第45話:実力
少し遅れました、申し訳ありません
少女が高らかと名乗りを上げ、辺りがざわつく。
「北の勇者?」「あの娘…何を言ってるのかしら「勇者様ならそこに…」「意味が分からないな…」
「ストロベリル様、勝手をされては…」
「話が違うぞ!我の条件は証印を授ける前に民の前で力を見せ、真の勇者がどちらか示す事!」
「それは…」
ジンと女勇者にお供の騎士達が割って入る。
「やはり怖いのか!」
「我等の勇者様こそ本物の勇者様!勇者が二人居るなど聞いた事も無い!」
「民に嘘を吐き、その嘘を暴かれるのを怖れたとしか!」
「嘘では無いと言うならば示してみせよ!無理だろうがな!」
煽る騎士達。手伝ってやろう。
「やるなら早くやれよー、嘘だったのかー?」
『ご主人様!?』
ジンが一瞬驚き、苦笑している。フレアは此方を睨み付けていた。
「騙されたのか?「でも領主さんだって認めて神父様も居るんだぜ?」「ギルドに騙されたんじゃ…」「ちっ、だから小娘なんかじゃ…」
疑心に駆られ不満を漏らす住民達。
「決闘には合意が必要だ!ジン殿!嘘を認めて断るか?それとも潔く負けて勇者を騙るのを止めるか?」
視線が集まりシンとした空気の中ジンの口が開く。
「受けるよ…嘘は言ってないし負けるつもりも無いけどね」
檀上から降りるジン、二人の勇者が対峙する。住民達は混乱しているのか静かだ。距離を離れ円形に両者を囲む。
「立会人は此処に集まる民の全員!負けた者が勇者を騙る下賎と言う事で宜しいか!」
「君は困らないのかい?」
「ふん、勇者が負ける事等ありえんからな!」
「分かったよ…その条件で構わない」
両者が剣を引き抜く。ストロベリルは盾を持っておらず直剣を両手で構えた。片手剣を両手で使うメリットは確かにあるが…玄人でも滅多に使わない。
「こうなってしまっては仕方ありません…立会人は集まった全員、領主様も居ますので何があっても敗者の言い分は通りません、お二人とも本当に宜しいですか?」
「当然だ!」
「はい、大丈夫です…」
困った様なジンに声を掛ける。
「手加減してやれよー!」
「貴様!何を言ってる!」
「我等の勇者様に手加減だと?寝惚けているのか?」
「ふん、勇者様の実力も分からん奴なのだろう」
「もう昼だと言うのに目覚めが悪いのだろうな」
実力が分からないのは誰だろう。女勇者か騎士の二人か。まぁどっちもか…。
「それでは…ラハブの勇者ジン様!北の勇者ストロベリル様の決闘…始め!」
フレアの開始の合図と共にストロベリルが駆け出す。
「ゼアアアアァァァァ!!!」
真っ直ぐ盾に剣を振り降ろす。ジンはそれを盾で防御。そこへ横薙ぎ、肩から腰へ斜めの斬撃へと繋げるストロベリル。
「基礎は出来るみたいだな?これならばどうだ!プロージョンソード!!」
体を一瞬輝かせ本来ならば両手剣WSである【爆熱を伴う剣】を片手剣で放つストロベリル。両手持ち唯一のメリットだ。
「フッ!!」
ジンの完全防御が成功、住民達から歓声が上がる。
「なあっ!ウェポンスキルを防いだのッ!?」
「君の剣は怖く無いからね、勇気を出してみたんだ」
「何を…?まぁ良い…だけどもう一度!!プロージョンソード!」
熱を帯びた剣が半月を描き地面に刺さる、轟音が響くがジンは無傷だ。
「成る程…確かにセイラ君の言ってたと通り…分かりやすいね…」
「何をぶつぶつと!逃げるだけか!」
駆け出し剣を振るストロベリル、それをカウンターで返しストロベリルへの剣に体を輝かせWSを放つジン。
「ハアアァァァ!!」
装飾を施された剣が弾かれ手から離れる。
「終わり、かな?」
「勝負有り!ラハブの勇者ジン様をこの決闘の勝者とする!」
フレアの口上で歓声が上がり決着となる。
「我等の勇者様が負けるなぞ…」
「貴様!下賎の者の癖に!」
「止めなさい二人とも!負けたのは私です…」
「しかし…」
「ですが…」
「無礼をお許し下さいジン殿…」
「大丈夫ですよ」
呆気ない幕切れとなる。
「ストロベリル様!何としてでも勝たなければ!」
「そうです!さぁ剣を!」
「貴方達…」
そこで口を挟む事にする。
「負けた者が偽物を騙る下賎!!実力も分からない奴なんだろう!だっけかー?よぉ、下賎共…」
此方を睨む騎士の二人。
「言ってたなぁ!」「偽物が!さっさと北へ帰れ!」「ラハブの勇者が真の勇者様だー!」「最初から信じてたぜ!」
「くっ…おのれ…」
「なんたる暴言…!」
「ジン殿、どうか真の勇者として世界を…」
「僕としては勇者が二人でも構わないんだけどね…」
