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第六話 「初仲間」

「やだ」


 僕と受付嬢さんがそんな感じで盛り上がっているところに、水を差したのは他でもない。メメルさんだった。


「…………めどい」


 ……困ったな。

 説得するのは簡単だけど、説得した結果付いてきてもらうのは簡単じゃない。

 なんでも、行動に起こす容易でも結果を伴わせるのは難しいもので、それに僕なんかは初対面だし。


「そんなこと言わずに、付いてきてくれると嬉しいんですが……お金を手に入れたら魚もちゃんと、盗まずに食べられるかもしれないですし」


 僕の説得に、メメルさんはぷいと他所の方を向いて、興味ないという意思表示をした。


 まぁ、彼女なら幾らでも魚を盗んで食べていけるのだろう。

 しかしそれは犯罪で、困っている人もいるはずだ。

 僕としては俄然、ここで折れるわけにはいかない。

 しかし、どう説得したものか……


「メメルさん。盗むっていうのはいけない事です。ちゃんとお金を稼いで買って食べてください」


 真摯に向き合って話すと、やはり後ろめたい所もあったのだろう。

 少し視線を下に落として耳をぺたんと倒した。

 耳で判るのか……。


「…………うぅ」

「だから、ちゃんと稼いで、今まで取っていた分も含めて返して、ちゃんとお魚食べましょう?」


 命を懸けている上、誰にでも出来る仕事ではない……相応の実力が必要なことから、冒険者の報酬は結構高い。

 『銅』の依頼では雑用が多いので銅貨数十枚程度だが、『銀』からは危険性も跳ね上がるため、銀貨は勿論、金貨が容易に手に入れられる。

 因みに銅貨は一枚百円程度、銀貨は銅貨百枚分、金貨は更に銀貨十枚分。

 この『ゴブリン退治』の達成報酬は銀貨三十二枚。三十二万円だ。

 距離も近いから日帰りで出来るし、日給三十二万といえばその効率の良さがわかるだろう。

 尤も、人数で割るからそう都合よくはいかないが。

 一般的な四人パーティで一人頭銀貨八枚。二人パーティーの僕らともなれば銀貨十六枚である。

 魚を買うには至らないにしても、ともかくいい稼ぎなのだ。


「そうですそうです!! いやーやっぱり次期領主サマは言うことが真っ当ですね!」


 彼女の言に、僕は結構驚いた。

 初めて会った時、そんな素振りはなかったし、次期領主の顔なんて知っている人はごく僅かだし。

 名前聞いたら判る人はいるけど……って、そういえば用紙に書いて提出してたか。


「……気づいてらしたんですか?」

「いちおうー、それなりに情報には通じてないとやってけませんし? 顔見た瞬間わかりましたよ。えっへっへ」


 食えない人だなぁ……それなら最初から言えば良いだろうに。

 多分、この分だとコロシアムに見にいけなかったから知らなかったって言うのも嘘だろう。


「…………わかった。いく」


 散々躊躇ったあとのメルルさんの首肯に、僕はホッと胸を撫で下ろした。


「はい! 二名様依頼ご案内ー!!」


 何処から取り出したのか。

 依頼嬢が小さい鐘をガランガランと鳴らしていた。

 メメルさんが手で抑えて耳を倒していた。

 煩かったのかな……。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



「さて、御二方依頼は初めてということですし、軽く説明から。

 まず、私こと受付嬢に掲示板から依頼の書かれた羊皮紙を取ってきて、私に渡します。私は依頼に適したランクだと確認すると、ギルド印のハンコをペタリ。これで受注は完了です。

 ギルドには貸し出し出来る道具が結構ありまして、テント……は今回、日帰り出来るので必要ないですか。夜には帰って来れるでしょう。周辺の地図、敵対生物の取得済み情報、最低限の保存食などはこちらで負担させて頂いております。すいません嘘つきました。ピンハネしてます。

 そして出発し、地図を頼りに依頼地点に行きます。依頼によっては一度、依頼主に話を聞いてからという場合もありますが、今回は洞窟行ってさくっと退治してくるだけですので必要ありません。

 無事標的を退治出来ましたら、証拠として一部位を切り取り持ち帰る。後に不正が発覚した場合報酬払い戻しの上憲兵のお世話ですからやめておいた方が賢明ですね。

 そして証拠を持ち帰り、私が予め依頼主から預かっていた報酬をお渡しします。どうですか、わかりましたか?」


 機関銃の如く説明を終えた受付嬢さんは、ぜぇぜぇと息を切らしていた。

 凄い、ちゃんと仕事してる。

 僕は少し驚いた。


 僕が頷くと、メメルさんは不思議そうに首を傾げていた。


「……えっと、わかりましたか?」

「?」


 再度確認する受付嬢さんに、メメルさんは再度首を逆に傾げた。

 ……あ、これわかってないやつだな。

 受付嬢さんがガックリと肩を落としていた。

 不憫だ…………。

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