オールドメイド
深夜の吉原をリリーを歩いていた。
ラブホテルがあるが、そこには泊まらない。
「お姉さん、ちょっといいかな?」
「あ?」
スカウトの男がリリーに話しかけてきた。
「今からババ抜きやるんだけど、人数が足らなくて。よかったらやらない?」
「…………どこでやってるんだ」
「あのマンションの一室さ」
「ふんっ。そんな『パーティ』に参加する気はない」
「いや、男なんていないよ。僕はディーラーでトランプを配らなきゃいけないんだけど。他は皆女の子。三人とも女の子さ」
「信用ならんな。顔からしてヤリサーの大学生みたいだ。乱交パーティじゃない証拠を出せ」
「そんなこと言われてもなぁ。高レートババ抜きを徹夜でやるだけなんだけどなぁ」
「そっ」
リリーはスカウトの男をあとにして、スタスタと歩いた。
「ねぇ、名刺だけでも見てよ」
「…………で、誰と誰と誰が来てるんだ」
リリーはスカウトの男から無理やり渡された名刺を見て高レートババ抜きに参加することにした。
その名刺の中には有名なブランド服を扱う女社長がいた。
「柳井社長と、紫蘇と味噌だね」
「ふーん」
スカウトの男はリリーをマンションに連れ込む。リリーは何かあったら金的して逃げればいいと思った。ヤクザを殴ったことあるリリーなら大丈夫だろう。
「遅くなりました。一人女の子を見つけてきました」
「遅いわあ。すっかり深夜になっちゃったじゃないの」
「何言ってるのかしら。徹夜でやるのに」
部屋に入ると、そこには女性が三人いた。
一人は、三十路くらい。もう一人は四十路くらい。
「あら、なんだか若い娘ね」
部屋の奥に高そうなブランド物で身を包んだ女性がいた。おそらく、五十路くらい。
「えーと、名前は」
「リリー」
「そう、リリーちゃんです。とりあえず一人リクルートしてきました」
「ねぇ」
「ん?」
「『女の子』って聞いたんだけど」
「…………『女の子』です。……察して」
「いいから、はやくやりましょ」
「それより、その娘はここの風速は知っているの?」
「知らないな」
「なら、教えてあげる。一抜け、二抜け、三抜けで順位がつく。その順位で点棒を積み上げる。デカピンね。わかった?」
「なるほど、麻雀みたいなものか」
「わかったなら、はやくやりましょ」
「待って」
リリーがとめる。
「そこの貴女と、サシウマしましょ」
リリーは五十路の女性、柳井社長を指差す。
「なっ、あなた何言ってるのよ!」
「そ、そうよ! 身分を弁えなさい」
四十路と三十路はがやがやと騒ぎ立てるが。
「いいわよ。私とあなたでサシウマをしましょ。けれど、高いわよ」
「上等」
柳井社長はリリーの誘いに乗った。
「えー、ではルール説明をします。ババ抜きと言ってもジョーカーは使いません。♣のクイーンを一枚抜きます。つまり、オールドメイドです」
スカウトの男はディーラーの男となって、ルール説明をした。
一抜け、三万点。二抜け、一万五千点。三抜け、八千点。ビリは零点。
一点で一円となる。
これを始発の時間まで永遠と続ける。
「それで、リリーちゃんと柳井社長のサシウマなんですが……」
「私の方は、土地だ。最低でも数億はくだらない」
リリーがそう言うと、四十路と三十路が『ざわざわ』とざわめく。
「……困ったわね。数億円も持ってきてないんだけれど」
「その価値はある仕事をしてもらいます」
「ほう。その仕事って?」
「アパレル企業との、再建、業務提供、などなどです」
「ふっ。なるほどね。ウチが介入すればそのくらいのキャピタルゲインはあるわね。ふふふ。いいわ。もし、あなたが勝ったら、特権を使ってそのアパレル企業と仕事をしてあげるわ」
「それでは、配ります。配り終えましたら、オールドメイド、ゲームスタートです」
【選択肢】
①『必ず勝ってやる!』
②『皆さん! いい勝負をしましょう!』
③『はぁ…… 緊張するなぁ』
④『ええい、ダメで元々! 当たって砕けろだ!』
⑤『おもむろに必勝を祈願する』
⑥『お手柔らかにお願いしますと不敵に笑う』
⑦『三人ともやっつけてやる! 覚悟しな!』
⑧『フッ……と冷笑する』
⑨『雄叫びをあげて、自分を鼓舞する』
「ふおおおおおああああああおおおおお!!!」
[リリーの手札]
♦A♣2♥3♦5♥7♦9♥J♠Q♦K
リリーの手札が9枚、他8枚で、リリーの手札が引かれる。北にリリー、東に柳井社長、南に紫蘇、西に味噌の席順になる。
