第44話:式典
更新遅れて申し訳ありません
『おはようございますご主人様』
「おはようルイン」
何時もの様に心地良い朝を迎え準備を整える。
今日はリーラが朝食を運んで来た。
何気無い会話を交わし、早速ギルドへ出発する。
『今日は弁当要らないか…多分ダンジョン行かないだろうし』
『今日はどこかで食べるんですか?』
『その時に決めようか、ルインも食べたい物あったら言ってね』
『おっけーです!』
困ったらジンかレンゴーに聞けば良いだろう。
ギルドへ着き、中へ入ると二人は先に来ていた様だ。
「おはよ、待った?」
ルインが会釈をする。
「おはようセイラ君、ルインさん」
「うーっす、全然待ってないぜ」
「んじゃ早速、お楽しみの時間…からか?」
『ですね!』
「何で疑問なんだよ、当然だろ!」
「僕は後からでも構わないよ」
四人で賑やかに受付へ。
「おはようリリーナさん、例の件大丈夫?」
「皆さんおはようございますぅ、例の件…極秘に完了しておりますんでぇ直ぐに用意しますねぇ」
ノリノリである。
「例の件って?」
「ん?普通に査定だけど?」
リリーナが奥から麻袋を4つ音を立て置く。
「内容をご説明しますねぇ、ファイアラットの皮が全部で222個、ひとつ2万7000ネルで合計599万4000ネル、バーンドッグの爪が合計160個、ひとつ4000ネルで合計64万ネル、取得品の火の魔石がひとつ4000ネルで133個、合計53万2000ネル、全部合わせて716万6000ネル、お一人様179万1500ネルになりますぅ」
「ありがと」
ルインは頭を下げギルドカードを渡している、ジンとレンゴもギルドに預ける様だ。自分はイベントリへ。
「じゃ、ゼンジさん所行こうかー」
『はいっ!装備は自分で買わせてもらいますので!』
『オッケー、まぁ愛着も持てるしね』
「それにしても…本当この数日で一気にお金持ちだよね…」
「あぁ!家も修復工事出来るくらい貯まったからな!本当助かるぜ!」
「皆頑張ったからでしょ?ほら、行くよ」
相変わらず訴える様な目で見てくるノリの良いお姉さんは無視してギルドを出る。
「そういえばジン、訓練がどうとか言ってなかった?」
「うん、決闘なんて初めてだから何か助言があればと思って」
「ふーん、実戦訓練で良い?」
「うん、お手柔らかにお願いするね?」
『私もお願いします!』
「俺も一緒に良いか?」
「あいよー」
腕の組み合った看板の店、ゼンジの経営するラゼバルトへ着く。中へ入るとゼンジが鎧を磨いていた。
「おはようゼンジさん」
会釈するルイン。
「ゼンジさん、お邪魔します」
「おーっす」
「おはようございます皆さん、いらっしゃいませ。今日はどうされましたか?」
手を止めて立ち上がったゼンジが不思議そうな顔をする。
「ルインとジンの装備を替えに来ました」
「ええっ!?ルインさんはともかくジンさんもですか?」
「はい、ジンは赤熱銀装備一式を、ルインは店内見てから決めますね」
「赤熱銀一式ですか…確かに…昨日の今日でこんなに…分かりました、ご用意致します」
「お願いします、ルイン適当に見てみようか」
『おっけーです!』
「俺達も適当に見るか」
「だね、ここの店の装備は格好良いしね!」
ゼンジが用意する間に物色。
『おっ!ルインこれなんかどうかな?』
『わぁ…何だか良さそうな装備ですね…』
ルインが目を輝かせる先には深い紺色の胸当て。
・雨宿りの胸当:防御力34 AGI+6 LV31~三大連踊謳 LV1~駆天束舞言 一生を巨大な樹の葉の裏で過ごす硬く軽い甲虫の素材を用いられた胸当て。希少級。
『後は…これと…』
・戦乙女の腰蓑:防御力21 STR+4 LV32~三踊連 LV1~駆舞束 神界の女戦士が使用されたとされる装備を模倣した物。希少級。
