表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

ハーフババ抜き


「おはようございます」

 リリーはアイドル寝起きクイズをやる司会者のように声を小さくした。


「何が、早いのよ。遅いでしょ!」

「み、魅杏!?」


 魅杏はこっそりと部屋に入ろうとしたリリーをとがめた。

「あなたねぇ、加奈子を頼むって言って、そのままどこかに行かないでよ」

「ごめん」

「連絡くらいしてよ」

「申し訳ない」

「なんで、朝帰りなのよ」

「始発で帰ってきたもので……」

「……ゆうべはお楽しみだったのかしら?」

「……そんな楽しいことはなかったよ。しかし、朗報であるが」

「ん? どう言うこと?」


「加奈子の工場を再建できるようになった」


「えっ!?」

「実はかくかくしこしこ」

「……なるほど、柳井社長が…………。国内最大手が……。たしかにそれなら、加奈子は納得できるかも」

「ん? どう言うことだ」

「実はかくかくしこしこでね」

「そうか、加奈子が断ったのか。魅杏の資金調達じゃあダメなのか」

「私の会社の子会社にするより、同じアパレル企業の子会社……ビジネスパートナーになった方がいいわね」



「……ところで、加奈子はどうだ?」

「大変ショックを受けてた。それと、来ることができるなら千景や彩香に連絡したけど、彩香はちょっと無理だった。けれど、千景がお見舞いに来てくれて、何だかわけのわからない薬物とドリンクを飲まされたわ」

「気分がハイになるお薬じゃないか?」

「そんなんじゃないわよ。千景が言うには、寝かせて一旦緊張をリセットさせるというの。それで」

「寝てるのか」

「いや、起きてるよ。加奈子も千景も」

「早いな、今何時だと思ってるんだか」

「あなたこそ、何時だと思ってるんのよ。遅すぎる帰宅よ」

「…………はいはい。わかった」



 リリーはリビングに進むと、加奈子と千景が座って談笑していた。おそらく、千景なりの気の使い方なのだろうか。昨日のことを思い出させないくらいに先制攻撃をする。


「おはよう。加奈子、千景」


 加奈子がリリーの姿を見ると、あっと小さな声をあげ、つーと涙一筋を流した。

 それに対し、千景はジトーとリリーをにらめつけた。


「あっ、あぁあ」

「……遅い」


「ごめんな。加奈子、千景」



 リリーはちゃっかりと加奈子と千景と魅杏とで朝食を食べた。

 それは、二人で食べたときと違う何かを感じた。


「ああー。腹一杯。なぁみんなでババ抜きしないか?」


 唐突にリリーが言った。

 四人が朝食を食べ終わったあと、リリーはババ抜きをする気だ。


「何で、いきなり、ババ抜きなのよ!」

「いや、ほら。懇親会のとき、加奈子いなかったじゃん。それで」

「それでって、それが理由になるつもりなの」

「まぁ、いいじゃん」

「加奈子はどう思う?」


 魅杏は加奈子訊いた。魅杏はリリーなりの気づかいを知ってのことだった。

 ババ抜きで一旦、昨日のこと忘れさせる。


「わ、私はいいけど」

「……なら、やろうよ」


 千景も賛成し、モーニングババ抜きが始まる。






「朝早いし、学校もあるし、短縮バージョンとして、ハーフババ抜きにしよ」


 ハーフババ抜きはデッキを27枚で戦うことである。今回は赤色のスートで戦う。

 リリーはデッキをポケットから取り出すと、シャッシャッとシャッフルした。

 四人に均等に配り終えると、魅杏と加奈子と千景が7枚、リリーが6枚となった。

 席順は、北に魅杏、東に加奈子、南にリリー、西に千景と座る。



「ゲームスタート!!」


[リリーの手札]


♦3♦5♦8♥10♦Q♥K


 一巡目


 加奈子と千景と魅杏とのジャンケンで、魅杏の手札を加奈子が引くことになった。


「これって、私とリリーが有利ってことよね」

 魅杏の言う通り、奇数枚の手札を引かれスタート時と偶数枚の手札で始めると有利である。

 ババ抜きは二枚ずつ減る。故に偶数枚の方が揃いやすく、きっちりと手札がなくなる。


「えいっ」

 加奈子が魅杏の手札を一枚引く。すると、ペアが揃い、♦9と♥9を捨てる。

「はい」



【選択肢】


①『極左』


②『近左』


③『中左』


④『中右』


⑤『近右』


⑥『極右』



「極右だ!」

 リリーは一番右を引くと、カードは♥Q。

「揃った」

 リリーは♥Qと♦Qのペアを捨てる。


「……」

 千景はリリーから手札を一枚引く。すると揃い、♥Kと♦Kのペアを捨てる。

「んっ」


 魅杏は千景から手札を一枚引く。すると、ペアが揃い、♥Jと♦Jを捨てる。


[リリーの手札]