ゲームスタート。
一巡目
「では」
柳井社長はリリーの手札から一枚を引く。引かれたのは♥3だ。
柳井社長はペアが揃い、手札から♣3と一緒に捨てる。
「はい」
柳井社長が手札を差し出すと、紫蘇は一枚引く。ペアが揃い、♥2と♠2のペアが捨てられる。
紫蘇が手札を差し出し、味噌が一枚引く。
ペアが揃い、♦3と♣3が捨てられる。
「さぁ、どうぞ」
「よっしゃあああ」
「あなた、うるさい」
リリーは一枚引く。カードは♦2。♣2とのペアを揃え、捨てる。
二巡目
「柳井社長、口約束も約束ですよ」
「もちろん」
[リリーの手札]
♦5♥7♦9♥J♠Q♦K
柳井社長はリリーの手札から一枚を引く。引かれたのは♦A。柳井社長はペアが揃い、♠Aと捨てる。
紫蘇は一枚引く。が揃わない。
「うーん」
紫蘇は味噌に手札を差し出す。味噌は一枚引き、♥Aと♣Aのペアを捨てる。
「だああああ」
「ちょっと、黙ってくれるかしら」
リリーは一枚引く。♦6を引いた。が揃わない。
[リリーの手札]
♦5♥7♦9♥J♠Q♦K♦6
三巡目
柳井社長はその揃わなかったカードを引く。拾いだ。
「ふふ」
柳井社長は拾いが成功した。
♦6と♥6のペアを捨てる。
紫蘇は柳井社長の手札から一枚を引く。が、揃わない。
味噌は、柳井社長を思ってか拾いはせず、別のカードを引く。すると、ペアが揃った。♦10と♥10のペアを捨てる。三枚になり、リリーに手札を差し出す。
「叫ぶのやめていただける?」
「しゃ」
リリーは一枚引く。が、揃わない。
[リリーの手札]
♦5♥7♦9♥J♠Q♦K♦8
四巡目
柳井社長は再び、拾いをする。
「ふふ。これでアガリね。一抜け」
柳井社長は♦8と♥8のペアを捨てる。すると、残りの手札は一枚。つまり、紫蘇はこれを引かなければならない。この瞬間、柳井社長の一抜けが確定した。
紫蘇は一枚引く。が、揃わない。
味噌に手札を差し出す。味噌はそれでも拾いは行わない。柳井社長の体面があってのことだ。
だが、ペアは揃う。♦Qと♥Qのペアを捨てる。この瞬間、味噌の二抜けが確定する。残り手札は一枚だ。それをリリーが引かなければならない。
「これで、行き遅れの娘が決まったわね。ねぇ、リリーちゃん」
「柳井社長は置いて、あなたたちはどうなんですか? もしかして、独身? アラフォーとアラフィフが」
リリーの返しの挑発に、三十路の味噌と、四十路の紫蘇が激しく反応する。
「きいいい。私はまだアラサーよ!」
「そうよ、女の幸せは結婚じゃないわ!」
「ははは。図星か」
リリーは残りの一枚を引く。が、揃わない。
[リリーの手札]
♦5♥7♦9♥J♠Q♦K♥4
五巡目
「この、小娘が!」
紫蘇は、拾いをする。二人になると、拾いをしようがしまいが行き遅れの娘じゃなければ揃う。
紫蘇は♥4と♦4のペアを捨てる。
「まぁ、ここまで来れば絶対に揃うからな」
リリーは一枚引く。当然ながら揃う。♦Jと♥Jのペアを捨てる。
[リリーの手札]
♦5♥7♦9♠Q♦K
六巡目
紫蘇は素早く一枚引く。♦9と♥9のペアを捨てる。
「これで、リーチね」
リリーが一枚引く。♥Kと♦Kのペアを捨てる。
紫蘇の言う通り、リーチとなっている。ここで、♠Qを引いてもらわないと、リリーは負けが決定する。
[リリーの手札]
♦5♥7♠Q
七巡目
「私は結婚するのよ!」
そう言い、紫蘇はリリーの手札から一枚引く。が、
「なっ!?」
「行き遅れるのはあんただよ。ババア」
紫蘇は♠Qを引いた。つまり、売れ残りの娘を引いた。
ババ抜きは昔、お婆抜きと言われ、売れ残りのクイーンを押し付けあっていた。
「まっ、まだよ。まだわからないわ」
【選択肢】
①『右』
②『中央』
③『左』
……この、ババアはシャッフルもせず、手札を差し出すとは。バカだな。引いたカードを右端にやった。いや、こちらから見れば逆かもしれん。ならば絶対に安全の中央だな。
「でゃあああああ!」
リリーは中央のカードを引いた。そのカードは…………。
「♦7! これで、私は♦7と♥7のペアを捨て、♦5があんたに渡り、♦5と♥5のペアを捨てることになって。
売れ残りのババアを持って死ねッ!!」
「ぐ、ぐあああああ!!」
「えー、一回戦終了です」
ディーラーの男が点数を言う。
柳井社長、三万点。味噌、一万五千点。リリー、八千点。紫蘇、零点。
「始発まで、まだまだ続きます」