こちらは真っ白な膝上のプリーツスカートだが下にはホットパンツも装備するので安心して履かせられる。
『これと、これかな』
・突風の腕護:防御力12 AGI+10 LV30~ALL二次職 LV1~ALL三次職 銀で出来た二の腕部分に装着する防具。防御力は低いが俊敏性が上昇する。希少級。
・青剛蟹の脛当防御力29 VIT+5 LV32~三二剣 LV1~駆無達 青銅色に輝く蟹の魔物の甲羅で作られた膝から爪先まで覆う脛当て。希少級。
『ありがとうございます!どれも素晴らしそうな物ばかりです!』
選んでいる間にジンは支払いを済ませ装備を受け取っている。
装備はゼンジさんのところへ持っていく。
『あの…自分で…』
ルインにそう言われたが紳士として重いものは持たせられない。
「どれもルインさんに調度良い装備を選ばれましたね…セイラさんが選んだのですか?」
「まぁ半分自分の趣味もありますけどね」
「大切な事ですからね、どれもルインさんに似合うと思いますよ」
話の分かる職人だ。全部で36万ネル、破格の安さだ。
「そうだ!少しお待ちを!」
支払いを終えて礼を伝え帰ろうとするとゼンジが声を張る。奥から小さな箱を取り出し中を見せてくれる。
「良かったらこちらをルインさんに如何ですか?頭には何も防具をしていない様なので…もしかすると戦闘中はしてるのかもしれませんが…」
そう言った物は美しく銀色に輝く、薔薇をモチーフにした小さな髪飾りだった。
エルファバの髪飾り:防御力1 INT+15 LV~1ALL 女性用の美しい髪飾り。秘宝級。
「実は私の作った物では無く、市に出ていた物を良い品だと購入したのですが贈る相手もおらず…魔力を感じるので何も無いよりか効果はあるかと…」
「買います!いくらですか?」
「いえ、代金は結構ですよ。良いお客様を連れて来て頂いたお礼です、高価だった訳でもないのでお礼がこの程度で申し訳無いですが…」
「とんでもないです!有難くルインに使ってもらいます!」
「喜んで頂けたなら何よりです、今後ともご贔屓に」
兜や鉢金なんかの頭防具はダサ過ぎてルインに装備させてないので調度良かった、性能も充分。
「じゃあまた来ます」
お辞儀をするルイン。
「ありがとうございましたゼンジさん!」
「俺は暫く防具替える必要ないらしいからなー…」
「ありがとうございましたー!」
ラゼバルトを出てギルドへ向かう。
「ジンはとりあえず装備預けて来なよ、今日は武器と盾だけあれば良いからさ」
「鎧を着なくて大丈夫なのかい?」
「危ないことはしないから大丈夫だよ、3人とも…ルインは一応万全な装備だけど服のままで良いよ」
『おっけーです』
「分かったよ」
「おう、分かった」
ギルドへ着き、ジンが二階に装備を預けに行く間にリリーナさんに尋ねる。
「リリーナさん、ここって地下室とかあったりする?」
ラフィンの初心者向けの地下修練場みたいな感じのがここにもあれば調度良い。
「はいーありますよぉ、災害時なんかに避難を受け入れるとっても広くて頑丈な地下広場がぁ」
「ちょっと使わせてもらっても良い?」
「んー?構いませんけどぉ、何に使うんですかぁ?」
「特訓かな?」
「良く分かりませんけどぉ、ご案内しますねぇ」
ジンが戻って来たので受付の中へ入らされ、奥へ連れて行かれる。所謂バックヤードで様々な物が置かれている。地下へと続く階段は床にあり、重そうな金属の扉をリリーナがスライドし説明をしてくれる。
「階段を降りて通路を進むと広い空間にでますぅ、明かりは天井に埋められた魔石が反応して勝手に点きますのでぇ」
「ありがとう、んじゃ行こうか」
階段を降り 、少し歩くと広場へ出る。ギルドの建物自体より広い。
「んじゃ早速…って言いたいけど、対人やった事無いって言ってたし先ずは質問していい?3人とも考えてね」
『おっけーです!』
