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第1話 もう一度、生きる

 剣の音が、耳に残っている。


 金属がぶつかる甲高い音。


 誰かの怒鳴り声。


 途切れ途切れの悲鳴。


 そして、血の匂い。


 ここは戦場だった。


 メリルダ大陸全土を巻き込んだ、大戦争の最前線。


 俺は、その中のただの一兵士だった。


 特別な力はない。


 名を知られるような人間でもない。


 生き残るために剣を振るう。


 ただ、それだけだった。


 目の前で仲間が倒れる。


 次の瞬間には、自分に刃が向けられる。


 反応が遅れた。


 腹に、強い衝撃。


「……っ」


 息が止まる。


 視線を落とすと、剣が自分の体を貫いていた。


 膝から崩れ落ちる。


 地面は冷たくて、やけに現実感があった。


 ああ、終わりかと思った。


 悔しいというより、あっけない。


 結局、何もできなかったなと、ぼんやり考えながら——


 そのまま意識は途切れた。










 次に目を開けたとき。


 世界は、まるで違っていた。


 やわらかい光。


 静かな空気。


 誰かの声。


「元気な男の子です」


 その言葉を聞いたとき、自分が何者か分からなかった。


 体は思うように動かない。


 声を出そうとしても、泣き声しか出ない。


 そこで、ようやく気づく。


 ——生まれ変わっている。



 ここはメリルダ大陸。


 そして俺は、アスティア帝国の貴族——バーデン公爵家の次男として生まれた。


 前世で死んだあの戦争は、すでに終わっていた。


 今は、戦後10年の時代。


 表面上は落ち着いているが、国同士の緊張や貴族間の争いは残っている。


 力がなければ、簡単に押しつぶされる世界だった。


 俺の名前は、エイト。


 前世の記憶は、はっきり残っている。


 戦場で何もできずに死んだことも。


 流されるままに生きてきたことも。


 だから今度は、同じようにはならない。


 特別なことをするつもりはない。


 ただ、与えられた環境の中で、自分にできることを積み重ねる。


 それだけでいいと思っていた。


 父は、アバン。


 多くを語らないが、家族をよく見ている人だ。


 厳しさはあるが、感情で動くことはない。


 母は、ロゼッタ。


 やさしく穏やかで、家の空気を和らげてくれる存在だった。


 自然と周りを気遣える人だと思う。


 兄は、アル。


 次期当主として育てられていて、真面目で努力家。


 俺とは違って、最初からちゃんとできるタイプだ。


 妹は、リリア。


 よく笑って、よく話す。


 家の中で一番素直で、見ていて落ち着く存在だった。


 そんな家族の中で、俺は育った。


 兄と比べれば、自分は器用じゃない。


 できないことも多い。


 それでも、焦ることはなかった。


 できないなら、できるようになるまでやるだけだと、前世で学んだからだ。


 少しずつ、できることを増やしていけばいい。


 それで十分だと思っていた。


 そして、12歳になった日。


 教会へ向かうことになった。


 この世界では、12歳になると教会で“スキル”を授かる。


 それは、その人の可能性を示すもの。


 強いスキルなら、大きな力になる。


 弱ければ、それなりに生きていくしかない。


 だから、多少の緊張はあった。


 朝、家族そろって食卓につく。


「そんなに緊張しなくても大丈夫よ、エイト」


 母がやさしく言う。


「少し顔に出てるぞ」


 兄が淡々と続ける。


「そういうものだ。気にするな」


 その言葉で、少し肩の力が抜けた。


 リリアがこちらを見て言う。


「すごいスキルだといいね!」


「どうだろうな」


「でも、すごくなくてもいいよ。エイトおにいさま、ちゃんとしてるもん」


 思わず少し笑った。


 父は静かに言う。


「結果がどうであれ、受け止めろ。それだけでいい」


「はい」


 短く答えた。


 教会へは、家族全員で向かった。


 中は静かで、空気が張り詰めている。


 神官に案内され、祭壇の前に立つ。


 家族は後ろで見守っていた。


 光が差し込む。


 次の瞬間——


 頭の中に、何かが流れ込んできた。


 言葉として理解される。


 スキルの名前と、その内容。


 思わず、息が止まる。


 ゆっくりと、その意味を噛みしめる。


 そして——


 理解した。




 暴食!?


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