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懇親会


「おはよう」

「遅いわよ!」

 リリーは朝御飯を食べ、朝風呂に入り、ゆっくりしてから学校に登校した。教室ではなく、理事長室登校である。


「魅杏、これクリーニングたのむ」

「えっ!? ちょっ、ちょっと!」

 リリーはスーツの上着を魅杏に放り投げる。次にネクタイをキュッキュッと緩め、ワイシャツのボタンを外し、たわわなおっぱいが露出する。

「魅杏、私の制服」

 リリーの旦那様が魅杏に指示すると、魅杏は昨日クローゼットに保管してあったセーラー服を取り出す。それをリリーが受けとり、ネクタイを外し、ワイシャツを脱ぐ。


「お、大きいわね。どうしたら、そんなになれるのよ」

 魅杏はリリーの大きいおっぱいを見て言う。リリーのおっぱいは黒のレースのブラにより支えられている。

「小さい頃から、剣を振るっていたからな。今でも鍛練のために振る」

 剣の素振りをすることは、腕だけではなく胸筋も鍛えられる。リリーは幼き頃から勇者として、剣の素振りを欠かさなかった。遺伝や大豆などのイソフラボンで女性ホルモンを促すというのもあるが、リリーは鍛えられた肉体だった。


「魔王を倒す。そのためにいろいろな鍛練を積み重ねた。どんなことでもな」


 リリーは魅杏がじーっと見ているにもかかわらずセーラー服を着た。上の着替えが完了すると、次はベルトを緩め、ズボンを一気に脱ぐ。黒のレース。リリーはその長身から長い脚を魅せる。鍛えられた脚だ。しなやかな脚で体育や部活ではこのような脚は作れない。リリーは魅杏からスカートを受け取り、履いていく。最後にスカートチャックを上げると中学生勇者リリーの出来上がり。


「さて、今は授業に出なくちゃな」









 三時間目のことである。

「ちょっと、リリー。あなた、何早弁しているのよ」

「仕方ないだろ。腹減っているんだから」

 リリーは今朝、彩香から作ってもらった朝御飯の弁当を食う。せっかく彩香が作ってくれたものだから残さず全部食べる。


「あなた、お昼御飯はどうするのよ」

「そん時は、魅杏に頼むよ」

「何で私が」

「だって、私のお財布だろ」

「……よく、そんなことを平気な顔をして言えるものね」

 しかし、魅杏はまんざらでもない。リリーと最初に出会った時、選択肢の能力によって魅杏は自分でもリリーのお財布だと自覚している。


「…………」

 リリーは彩香が作ってくれた弁当を早弁しながら加奈子を見る。

 その表情は何か考えているような表情だった。ふと、加奈子の手元を見る。手には手紙を持っていた。机の上に手紙を出し、その内容を何度も確認するようにじっくりと見る。

 リリーはその手紙が母親からの手紙だとわかる。今朝、家を出るときに言ったのだから。なのだが、加奈子の表情は固くなっている。内容的にはあまりいいものではないのだとリリーは感じる。


「ぁっ」

 その時、魅杏が小さな声を上げた。リリーはその声に気づかなかった。

「おい、何早弁しているんだ」

 教科担任がリリーの早弁を見つけ注意する。

「あっ、すいません。廊下に立って食いますから」

「いや、廊下には出るな。あと廊下に立ってでも食うな。なかなかいやしいな」

 リリーのボケに教師がツッコミを入れる。その時クラスから笑い声が起こった。クラスのほとんどが笑った。クールな千景だって、クスッと小さな笑いだが笑った。

 しかし、加奈子だけ固い表情をしたままだった。









「なぁ、魅杏。ちょっと駄菓子を買ってきてくれよ」

「はあっ!?」

 放課後、リリーは魅杏にパシりを命じる。

「何でよ!」

「頼む。買ったら、理事長室に集合な。あっ、それと理事長室の鍵をくれ」

「だから、何でよ!」

「……魅杏、ちょっと耳を貸してくれ」

 リリーは理由を求める魅杏に耳打ちで答えた。

「……もう。あなたって人は…………。自由に生きて…………。はいっ、これが理事長室の鍵。後で返してね。戸締まりするから」

 魅杏はそう言って、駄菓子を買いにパシりに出かけた。




「さて」

 リリーは魅杏が出ていったのを見計らうと、カバンに教科書やノートに詰め込んでいた加奈子に声をかける。


「加奈子」

「あっ、何かしら」

「実は放課後、学校に残ってさ……」

「ごめんなさい。私、家に帰らないと」

「えっ!? そ、そうなのか? 何かあったのか?」

「うん、ちょっとね。あっ鍵は開けておくから」

 加奈子はそう言うと、たったと帰っていった。

「………………」

 リリーはその去っていく姿を見る。やはり、あの手紙に何か書いてあったのだろう。どうにも加奈子の様子がおかしい。しかし、リリーその事を気にはするが、今は別のことに頭がいっぱいとなっていた。