「うん、大丈夫だよ」
「おう、良いぜ」
先ずは考え方から教えてそっから実戦訓練だ。
「んじゃ簡潔に、対人だけじゃなくて…まぁ戦闘で大切な事って何だと思う?」
少し考えてレンゴが口を開く。
「攻撃…だろ?どれだけ威力の高い攻撃を出来るかだ」
「正解、でもその答えじゃ30点」
続いてルイン。
『臨機応変に戦う事…です』
「それも正解、あっルインは臨機応変に戦う事って答えね。これも30点くらいかな」
最後にジン。
「攻撃を食らわない事、かな?」
「正解、まぁネタバラしすると戦闘で大切じゃない事なんて無いんだけど…まぁ50点かな?」
「んじゃ100点の答えってなんだ?」
「俺の考えじゃ`自分に出来る事だけをやる`ってのが答えかな」
「出来ない事もあるよね」
「当然ね、でも出来る事を増やせば解決策も出てくる。選択肢を増やす事が出来る」
全員真剣に聞いてくれている。
「俺が教えれるのはその選択肢を増やす事と対人の基本的な事だな」
そこまで話をして広場の中心へ。
「先ずは攻撃の基本。ジン、盾を構えて」
「分かった」
左手に握った盾を構え向き合う。
「軽くても良いから早い攻撃を打っていく。ジン、気にせずに反撃して良いから」
弱攻撃、弱攻撃、弱攻撃と打つと少しだけジンが後退する。それに合わせて距離を縮め再び弱弱弱の連打。
「どう?」
「何も出来ない…距離を離された時に動こうと思ったけど直ぐに近づかれてまた攻撃が来るし…」
「うん、ジンが後退してる時こっちはその時間が無いからね」
「でもよセイラ、それじゃ勝負が続くだけじゃねーか?
「続けてみようか?ジン、もう一回」
再々度、弱攻撃の連打。続けるとジンの盾が弾かれる。それに合わせて額に軽く拳を置く。
防御破壊。゛闘争者達の宴゛内じゃ防御値が設定されていて一定時間、通常ガードばかりしていると防御を崩され攻撃を受けるシステムだ。
「手が痺れて力が入らなくなったよ」
「ね?見た通りな事になるんだよ」
「じゃあ攻撃さえ先に当てたら防御されようが勝てるって事か?」
「そんなに理不尽じゃ無いよ、ルインは知ってるけど二人にこれから話す事はかなり重要な事だからちゃんと覚えてね」
頷くジンとレンゴ。
「ジン、次も三回攻撃するから攻撃が当たる瞬間に盾で防いでみて。合図するから分かるはず」
「分かった、意識してみるよ」
「せーの…1、2、3!」
言われた通りに攻撃の重なる瞬間、盾を構えガードすると盾が一瞬一瞬淡く光って見える。三回目の攻撃を防ぐと今度は距離が離れない。
完全防御。ジャストガード、パーフェクトガードと呼称されるゲーム内のシステムでガード時の後退を消す。又、WS等の強力な攻撃は防御の上からHPを減少させるがそれを盾持ちであれば100%、武器で防御体制をとる職でも90%軽減する。
「今度は距離が離れなかった…」
「何でだ?」
「そう言う技術だよ、としか言えないかな」
「他にも出来る事を増やせるのかい?」
「勿論、それも今から教えるよ。次は反撃の仕方だ」
次のステップへ。
「また合図するから二回目の攻撃迄はジャス…直前の防御、三回目の攻撃は後ろか横に避けるかその場で回避、俺を弾く様にしてみて」
「大丈夫なのかい?」
「大丈夫だから、危険は無いって言ったでしょ」
合図をし、言われた通りに完全防御から上半身のみで拳を避け、斬り上げる形の剣の軌跡だけが見え、距離が離れる。
反撃行動。回避成功後、直ぐに攻撃をする事で一定の距離を離すシステム。威力は無いに等しいが若干の有利を得て相手より僅かだけ先に行動が出来る。
「俺は防御もしてないけど傷とか無いでしょ?その技は成功したら少しだけど成功した方が先に動けるんだ」
「今のは…確かに斬った感じはしなかった…なんだろ、セイラ君を押し返したって感覚かな…」
