第30話:ラハブ
高い外壁に木造の閉ざされた大きな門。
衛兵が2名と門の近く外壁に添う様に建てられた小屋を確認。
「こんにちは、ラフィンから来た冒険者なんですが中に入れて貰えますか?」
背の高い男性が答える。
「ラフィンから…長旅だったんじゃ無いか?」
「五日で着きました」
「お疲れさん、この街には何の用件で?」
「名を上げようと思って」
「おっ、ヤル気のある奴は大歓迎だ!一応確認だ、冒険者ならギルドカードを見せてくれ…つっても兄ちゃん、そんな格好で冒険者なのか?」
「一応…」
自分とルイン分、2枚のギルドカードを渡す。
「セイラ・アズミと奴隷のルイン…二人ともランクCか!よし、門を開けるから入って良いぞ!」
「ありがとうございます」
ルインも頭を下げる。
「街へ入って真っ直ぐ行けば中央に広場がある、7つの別れ道があるがそのまま進めばデカイ建物が見える、そこがこの街のギルドだ」
開いた門から覗くのは美しい街並み。
整備された石畳の地面、どの建物も赤い屋根の色をしている。
出店や屋台も沢山あり、人々は行き交い賑わっている。
「ここの東門はなんでも揃う、色々見るのも面白いと思うぜ?」
「綺麗な街だ…」
「気に入ったか?俺もこの街は好きだ!名を上げるんだろ?頑張れよ兄ちゃん!」
快活に笑う衛兵に会釈し街へ入る。
『ルイン、先にお昼にしようか』
『はいっ!美味しい食べ物があると良いですね!』
『ルインは食べるのが好きだからなー』
俯き加減で少し恥ずかしそうなルインを連れて屋台を物色する。
山積みになったクロワッサンの様なパンを買い、串焼きを売る店へ行く。
「こんにちはー、これなんの肉ですか?」
「いらっしゃい!これはドンタンの肉だよ」
「じゃあ…30本下さい」
「二人でそんなに食うのか?」
「いえ、使い魔も居るので…ヤト!」
「ピイィーーー!」
「うおっ!空飛ぶ蛇か?珍しい使い魔だな、そっちの蛇の分は皿に入れてやるよそこのベンチ使いな!」
「ありがとうございます、20本分はお皿にお願いします」
少しすると山盛りの肉と10本の串焼きが運ばれて来る。お代を渡し食べ始める。
「いただきます」
甘辛いタレで味付けされた焼き鳥に近い味がした。
「うまっ!」
昼食を終えギルドを目指す。
街はかなり広く、ギルドまでだいぶ歩いた。
ラフィンのギルドより3倍程の巨大な建物に着く。
中に入ると視線が刺さる。六つ受付があり一番人の少ない受付へ並ぶ。
「次の方どうぞぉ」
おっとりとした顔立ち、緑の髪、巨乳を携えた女性の受付だ。
「ラフィンから来たばかりの冒険者、セイラ・アズミと申します。彼女はルイン、奴隷ですが冒険者登録しています」
「可愛らしい冒険者さんですねぇ、お話は受けております。フレアさんの所へご案内しますねぇ」
奥の階段からギルド4階へ案内される。
何個か扉がある内の一番奥の部屋を受付嬢がノックする。
「どうぞ」
女性の声が聞こえる。
受付嬢は仕事に戻るようでルインと二人で中へ。
「失礼します」
中へ入ると茶色の髪をポニーテールにした20代半ばの綺麗な女性がソファーで待っていた。
「ようこそ当ギルドへ、どうぞお掛けになって下さい」
促され対面のソファーへ。
「シガさんからお話は伺ってます、何でも欲しい二つ名があるとか…」
「欲しいと言うか…まぁ名乗るならって事で」
「そうですか…しかし難しいですね、現在西の最強は依頼で長旅に出ています」
「まぁ焦っては無いんで大丈夫ですよ」
「本当に目指してるんですか?当ギルドで実力を認められるのが一つ、そして西の最強に勝つのが条件なんですよ?因みにここ30年、西の最強は変わっていません」
「へぇ…そりゃ挑戦が楽しみだ」
