろしくお願いいたします……! 『元勇者はのんびり過ごしたい~地球の路地裏で魔王拾った~』



書籍化してます。イラストがマジで素晴らし過ぎる……。 3rwj1gsn1yx0h0md2kerjmuxbkxz_17kt_eg_le_48te.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] そこはベリークルシミマスだと思う今日この頃w
[一言] " 本気の覇龍 " (笑) から瞬殺されず 少しの間だけだろうと逃走可能なだけで素晴らしい! グッジョブ! (笑) 魔王様 ‼︎ 最高のセリフ選択です! 『ザ・ワールドっっ!』(爆笑!)…
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