困惑気味のジン、だが自分でも仕組みまでは分からないので適当に言っておく。
「これ自体は攻撃って言うより攻めに転じやすくなるとか体制を立て直しやすくする技だからね」
「成る程…」
「俺なんかはどうなるんだ?」
「弓でも出来るよ?まぁ近付かれた時点で駄目だけど」
そこからはひたすら全員で練習、ジャスガは大丈夫だがカウンターはもしかしたらが怖いので自分だけが練習台になる。
「どう?」
「だいぶ慣れて来たよ」
「俺は防御が厳しいな…弓じゃどうしても受けにくい」
『私は普段の戦闘からも意識してるので…防御より避ける事の方が多いですが…』
『ルインはその戦い方で大丈夫だよ、盾も無いしね』
知ってるだけでも有利になる事なんだから。
一度食事休憩を挟む事にした。ギルドのある通りに使い魔OKの食事処があるとの事、ルインも希望は無い様なのそこに決める。
食事は冒険者向けのガッツリとした何種類もの肉を炒め、甘めのタレで味付けした料理と蒸かした芋が出てきて美味しくいただいた。
「んじゃ戻ったら続きをしようか、少し本格的に」
「お願いするよ」
ギルドへと戻り地下を引き続き使わせてもらう。
「手加減はするけど俺の言ってた事を理解してもらう為に今から本気で攻めるからジンも本気でかかってきてね」
「本気…分かった!宜しくね!」
銀貨1枚を出す。
「ルインとレンゴも見ながら俺とどう闘うか考えてね」
『おっけーです!』
「おう!」
「それじゃ…銀貨が落ちたら合図だ」
「うん!」
親指で銀貨を弾く。床に落ちると同時に駆け寄り弱弱弱、それを全て完全防御し肩から腰への斜めの斬撃をするジン。それを回避しカウンター、左、左と速い攻撃を刻みジャスガで対応するジンに少し遅らせて中攻撃を打つ。防御こそ出来たがジャスガには為らず少し距離の離れたジンに再び駆け寄り今度は強攻撃。辛うじて防御をするがガードが崩れ大きな隙の出来たジンの足を払い、倒れた所へ顔面への拳を寸止め。
「前より出来る事は増えたよね?でもそれにばかり固執しないように。臨機応変にだよ」
「選択肢が増えただけで使いこなせる訳じゃ無いって事だね…セイラ君、参ったよ」
倒れたままのジンを引き起こす。
「対人だと相手にだって選択肢は沢山あるんだ、俺がジンの攻撃を返した後の三回目の攻撃を直前に防御しようとしたのは正しい判断、俺が速い攻撃してたら成功してたよ思うよ」
「相手にも選択肢は沢山ある…」
「そう言う事、まぁ読み合いになるからこればっかりは仕方無いけどね」
そこが一番面白いのだ。
「拘らずに普通の防御で様子見でも良いんだ。攻撃に当たらない事も大事な事だからね」
「セイラ君の考えって言うのが少しだけ理解出来た気がするよ」
「今はそれで良いよ、後は経験を積む事で分かるから」
「自分に出来る事だけをする…出来る事を知るのが大切なんだね」
納得してもらったみたいだ。
「んじゃ、3人で掛かっておいで」
『えっ!?』
「いくら何でもそれは…」
「嘗めてる…って訳か?」
「いや?良いからおいで」
3人が顔を見合せ目で合図する。
『行きます!』
「遠慮無く!」
「怪我すんなよ?」
そこで初めて殺気を全開にして向ける。
たじろぐ三人を煽る。
「なにビビってんだ?加減はしてやる…本気で来い」
躊躇したのは一瞬。及第点はやれるだろう。
「ハアアアアァ!!」
先ずはジンが走り出し飛び込んで来ながらの縦斬り、それを強攻撃で弾く。
「えっ!?」
「あー教えて無かったな、相殺って技術だよっ」
拳と剣の間を縫って長い矢が飛んでくる。横へと回避した先でジンからの横薙ぎ。今度はカウンターで距離を離す、直後ルインがジンを飛び越えながら大鎌に依る急襲。
「遅い!」
ジャスガで受け、足を払いお姫さま抱っこの形に受け止める。
『あ、あの…』
「おいおい!ちょっと…」
