第12話:道中
戦闘戦闘楽しいなっ
村を出て二日目。レア体験をする事になった。
「兄ちゃん、命が欲しけりゃ荷物と金になるもん置いて行きな」
おぉ…。これはもしかしてもしかすると…。
「盗賊的な?」
5人の汚ならしい格好をした男達が表れた。
「あぁそうさ!抵抗しないなら助かるかもだぜぇ?」
お約束。でも、いつも考えてしまう。なんで不意討ちなりしてさっさと『殺し』に掛からないのかと。優しさだろうか?単純に金が欲しいのならわざわざ正体を表すなんて愚か以外の何物でも無いと思うけど。
「んーと…取り敢えず…其れなりの覚悟とかってある?」
この場合『殺し』ても問題無いのかな?
゛闘争者たちの宴゛じゃ決闘以外の合意無しの攻撃は犯罪者扱いがあるし確か犯罪者扱いのユーザーを刈って称号取得出来たはず…。
「覚悟だぁ?お前を殺す覚悟かぁ?ハッハッハ!」
「リーダーリーダー、俺男もイケるんでこいつ貰っても良いですか?」
「お前…まぁ良いだろう、飽きたら奴隷にでもするか!」
小物臭い4人が獲物を抜く。リーダーと呼ばれていた筋肉質の男はメリケンを装着する。良いねぇ、男はやっぱ拳だね。
「残忍、お前らからは特有の匂いみたいなモノがしない、只のモブ確定だ」
新人を構える。
彼らは知らない。盗賊なんて職業が無いことを。
自分たちが冒険者にすら、基本職にすら成れて居ない事を。只の村人であると。そして今襲っている相手が只の村人では無いことを。当然これらは只の悲運でしかない。
「ハッ!随分高そうな剣持ってるじゃねえか!」
【新人の祝福】は一般的なショートソードと言われる物だが刀身から柄の部分まで金色に輝く趣味の良い剣だった。初心者支援の武器なので店売りじゃ1Gとかのお約束なお値段だった筈だが。まぁ異世界じゃ分からない、金に困ったら売るのも視野に入れている。
盗賊の1人を捕捉し接近。肩から腰の辺りへ剣を走らせそのまま横薙ぎで2人同時に斬りつける。立っている2人のうち男もイケるらしい方に逆袈裟斬り。弱強弱攻撃による連続通常。
「なぁ!?いきなり何しやがる!」
「いやいや、襲ってきたのはそっちだろうが!優しさか何なのか知らねーけどわざわざ声掛け運動お疲れ様ですッ」
飛び込みからの袈裟斬り。
「なぁ?!なんつー攻撃!お前剣術の経験者か!」
なんとか防御出来た盗賊が叫ぶ。
「んー、村人ノだから剣術も何も無いんだけど…」
実際、必須職業である村人だが通過点でしか無い為に熟練度による恩恵や必殺技が無い。
「てめえ!仲間の仇だああぁ!」
「まだ殺してないぞっ!っと」
意識して加減をしておいた。゛闘争者たちの宴゛ではそんな機能は無かったが実験成功の様だ。
「黙れ!てめえには痛い目みせてやる!」
「理不尽だな!それじゃあ俺はアンタに後悔の2文字をプレゼントしてやるよ…」
太い腕から繰り出される拳、始動としてはお世辞にも向いてるとは言えないそれを回避。
何度も避ける。寸前で。
「てめええぇぇ!逃げてんじゃねええぇっ!」
逆上し、更に大振りになる拳。
「俺の国じゃあこう言うのは゛煽り゛って言うんだけどっ…とー!」
息の上がる盗賊の拳に合わせ反撃、威力のほぼ無い速すぎる攻撃を放つ。殺気を加えて。
右頬から左額側にかけ、うっすらと斬り傷を浮かび上がらせながら盗賊は顔を白くする。
「ちゃんと理解出来たか?それじゃあ選ばせてやる…抵抗か命乞いか」
ナニかされたとしか分からないモノを受けると同時にそのまま失神してしまいそうな程背筋が凍った。そんな恐ろしい殺気を放っていた男、慈悲か情けか分からない、だが理解はしている。幸いまだ生きている。慕ってくれている仲間の目の前。男は思う、そんなのは些細な事だと。仲間に何を言われようが、どれだけ失望されようが構わない。自分から襲っておいて、意地汚く、生き汚く、まるで被害者の様に涙を浮かべ男は請う。神にでも祈るかのような命乞いを。
「汚ない…もう良いから仲間連れてさっさと消えてくれ…そして今日の事に懲りたら真面目に仕事でも探しな」
盗賊達は感謝を述べながら立ち去る。本当に良い事をされたかのように。
男達が立ち去る前に意識する。『調べる』。すると脳裏に流れる。
男 LV22 村人 盗賊
男 LV16 村人 盗賊
男 LV15 村人 盗賊
男 LV15 村人 盗賊
男 LV14 村人 盗賊
検証成功。アビリティーや装備等までの詳しく迄は分からないが情報が得られた。職業とは別の盗賊が気になるが。
このレア体験も無駄にはならなかったようだ。
「仕組みは分からないけど…意識したら色々出来るのかもな…」
後ろから襲われる事を少し警戒しながら再び歩きだす。淡い期待をしながら。
辺りが暗くなり、野宿の準備を始める。麻袋の中には食料を始め、寝袋、水、火起こしの道具と一通り揃っている。
「ありがたいねー」
礼を述べながら空を見上げる。
「カメラ欲しい…」
田舎とまで言わないが自然豊かな土地で育った自分は驚く程綺麗な夜空に思わず呟く。
「まぁ無い物ねだりは意味無いかっ、ご飯ご飯!」
気持ちを切り替え堅いパンをかじる。食事を終え、水を節約しながら体を拭う。少しだけさっぱりし、眠りに就く。
最近独り言多くなってきたなんて考えながら。
白い男が現れる。頭の先から爪先まで嘘のように真っ白な。
見蕩れる程やわらかな微笑みを浮かべて。
その笑みもどこか嘘のように感じるが。
何か言っている。どこへ出掛けたのか、音は何も聞こえない。
男が何か言っている。そして少し眉を寄せながらお辞儀をする。
詫びなのか感謝なのかは分からない。
しかし感心するほど綺麗な。嘘のように綺麗な…。
「夢…」
朝日が少し眩しい。心地良い目覚め。ぐっすり眠れたはず。
なのにどうしてか体がダルく感じる。
「今日で三日目…もうそろそろ着くかな?」
少し急ぎ気味に準備を整える。焦っては無かったが気持ちは先を急かしている様だ。
その後何事も無くスムーズに旅は進む。
逸る気持ちを抑えられ無かったのか体力があるからなのか分からないが、遠くに高い塀が確認出来る。少しすればすぐに陽も落ちるだろう夕暮れ時。辿り着く。
始まりの街 ラフィンへ。
ヒロインは少し先になります