「ストロベリル様!聞きましたか?!」
「こうなった以上首を縦に…」
「見苦しい真似は止めなさい…」
それ以上何も言わずに女勇者と騎士がその場を離れる。
「皆様!御覧頂けた用にジン様が真の勇者です!ご安心を!それでは領主のケン様と神父ネス様に続きを行ってもらい、式典を終了とします!」
ケンが首飾りをジンに掛け、ネスの祝福が行われ式典の終わりを告げる。
『終わったみたいだしギルドに行こうか』
『はいっ』
祭は続くようだがギルドへ向かう。中には冒険者の姿は見えずジンとフレアだけが居る。
「おつかれ、余裕だったろ?」
「うん、訓練の成果かな?」
「セイラさん!何故邪魔を!」
割り込むフレア。
「ああ言う奴等は負けを全員に認めさせるのが一番なんだよ、地下で闘って負けても後から絶対文句言って面倒になるぜ?礼を言われても文句を受ける筋合いは無いな」
「しかし…!」
ギルドの扉が開きレンゴが表れる。
「うーっす、勝てたなジン!!」
「うん、セイラ君のお陰だね」
フレアは言葉を繋げず此方を睨み付けるだけになる。
「しっかしよぉ、あの女えらく潔かったな!」
「うん…まぁ皆の前だったしね」
そこでジンに尋ねる。
「んで?式典も終わったし直ぐにでも世界を救いにって行動するのか?」
「うん!明日の朝にでも街を出て、先ずは王都に行くよ!」
「ふーん、まぁ見送りくらいはしてやるよ」
「ハハッ、ありがとう」
「いや、普通するだろう…」
「そいえばレンゴ、何処に居たんだ?」
「俺か?ガキ共連れて屋台回ってたぜ?セイラが野次飛ばしてたのも知ってる」
「あれはちょっと可笑しくなっちゃったな」
「なんで仲間に不利になるような事言うんだよ…」
「俺の国の教えだよ、勝てたんだから良いだろ…」
「無礼な国だな!」
『あの勇者様はどうするんですかね?』
『さぁ?関係無いし気にしなくて良いでしょ』
その後暫く話し、解散となる。ジンだけが残りフレアと話す様だ。外へ出ると陽が沈みかけていた。
「んじゃ俺は帰るぜ、明日はギルドから盛大な出発式らしいから此処で待ち合わせな!」
「ん、じゃ」
フレアが言ってた事だ。レンゴと別れまだ続く祭の屋台でいくつか食べ物を購入し宿へ戻る。
「おかえりなさいませ、お食事は直ぐにお持ちしますか?」
「ただいま、お願いします。あとこれお土産、暇な時間にでも食べてよ」
「まぁ!ありがとうございます」
リーラに祭での購入品を渡し部屋へ戻る。
「賑わってたねー」
『はい!楽しかったです!』
ニコニコなルインの頭を撫でていると食事が運ばれてくる。
赤いスープの鍋がメインでウィンナーや小魚と野菜の炒め物が付いてきた。銀貨を渡し食べ始める。
「いただきます!」
『いただきます!』
ルインにもしっかり定着した日本の儀式を済ませる。
「美味いな…赤いのに辛くない…」
『腸詰めは辛いですがオコメマイと合いますね!』
ウィンナーは最高だからな、何にでも合う。食事を終えて露天へ。
「んーやっぱお湯に浸かるのは良いよなー」
ヤトも一緒で湯に浮かび伸びきっている。
ガラリと戸が開きルインが入ってくる。当然体を密着させ一緒に浸かる。
『明日は少し早めに出てジンさんへの贈り物を選びたいのですが…』
「ルインは優しいね、良いよー」
その後二日溜まった欲望をルインが受け止めてくれた。
『美味しかったですご主人様!ありがとうございます!』
「こ、こちらこそ…」
何故こんなに元気良く言えるのか…本当は不味い筈なのに。
「明日は何買うか決めてるの?」
『ゼンジさんのお店で何かとは思ってるのですが…』
「オッケー、気になるのあったら視てあげるよ」
『お願いしますっ』
ベッドの中で話し、眠りに入る。
「おやすみルイン」
『おやすみなさいませご主人様』
二日ぶりに吐き出したお陰か直ぐに深い眠りが訪れる。
翌朝、ルインより早く目が覚め可愛い寝顔を眺めれた。直ぐにルインの金色の瞳も確認するので少し残念。
「おはようルイン」
『おはようございますご主人様』
食事を終え準備を整える。
白いノースリーブのヘソ出しのシャツの上から紺色の胸当てを重ね、黒いホットパンツの上から白いプリーツスカートを履き、太く赤いベルトで留める。銀色の腕護を嵌め、脚には鈍く青い輝きを放つ膝から爪先に掛けての脛当て。左腰には二対の剣と小さいポーチ。右腰には短い弓、腰の後ろには夢幻の矢筒、隠れる様にペンケース程のマジックボックスも装着しており中には奇跡の薬と大鎌。頭に銀色に耀く薔薇の髪飾りを付け、蒼いフード付き外套を羽織る。