「まぁ良でしょう…紹介が遅れました、私はフレア。ここラハブの街の冒険者組合長です。実力のある冒険者は歓迎しますよ」
「セイラ・アズミとルインだ、実力は…まぁ追々示すよ」
ルインが頭を下げる。
「そちらの女性は無口な方なんですね」
「訳あって話せないんです、問題ありますか?」
「これは失礼を…実力さえあれば大丈夫ですよ。まぁそちらの方は心配無さそうですが…」
チラっとこっちを見る。言いたい事は分かるが…。
「とりあえずゆっくりと示していきますよ」
「はい、宜しくお願いしますね」
握手を交わしギルドを出る。
ギルド内も賑わっており、冒険者達の装備も整っている。
『中々期待出来そうな街だな』
『そうですか?ご主人様の力が分からないなんて節穴だと思いますけど…』
『ハハッ、まぁしょうがないよ』
ギルドの外を散策していると人だかりが出来ている。
面白そうな事をしているみたいだ。
「次の挑戦者は誰だー?参加費は金貨1枚、5分間の内に俺に1発でも当てれば金貨5枚をやるぜー?」
殴られ屋か…少し野次馬になり眺める。何人か挑戦するが全て避けていた。
『ルイン、やってみるか?』
『えっ、私ですか?』
『うん、面白いと思うよ?あっちは手を出さないみたいだし』
『えーっと…ご主人様がそう言うなら挑戦してみます』
『オッケー…じゃなかった了解』
手を上げ殴られ屋の近くへ。
「おっ、見ない顔だな。兄ちゃんやるのかい?」
「いや、やるのは彼女だ」
「本気か?あぁ、武器はこっちの用意した木製の物から選んでくれ」
金貨を渡しルインに武器を選んで貰う。
木のナイフを2本だ。
一旦ルインの装備は預かる。
イベントリに入れたので少し野次馬達がざわつく。
「んじゃ嬢ちゃん、俺は避けるだけ、こっちの怪我は気にしなくて良い」
頷き対峙するルイン。
「んじゃ…この魔道具が鳴ったら5分経過だ…それじゃあ…始め!」
合図と共にルインが踏み込む。袈裟斬りからの横薙ぎ、更に一瞬輝きWSを放つ。
男が上半身の動きだけで避けバックステップで距離を取る。
「良い動きだな嬢ちゃん」
更に踏み込みナイフをクロスさせてからのWS、そして横薙ぎの蹴りを放つ。男が蹴りの軌道に併せ回避。
何度もルインが攻めるが魔道具が鳴り終了を告げた。
「ハッハッハ、毎度あり!」
汗だくになったルインから謝罪される。
『すみません、ダメでした…』
落ち込むルイン
『良い経験になっただろ?避ける事だけに専念する相手を捕まえるのは難しいんだ』
『はい…』
『でもルインの動きも悪くなかったよ、蹴りを出したのは驚いた』
『はい…ありがとうございます』
「お兄さん、俺も挑戦して良い?」
「おっ、良いぞ!嬢ちゃんの前で格好悪いとこ見せたいんならな!」
野次馬達から笑いがこぼれる。
「んじゃ金貨1枚」
「よっし、んじゃさっきと一緒だ、武器は…選んだみたいだな」
先程ルインが使っていたナイフをそのまま選ぶ。
『ご主人様?』
『まぁ見てな、格好悪いとこは見せないからさ』
「準備は良いか?んじゃあ始めるぞ!」
合図と共に男に目掛けて右手からナイフを飛ばす。少しずらして足元にもナイフを飛ばす。
「なっ?!」
横へ避けた男の向かう先に併せて一気に踏み込む。
男の右頬に拳を軽く当てる。
「くっ…やるな兄ちゃん」
「毎度ありっ」
少し歓声が上がる。勝者が味わえる特別なモノだ。
「ほらよ、受け取りな」
「どうも」
『ご主人様!』
笑顔で駆け寄るルインの頭を撫でると先程の歓声はどこへやら、ブーイングの嵐となった。
「ところで宿屋街ってどこにあります?」
「ん?なんだい兄ちゃん他所から来たのか?道理で見ない顔だ」
それだったらと中央広場に戻り7つの別れ道を真っ直ぐ左と教えられた。礼を述べその場を離れる。
『金はあるし…良い宿屋にするか!』
