第一話 「仲間を求めて」
初依頼を無事達成し、腹の傷が完治するまでは依頼ができまいと安静にして一週間。
その間も出入りは繰り返していたので最早慣れ親しんだと言っていい冒険者ギルドの酒場で、僕とメメルさんは顔を突き合わせて話し込んでいた。
「やっぱり神官さんは要りますよね……」
「ん……けが、なおすひと、いる……」
「ギルドはパーティの人数制限を設けてませんから、あまり悩むこともないのかな……確か一番多いパーティ編成が『金』クラスの『黄昏』……36人パーティでしたっけ」
「……ほうしゅう、あたまわり…………さかな、かえない……?」
「あ、そっか……やっぱり慎重に行った方がいいですね……一度入って貰ったのに後で抜けて貰うのは悪いですし」
「……うん」
「うーん…………」
悩み、呻きながら頭を掻く僕。
メメルさんと話しているのは、これからのパーティの編成についての話だ。『銀』クラスの依頼でも、二人だとちょっと安定感に欠けるところ、なんとこの間の獣での活躍の結果、僕のクラスが『金』に上がってしまったのだ。ギルドとしては自分のクラス未満の依頼は受けてもらわないのが好ましいというのもあり、僕はもう『銀』クラスの依頼は受けにくい。僕とメメルさんの実力が『金』で通用しないわけではないが、流石に二人でどうにかできるレベルではない。そんな訳で本格的に仲間を増やす為の相談をしているのだった。
「でも『金』クラスで凄腕の癒し手……それもフリーの、なんて早々いる訳」
「いますよー」
「うわっ!?」
ぬるっと会話に割り込んでくる受付嬢。よく見ると僕の頼んでいたお茶にしれっと勝手に口を付けている。間接キスだ。躊躇いもなくそういうことをされると、流石にちょっと恥ずかしい。顔が熱を持ち、そしてそれをみて受付嬢がにやにやと微笑を浮かべた。
「あれ? 顔赤いですよ? もしかして私にドキッとしちゃいました!? やだー! す☆け☆べ♡」
「……もう、相変わらず元気ですね! それで、何の用ですか? お仕事を放り出してまで来るなんて」
「ええ、まぁお仕事は良いんですよ。みんな慣れて勝手に行きますし。そんな事より貴方に耳より情報! なんと、いますよ! フリーで神官で『金』クラスの人材!!」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ、本当ですとも! 私どもとしてもー、彼女を固定パーティに入れず持て余すのは気がひけるというかー、ちょっともったいない? みたいな感じありますしー? 居場所をお伝えしますので是非勧誘し、仲間に引き入れて頂ければと!! それに貴方がたも実力者なんですから早く依頼行ってもらわなきゃ困りますしね!?」
平常運転というか、いつも通りの謎テンションで勝手に盛り上がる受付嬢。僕とメメルさんは置いてけぼりだが、話そのものは僕としても凄くおいしい。それに彼女のメリットにもなるなら願ったり叶ったりだ。
「えーっと、彼女の家はこーいってあーいって……此処を右? いや左だったかな……」
ブツブツと呟きながらあーでもないこーでもないと羊皮紙に何度も書き直しながら地図を書いていく受付嬢。消しゴムなんてものがある訳ないのでぐっちゃぐちゃだ。辛うじて読めないこともない。
「出来ました!! どうぞ」
「あ、ありがとうございま……す?」
受け取って解読し、その場所を特定したとき、僕は首を傾げた。つられてメメルさんも首をこてんと傾げる。可愛い。
「あの、これって間違いじゃ……?」
「いえ、合ってますよ! ほらわかったら早く早く! 時間は待ってくれませんよー!!」
受付嬢は脇を掴んで無理矢理に僕を立たせると、背中を押して僕をギルドの外へと追い出した。
「……まぁ、合ってるというなら行きますけど」
──この時、僕は理解していなかった。
実力はあるのにフリー。このご時世で。つまり──訳ありじゃねぇわけないじゃん、という事を──