「新しい装備も似合うね」
『ありがとうございます!!』
自分は茶色の七分丈の上下で宿を出てラゼバルトへ。
「おはようございますゼンジさん」
会釈するルイン。
「おはようございますセイラさん、ルインさん。今日はジンさんの出発式じゃ?」
「ルインが贈り物したいって言うんでね」
「そうでしたか…それでしたら奥からいくつか出しましょうか?」
頷くルイン。
「少しお待ちを」
そう言い、小さな箱を三つ持ってくる。
「防具なんかは新調されたばかりですからね、手首装飾、指輪、首飾りをお持ちしました」
中を見せてくれる。
・風の加護の装飾:防御力1 AGI+4 【風裂耐性・小】LV30~ALL 緑色の小さな魔石が埋め込まれた銀色の手首の装飾品。希少級。
・力の指輪:防御力1 STR+4 LV24~ALL 赤い魔石が光る指輪。希少級。
・反心の首飾り:防御力2 MND+8 【状態異常耐性・小】LV36~ALL 状態異常に強くなる首飾り。希少級。
暫く見てバングルを指すルイン。
「良いんじゃないかな?どうしてそれを?」
『首飾りは領主様が授けられてましたし指輪は剣や盾を持つのに邪魔かと…』
装備品なんで邪魔にはならないと思うが…。
「そっか、それじゃそれにしな」
『はいっ!』
ギルドカードで支払いを済ませるとゼンジさんがプレゼント用に綺麗な包装をしてくれる。
「ありがとうございました!又のお越しを!」
見送られ店を出る。
『このままギルドですか?』
『いや、人も多いだろうし正門で待ってよう』
そのまま商人ギルド街でもある大きな正門の所へ。バルバルのお乳を飲んで時間を潰しているとジンとレンゴがやって来た。
「おーい!セイラ!なんで来なかったんだよ!」
「セイラ君、ルインさんおはよう!」
装備をキッチリ整えてデカイ麻袋と花束を持ったジン。花束とか旅に必要無いだろ。
「おはよ、どうせ人多かったんでしょ?やだよ」
会釈するルイン。
「んでここで待ってたって訳か」
「そそ、ルインがジンに渡したい物があるって言うからさ」
「僕に?」
可愛らしい笑顔でバングルを渡すルイン。ジンがそれを開けて早速装備する。
「ありがとうルインさん!大切にするね!」
お辞儀するルインに礼を告げるジン。
「セイラはなんかやらねーのか?俺は旅に使えそうなナイフとか細々したのをやったぜ、旅なんてしたこと無いだろうからな」
チンピラ風なくせして母ちゃんみたいな用意のレンゴ。
「ジン、俺からは何もあげる物は無い」
「十分貰ってるのに何言ってるのさ」
「そうか?まぁひとつだけ言葉を贈るよ」
「ん?何だい?」
「お前がもし、この先どうしても倒せないお前より強い敵に会った時に思い出せ」
「うん」
「【勇気を剣に】」
「ブレイブインブレイド…」
「ギリギリ勝てる相手とかじゃ意味無いからな?それにお前のレベルが低くても意味無いけど」
「分かった、覚えておくよ。それにちゃんとレベルも上げるよ」
「ん、じゃあ…まぁアレだ」
「ん?」
「困ったら連絡でも寄越せよ、アレだからな」
「何照れてんだよセイラ、友達だからだろ!」
「あぁ!そうだね、友達だからね!」
「いや、仲間…まぁそれで良いか。じゃあ頑張れよ」
お辞儀するルイン。
「うん…!それじゃ…あ!セイラ君に僕もひとつだけ言葉送って良いかな?」
「ん?何だよ」
「ごめんね!友達だから許して!」
そう言うと手を振りながら足早にその場を離れた。
「ジンー!魔王を倒せよー!!」
笑顔で手を振るレンゴ。
「何だったんだ?最後のごめん……っておいレンゴ何泣いてんだよ!」
さっきの笑顔はどこへやら鼻水まで垂らして泣いている。
「だってよ…うぅっ…寂しいじゃねーか…ううぅっ!心配だってするしよっ!」
母ちゃんか!
「別に今生の別れじゃねーだろ…つか最後の何だったんだよ、聞いてねーか?」
「ぐすっ、ぐすっ…いや?うっ、何も…」
そこで門の反対、広場への方向からガチャガチャと音が近付いてくる。後ろを振り返ると見覚えのある姿が。直ぐ近くまで来てソイツが声を張り上げる。
「我はストロベリル・ラズ・ブルーレリー!!真の勇者では無かった者だ!!貴方がセイラ殿か!!ジン殿から話は聞いた!!我にも是非ご教授願いたい!!」
ピンクの髪を靡かせ豪華絢爛な女勇者が高らかに名乗りを上げ頭を下げた。
あのクソ勇者!今度会ったらぶん殴る!!
昨日のとこの話を繋げる予定だったんですが間に合わず分ける形となりました…