♦3♦5♦8♥10


 二巡目


「えいっ」

 加奈子が魅杏の手札を一枚引く。すると、ペアが揃い、♥2と♦2を捨てる。

「はい」



【選択肢】


①『極左』


②『左』


③『右』


④『極右』



「極右だ!」

 リリーは一番右を引くと、カードは♦10。

「揃った」

 リリーは♥10と♦10のペアを捨てる。


「…………」

 千景はリリーから手札を一枚引く。すると揃い、♥3と♦3のペアを捨てる。

「んっ」


 魅杏は千景から手札を一枚引く。すると、ペアが揃い、♥4と♦4のペアを捨てる。


[リリーの手札]


♦5♦8


 三巡目


「えいっ」

 加奈子が魅杏の手札を一枚引く。が、揃わなかった。そのカードを一番右に置く。

 魅杏の手札は二枚。加奈子の手札は四枚。次のリリーの手札は二枚。リリーが揃うと自動的にリリーが一抜けでアガリになる。


(もしかしたら、だが。それでもやるしかない。拾いだ!)


 

【選択肢】


①『極左』


②『左』


③『右』


④『極右』



「神かジョーカーか!」

 リリーは一番右を引く。ジョーカーだった場合、次の千景は拾い回しをしない。警戒をする。

 だが、

「♥8!」

 リリーは♥8と♦8のペアを捨て!! これで、リリーは一抜けでアガリとなった。


「………………」

 千景は残り一枚となったリリーのカードを引く。が、揃わなかった。ということは、のちのち千景と加奈子の一騎討ちを意味することになるだろう。

「んっ」


 魅杏は千景から手札を一枚引く。すると、

「よっし!!」

 ペアが揃い、♥Aと♦Aを捨てる。

「頑張ってね、加奈子」

 魅杏の最後の一枚はジョーカーだ。つまり、加奈子に自動的に絶対的にジョーカーが移る。


四巡目


「むぅ」

 加奈子は頬を膨らました。ジョーカーなので、当然揃わない。ここで、千景がジョーカーを引いてもらわないときつい。

 千景が別のカードを引くと、必ず揃う。すると、次の加奈子も必ず揃う。そうなると、一枚対二枚の対決となる。

「……はい」


「………………シャッフルしなかったね」

 千景の言う通り、加奈子は机の下や背中でシャッフルはしなかった。つまり、ちゃんと見ていたならばどれがジョーカーかわかるのだ。

「んっし!」

 千景が引いたカードは♦7。♦7と♥7のペアを捨てる。


 五巡目


「むむむ」

 加奈子は素早く千景の手札を一枚引く。当然ながら揃う。♦8と♥8のペアを捨てる。


 千景の手札は残り一枚。加奈子の手札は残り二枚。

 ここで、千景がジョーカーを引いてくれなきゃ、加奈子が負ける。


(千景、わかってるのかな。加奈子のためにババ抜きしてるんだけど。まぁ、一抜けした私があまりに言えないんだけど)



【選択肢】


①『千景、空気を読め』


②『千景に念を入れる』


③『現実は非情なり』



(はあああああ)


 リリーは掌を出し、千景に念を入れる。


「んっ! なっ!」

「やった」

 

 千景は加奈子から一枚引く。そのカードはジョーカーだった。


(マジか! 私の選択肢の能力すごいな)


「ま、まだよ」



【選択肢】


①『加奈子にサインを送る』


②『加奈子に念を入れる』


③『現実は非情なり』



(はあああああ)


 リリーは掌を出し、今度は加奈子に念を入れる。


「えいっ! やった!」

「そんな……」


 加奈子はペアが揃い、♥6と♦6のペアを捨てる。これで、加奈子が三抜けとなる。


「ううう、もっかいしよ。もう一回」

「千景、学校に遅れるぞ」

「ふふふ」


 千景の敗北となる。リリーは学校を気にするが、それより加奈子を気にした。

 そこには、笑顔が戻っていた。



(会社再建のことは後にするか)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