レンゴの方へと思いっきり投げ飛ばし飛んでくる矢を三度相殺。
「本気で…だったね!ファストブレイドオォォ!!」
極回避。TP消費40。完全な瞬間での回避行動。攻撃側は2秒間無防備な状態になる。発動中、与ダメージ30%増。
「えっ…」
「様子見も大事だぜ?」
無防備なアゴへとWSを打つ。
意識殺し:威力の無い気絶効果の付いたWS。TP消費140。
その場で崩れ落ちるジンを支え寝かせる。
「ま、こんなもんでしょ。二人とも怪我は無い?」
『大丈夫です…』
「あぁ…」
「疲れた?二人とも元気無いね」
『凄く疲れては居るんですが…』
「疲れたけどよ、それ以上に一回も攻撃が当たらなかったほうだな…」
気落ちする二人を宥めジンが起きるのを待つ。
「あれ?どうして僕は倒れているんだい?」
「セイラにやられたんだよ、大丈夫か?」
「平気だよ、そうか…やっぱりセイラ君は凄いんだね」
「経験の差って事だよ」
「ありがとう、勉強になったよ」
立ちあがり頭を下げるジン。
「動きは悪くなかったぜ?後は読みと勘、それに加えて冒険する勇気があれば完璧かな」
「勇気…」
「出来る事だけをする…でも失敗を恐れずに挑戦するのも大切って事だよ」
「分かったよ」
その後少し休憩をとり一階へと戻る。
「今日覚えた事を忘れないようにね」
「うん」
「おう!」
『ルインはこれからも意識して戦闘をするように』
『おっけーです!』
リリーナに礼を伝える。
「仕事なんでお礼は要らないですよぉ、帰る前にフレアさんの所だけ行ってあげて下さぁい」
「皆で乗り込むかー」
「迷惑じゃないかな?」
「明日の事だろ?セイラとルインちゃんも式典は行くよな?一緒の方が時間も分かるだろ」
「気にはなるしな」
『お祭りですねっ』
全員で4階へ上がる。ジンが扉をノックし返事を確認、中へ入る。
「失礼します」
「ジンさん…それに皆さんも来たんですね」
席へと着き、フレアが明日の事を話だす。
「明日はお昼に中央広場にて発表となります。ジンさんは朝からギルドへお越しください」
「分かりました」
「決闘の件ですが正式な発表が終わった後にギルド地下にて行っていただきます」
「そうなんですか?」
「えぇ…」
「あの女勇者が納得するかねー」
「セイラさん…それはこちらで何とかします…」
「どうせジンが負けた時の事とか考えてんだろ?」
「そうなのか!?」
声を上げるレンゴ。
「自信があるわけじゃ無いし…そう思われても仕方無いかな」
「お気を悪くなさらないで下さい…」
「平気ですよ、頑張りますね」
特に話がある訳でも無く時間の事くらいだったようで直ぐに終わり部屋を出る。
「んじゃ今日は解散で」
「うん、今日はありがとう」
「セイラ、礼を言うぜ」
「ん、気にすんな」
ギルドで別れ宿へ帰る。
「おかえりなさいませ、何かお部屋へお持ちしますか?」
「ただいま、じゃあ冷たい飲み物と甘い物があればお願いします」
「かしこまりました、直ぐにお持ちしますね」
部屋へと戻りルインに先に体を洗うよう促す。待っている間にリーラさんが青い飲み物と緑色の生クリームがたっぷり乗った皿を3枚とクッキーを持ってきてくれる。お礼をし銀貨を渡す。
『お先にいただきました』
「ん、じゃあ俺もシャワー浴びて来るから…ヤト!」
「ピイ!」
「ルイン、ヤトと先に食べてて。俺のは要らないから」
『良いんですか?』
部屋に戻ってきた時から目の輝きが違うルイン。
「今日は頑張ってたからね」
『ありがとうございます!』
少しぬるいお湯を浴び汚れ物を外へ持って行き部屋へ戻る。
『美味しかったです!』
「ピィーーーー!」
「そう、良かった良かった」
ルインの頭を撫でゆっくり時間を過ごす。少しすると夕食が運ばれて来る。野菜中心だったが十分満足出来た。食事を終えて。
「今日はごめんね、最初怖かった?
