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第二十三話 「結果」

 しばらくして、机を囲む四人。

 メメルさんとサリアさんは平常運転……まぁサリアさんは少し不機嫌そうにしているが。

 ただ、問題なのは……というか、何時もとは違うのが。


「………………」


 顔を真っ青にして冷や汗を流し明後日の方向に首を向ける受付嬢と、微笑みながらも青筋を立てる僕だった。


「…………さて」


 僕がとん、と指で机を叩くと、受付嬢さんの肩がビクッと跳ね上がった。

 借りてきた猫のように恐る恐る僕の顔を伺う受付嬢さんに、僕は一言。


「転職先の相談でもしましょうか♪」

「待ってくださいぃぃぃぃぃ!!!」


 涙声で机に手をつき頭を下げ、土下座のような体勢で懇願する受付嬢。

 そんな光景に僕は一つ、はぁとため息を吐いた。



 ◇◆◇◆◇◆



「全く……僕だったからいいですけど。大貴族の嫡男相手にコブラツイスト仕掛けてオトすなんて前代未聞ですよ?」

「あ、あはは……ごめんなさい」


 先程の怒り顔はただの演技だったのですっかりと忘れ、受付嬢を戒める僕。

 実際、その場の勢いとはいえ──冒険者なんて『野蛮な』職につく貴族が僕くらいしかいないとはいえ、貴族の嫡男に暴力を仕掛けるなんて自殺行為だ。カールメル家の嫡男は気難しく平民を見下す傾向にあるし、ハインシュタット家の嫡男は、自分に無礼を働いたものを殺してしまうことで有名だ。勿論この地一番の大貴族として、そういう横暴は止めるために尽力はするが、それも目に入ればこそ。彼らが本気になれば僕くらいの目を欺くことなど容易だろう。

 そんな訳で別に怒ってはいなかったが、戒めるために一芝居打ったのだった。


「……茶番はそれくらいでいいでしょ。私としては早く話を始めたいんだけど」


 むすっと膨れ顔でいうサリアさん。やはり少し不機嫌そうだ。長々と説教のために芝居を打っていた為だろうか。そうだとしたら申し訳ない。


「そうですね……では、始めましょうか」


 束ねた羊皮紙の資料を机に置き、受付嬢は話を始めた。なんの資料かといえば、既に報告を終えたらしい先程の依頼の資料。僕が昏倒している間に全て終わらせてくれたらしい。


「まず、エイリアスさんはご存知ないでしょうが……今回の依頼は、あんな獣の討伐を目的とするものではなく、ちょっと森が怪しいから見てきてーくらいの軽い調子のものでした」


 無論、初耳だ。てっきりもともと討伐の予定があったのだろうとばかり思っていたが。


「ええ。だから私たちは凄く油断していたわ。尤も、油断していなくても勝ち目はなかったでしょうけど」

「そ、そこまでですか……」


 受付嬢がたじろぐ。当然だ。涼風はこの街でも最強クラスの冒険者チーム。彼らで勝てないではこの街の誰も勝てないということになるのだから。


「……で、あの獣についてですが……死体を調べさせて貰いましたが、あんなのが出た前例もなく、神話レベルまで遡っても情報一つない全くの謎そのものでした」

「……やっぱり、ですか」


 予想通りの答えに、僕は唸った。

 強者と呼ばれる存在は、ドラゴンやヴァンパイアなど幾らでもいる。あの獣すら超える天変地異とも言える強さの存在もいない訳ではない。それらは畏怖とともに語り継がれ、次第に高名になっていくものだ。つまり、あれ程の獣。観測されたことがあったのなら、僕が知らない筈がないのだ。


「調査の為、死体は専門の機関に運ばせました。他にこちらから何かいうことは無いです。報酬は後にお支払いしますので」

「後に?」

「流石にあれほどの強敵と闘わせておいて、もとの報酬金じゃ此方の面子も立ちませんから。死者も……出ていますからね」


 悲しそうに顔を俯かせる受付嬢。あれ程の高名な冒険者達。受付嬢も、彼らとは付き合いが長かったのだろう。彼女は本気で、死んでしまった彼らを悼んでいた。


「じゃあ……今日はここまでで結構です。お疲れ様でした」


 ぺこりと頭を小さく下げる受付嬢。

 謎が謎のままに残る現状に不安を感じながらも、僕は受付嬢の、今に泣いてしまいそうな顔にお辞儀を返した。

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