「なぁ、千景」

「──何?」

 千景は141cmと小柄で、ネコミミの帽子をかぶっていて、化学部としての白衣を羽織っていて、脚がスラッと細く折れそうだ。千景はリリーのアッシーちゃんとなっている。そのクールな返事にリリーはかわいらしさを感じていた。


「放課後、理事長室で遊ばないか?」

「何で?」

「遊びたいから」

「私は化学の実験がある」

「そこをなんとか」

「じゃあ、取り引き」

「何だ? 何でも言ってくれ」

「化学部の予算の増額を理事長に言って」

「えっ!? それって、横流し? そんなことできるかな」

「あなたは理事長をパシりに使ってじゃない」

「だから千景もお財布にしたいの?」

「……そうじゃないけど、実験にはお金がかかるの」

「…………千景に真摯な想いがあるなら……」

「ある」

「……即答だね。わかったよ。言ってみる。何とかして化学部に特別な予算を理事長に頼んでみる」

「ありがとう」

「じゃあ、来てくれる?」

「うん」

「これ、理事長室の鍵ね。先に行ってて後で向かうから」

 リリーはそう言って、教室を足早に出る。


「遊ぶって何して遊ぶの?」









 リリーは階段を下り、一年生の階に来た。

 リリーにとっての後輩は彩香だ。リリーは彩香のクラスを知っている。そのクラスに向かい目当ての娘を探す。

 

「あっ…………」

 リリーはこのクラスの異様さを感じる。見てわかる。彩香は廊下側の後ろの席にいた。その席に近づきたくはないように周りの席は離れていた。彩香の席の後ろにゴミ箱がある。そのゴミ箱の周りには丸めた紙クズが散乱していた。一目でわかる。授業中、紙クズを彩香に向かって投げていたのだろう。正当性として、ゴミ箱を狙ってましたと言えばいいのだから。


「彩香」

 リリーは後ろの教室のドアを開ける。

「リ、リリー先輩!?」

 彩香は突然の訪問に驚く。

「帰る準備したのか?」

「え、あっはい」

「よし、じゃあ行こう。付いて来い」

 リリーは彩香の腕を引っ張る。

「えっ、ちょっと待ってください」

 彩香はリリーに引っ張られる腕とは逆の腕でカバンを掴む。

「そうそう。弁当の容器洗っておいたから」

「えっ? えっ?」


「うまかった」


 リリーは突然、くるっと彩香の顔へと振り向く。


「あ…………はい………………」


 彩香は顔を赤く染めた。

「あ、あの……どこへ行くんですか?」


「理事長室だ」










「はぁはぁ。ただいま」

「お帰り、魅杏」

 リリーは手にいっぱいの溢れんばかりの駄菓子を買ってきてくれた。

「飲み物も買ってきたわよ」

「ありがとう。ビールとか酎ハイは?」

「買ってきてないわよ。底辺の宅飲みみたいなことを考えるわね」


「──ねえ」

「あ、あの何をするんですか?」

 千景と彩香が訊く。

「ああ、私たちはパーティーピーポーだ。パリピな。レッツパーリー!」

 リリーは理事長室のテーブルにスナック菓子や駄菓子、飲み物を並べた。

「椅子が四つある。みんな四方に座って」

 リリーの言われるままにそれぞれが四方に座る。


「今日は懇親会だ。みんな飲み食いしてくれ」


 リリーは高々に宣言する。

「遊ぶって聞いたんだけど」

「安心してくれ千景。遊ぶのはこれ」

 リリーはスカートのポケットから取り出した。

「トランプ……ですか」

「そうだ。彩香。トランプだ♥♣♦♠」

「つまりね、トランプで遊びながら飲み食いしようってことなの」

「そう、魅杏の言う通り」

 リリーは椅子に座り直し、低い声で言う。


「さぁ、闇のゲームの始まりだ」




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