『私はどんな所でも大丈夫ですよ?』
『風呂も毎日入りたいしな…ご飯は作っても良いけど…まぁとりあえず時間もあるし良いとこ探そう』
『はいっ』
教えられた通り進むと少し街並みが変わり大きな建物が目立つ様になる。途中出店で甘酸っぱい飲み物を購入して宿を物色。
歩き回るだけでも結構な時間が潰れた。
「デカイ街だけあって宿の数も凄いな」
『はい、どこも冒険者で一杯ですしねー』
一泊がそこそこの値段の宿も空き室は無かった。
すると一軒、回りよりも大きな旅館の様な佇まいの建物が目に止まる。
「和風…?」
『珍しい建物ですね…』
ルインも首を傾げる。
興味心に負け中へ入る。
「いらっしゃいませ」
中へ入ると高級そうな旅館そのものだった。そんなとこは泊まった事が無いので知識としてでしか無いが。
「お二人ですか?」
そう聞いてきたのは建物に似合わない、中世ヨーロッパ風のドレスの女性、派手では無いが雰囲気に合わない。
「はい、空いてますか?」
「すぐにご用意できますよ、料金は朝夕食事付き、一人部屋なら一泊3万ネル、二人部屋ですと5万ネルとなります」
「お風呂とかってあります?」
「勿論です、各お部屋に備え付けてあります。追加で1万ネルになりますが備え付けと別に露天のあるお部屋もご案内できますよ」
「おぉっ!んじゃ露天付きでお願いします!」
「はい、それでは受付へどうぞ」
受付を終え宿代を渡す。洗濯物があれば部屋の外に設置されたカギ付きのカゴに入れてくれとの事。
奥の部屋へ案内され部屋のカギとカゴのカギを受け取る。
礼を述べ部屋へ入る。その前に確か…と
「これ…」
銀貨1枚を渡す。間違ってるかもしれないが海外のチップと同じように日本でも仲居さんとかに渡すはずだ。ドレス姿のこの人が仲居さんなのか分からないが。
「まぁ…ありがとうございます。それではごゆっくり、お食事は3時間後にお部屋に運びますね」
「はい、お願いします」
部屋へ入り襖があった。少し感動しながら襖を開けると畳部屋。
に大きめのテーブルと椅子が設置されていた。
「えぇ…畳に直接椅子って…」
困惑しながら奥の襖を開ける。畳部屋にベッドがドンッと置いてある。奥に襖、部屋の左には引き戸が見える。
引き戸の方はトイレ、中にもう一つ引き戸があり脱衣所と備え付けのバスルームだった。バスタブは無く、なんと蛇口を捻ったら温かいお湯のでるシャワータイプだったが。
奥の襖を開けると拾い脱衣場、その奥に磨りガラスで出来た扉。
中を覗くと石で出来た露天風呂を確認出来た。一階なので隣の建物から丸見えだと思うのだが…。
部屋の確認を終えテーブル部屋へ戻る。
「ルイン、寛いで大丈夫だよー」
『はいっ』
武器は預かったままなので外套だけ脱ぎ椅子へ掛ける。
「とりあえず旅の汚れを落とそう、脱衣所に浴衣があったから先にお風呂入ってそれに着替えなー」
『それでは…お先に失礼します』
「どぞー」
旅立つ前に渡した麻袋を持って脱衣所へルインが向かう。
「んーーなんとも言えないとこだけど…まぁ料理に期待するか」
待っている間ヤトを喚び時間を潰す。
暫くすると浴衣に着替えたルインが部屋に戻る。
『お先に頂きました』
「ん、じゃあ俺もシャワー浴びてくるかね」
『シャワーですか?』
「ん?備え付けの方はシャワーだったでしょ?」
『えーっと…その様な呼び方は聞いたことありません…確か、簡易風呂と言う魔道具の一種だったと思いますが…』
「そうなんだ…」
風呂では無いだろと心の中で突っ込みつつシャワーを浴びに行く。脱衣所には小さな箱があり、自分の服をいれる時にルインの下着を見てしまったが手早く汚れを落とし、箱を持って部屋へ戻る。
「外のカゴに汚れ物入れてくるね、他は無いかな?」