『はい、フレアさんの何倍も怖かったです…』
「もしこれから先、怖いと感じる相手に出会ったら無理して戦わないようにね」
『おっけーですっ』
そのまま少し会話を楽しみ少し早いがベッドへ。
「今日は早めに寝ようか」
『はい』
殺気が相等効いたのか既にウトウトとしているルイン。
「おやすみルイン」
『おやすみなさいませご主人様…』
直ぐに可愛らしい寝息を立てるルインの頭を撫で、目蓋を閉じる。
ドン!ドン!ドン!
翌朝、轟音に依って起こされる。
「何だ今の音!」
『おはようございますご主人様、お祭りの合図だと思いますが…』
「おぉ…おはようルイン、こんな朝から始まるのか…」
『見に行きますか?』
「そうだね、式典あるまで暇だし行こうか」
朝食を終えて準備する。いつもの上下では無く白いリネンシャツ、黒いズボン、黒の薄い生地で出来たジャケットタイプの上着。ルインは白のボタンシャツ、赤と黒のチェック柄のスカート。恥ずかしく無い格好で宿を出る。
「お二人ともお似合いですね」
リーラさんのお墨付きなのでおかしくは無い筈だ。
『人多いな…』
『はい、凄いですね…』
中央広場へ着く前から人だらけ。
『ルイン、はぐれないようにね』
『大丈夫で…す!?』
憧れの恋人繋ぎで手を捕る。
『行こうか』
『は、はい!』
恥ずかしさのあまりルインの方を見れずに足早に進む。中央へ着き、人の多さに少しぐったりしながら出店や屋台を回り祭を満喫する。
『楽しいですね!』
満面の笑顔のルイン。
『うん、俺も楽しい』
ルインと居ると自分でも顔が緩んでいるのが分かる。少し離れた所で休憩した後も祭を楽しむ。すると朝聞いた轟音がまた聞こえてくる。それに合わせて人々が視線を一点に。広場中心、街のシンボルの前に設置されていた立派なステージにフレアの姿。右手に何か持っていてそれに声を出すと広場全体に広がる音量で話が聞けた。拡声器の様な感じか。
「皆さん!本日はお集まりいただきありがとうございます!本日のこの騒ぎ、皆さんご存知かと思われますが…ラハブの街から勇者様が誕生した事を正式な発表とさせていただきます!!」
「「「「おおおおおおぉぉぉぉ!!!」」」」
拍手、歓声、怒号、街が揺れるかと思うほどの様々な感情。
「それでは…勇者ジン様!こちらへ!」
空気が震える程の拍手ともに、新調したての赤熱銀装備に真っ赤なマントを翻し檀上へジンが登場する。
「僕がラハブの街の勇者ジン!魔王を倒し!世界の平和を皆さんに約束する事を此処で誓います!!」
再び震える空気。
「短いですが発表は終了となります!それではラハブの領主であるケン様には証印を、教会から神父のネス様に祝福を授けていただき式典を終了とします!」
檀上に茶髪の爽やかそうな好青年、かなり若く見える男性と世話になった教会の見覚えある神父が表れる。
「ラハブ域領主、ケン・クロスが証明する!ここラハブから新たなる勇者が誕生した事を!そして授けよう!勇者の証印を!」
拡声器からハキハキとした声が聞こえる。一文字違うだけで上半身が人で下半身が馬の怪物なんてどうでも良いことを思いながら見守っていると、金色に輝く八角形のトップが付いたネックレスを掲げる。それを広げるとジンが首を差し出す。すると
「ちょっと待ったあぁーーーーー!!」
人々の視線がピンク色の髪に豪華な鎧と綺麗な装飾の施された剣を携えた一人の少女に向けられる。
「我が名はストロベリル・ラズ・ブルーレリー!!北の勇者にしてこの場でラハブの勇者ジン殿を真の勇者として否定し決闘を申し込む者である!!」
さてと、やっと引き返せない状況になった。
本当はもう少し長くなる予定でしたが、あまりにも話が伸びそうなので一度区切りました。