『あっ!私がやります!』
「ん?いや、大丈夫だよ」
カゴのカギをちゃんと締め、部屋で寛ぐ。
『ご主人様、私は奴隷なんですからもっと使って下さい…』
「えっ、いや、あんなのでいちいち言わないでしょ」
『そんな事無いと思うんですが…』
「うーん、まぁ良いじゃん」
『はぁ…分かりました…』
そのままダラダラと過ごす。少し変だが旅行に行って旅館での過ごし方はこんな感じなのだろう。
暫くヤトと遊びながらルインと話ているとノックする音が聞こえる。
『私が出ます!』
何故か勢いよくルインが入口まで行き、先程のドレス姿の女性を中へ入れる。
「お食事をお持ちしました」
そう言ってレストラン等で見かけた事のあるワゴンから次々と料理が運ばれてくる。
魚を焼いた物、小さな鍋で沸騰したお湯、中に小さな石が見えるので魔石だろう。生の薄い肉が何枚かと新鮮そうな野菜、小鉢が何品と鮮やかな果物。そして白い柔らかそうなパン。
「惜しい!」
「えっ、何か不都合がございましたか?お嫌いな物がありましたら違う物をご用意しますが…」
「あ、いえ大丈夫です」
「ピィーー!」
「あら、使い魔もお連れなんですね、直ぐに用意して持ってきますね」
「あーすみません言い忘れてました、追加で払うので肉をお願いします」
追加料金は大丈夫と言われ女性が部屋を出る。
「ルイン、ちょっと待ってね」
『はい…』
残念そうなルインも可愛いなぁと思っていると直ぐにヤトの分も運ばれてきた。
「お待たせしました、他に何かございませんか?」
「あ!露天なんですけど、アレって外から丸見えじゃないですか?」
「申し訳ございません、伝え忘れていました。当店の露天では隅に視界を防ぐ魔石を設置してますのでご安心下さい」
「そうなんですね、ありがとうございます、他は大丈夫です」
銀貨を1枚渡すと礼を告げられ女性が部屋を出る。
「んじゃ食べようか!いただきます!」
『いただきます』
「ピィッ!」
「めちゃくちゃ美味しい…」
料理に舌鼓を打ち、暫くこの宿に滞在する事を決めた。
2時間程経ち、先程の女性が料理を下げにくる。
その際に綺麗に折り畳まれた洗濯物を渡され驚いていると魔道具で直ぐに乾燥まで終わらせる事が可能との事。
女性が部屋を後にする。渡し過ぎかもしれないが銀貨1枚渡しておく。酒を持ってくるか聞かれたが断った。
「うっし、露天風呂も入るか!」
安心して入れる事が分かったのでヤトを喚び露天風呂へ向かう。
「極楽極楽~ってやつかな」
ヤトもダラーンと伸びきって湯に浮かんでいる。
ガラッ
一糸纏わずルインが這入ってきた。
ヤトも居るから安心していたのだが。
『失礼します』
「お、おう…」
肩をピッタリと寄せ付け湯に浸かる。
ち、近い…。
『月が綺麗ですね…』
有名な訳を思いだしドキっとするが空を見上げると確かに美しい月が見える。
「初めて見た瞬間から綺麗だったよ」
微笑むルインに一瞬見蕩れ、二人で月を眺めた。
ルインが先に上がり、暫くしてヤトを戻し部屋に戻る。
「良い湯だったな、そろそろ寝ようか」
『はい…』
ベッドへ潜る。するとルインが浴衣を脱ぎ、可愛らしいレースの施された濃い紫のブラ、フリルのついた同じ色のTバック姿になる。どちらも見覚えが無い。
「る、ルイン…?」
『店員さんから頂いた物です』
あの時の!その姿を見ただけで昂ってしまったそれをルインが上目遣いで…。5日ぶりに咆哮を上げた俺のドラゴンは最大規模のブレスを解き放った。
『美味しかったですご主人様、ありがとうございますっ』
「うん…こちらこそ…」
店員さんにも心の中で頭を下げる。こうしてラハブでの初日が幕を閉じた。
VSルイン 呆れる早さで完敗!
説明下手をどうにかしたい…




