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百合子 スナッチだぜ!


──放課後

「ここが教授の研究所か」

 リリーはいつぞやか教授から研究所のGPSデータ付のメールをもらって、その情報からここにやって来た。


「おーい、教授」

 見た目は大きなガレージだ。表札には研究所しか書かれていない。ガレージアドベンチャーという言葉がある。かつてアメリカで流行った家のガレージで起業することである。アップル社とかもそうだった。

 研究所は所々にシャッターが閉まっていて、本当にそこから車が出てきそうであった。リリーは研究所を回り、アルミサッシの引き戸を開き、教授を呼ぶ。


「おお。女勇者かこっちへ来い」

 教授はリリーを研究所の中へ連れ、来客用のテーブルに着かせる。

「実は話があって……」

「おお、能力を持った少女についてだな。よし、スマホを貸してみせい。ふむ、どれどれ……捕まえた数四人か……。うーむ。学校だけじゃなく、もっと広範囲に探してはどうじゃ」

「いや、違うって」

 リリーは勝手に教授が少女たちのことで来たのだと勘違いしたところを諌める。


「城東会のことだ」


「………………」

 教授の眉がぴくっと動いて、リリーに顔を向ける。

「加奈子からみかじめ料を取ろうとしていた城東会について知らなきゃならんから」

「………………女勇者よ、まずは……」

「いや、教授の言いたいことはわかるが、これは私にとって最初の少女……加奈子についてのことなんだ。これは必要なことだ」

「……そうか。じゃあ、訊くがいい」


「まず、魔王トウキョーの率いるカンパニーの下部組織に城東会がいるんだよな」

「ああ、そうだ」

「その城東会はなぜ、みかじめ料なんかで収入を得てるんだ」

「それは、知らん。だが、収入源はいろいろある。ヤクザと言えばという職種を上げればきりがない。考えるなら風俗業とかだろう。風俗業で得た金が城東会に流れ、カンパニーに上納金として流れていくだろう」


「……つまり、いろんな収入源があって、それが城東会から魔王トウキョーのいるカンパニーへと流れているのか。カンパニーは弱らないということになるのか。……城東会も潰すか」

「っ!? 本気か、女勇者」

「ああ、城東会を潰せば、カンパニーも弱体化はするだろう。それより、成績ってなんだよ」

「……少女たちを救えば、成績はつく。いずれわかるさ」

「そうか。なぁ、城東会がやってる風俗業って何だ?」

「キャバレーとかだろう。この地方だと、吉原町という風俗街がある。そこはけっこう城東会が占めてるらしい」

「よし、わかった」

 リリーは立ちあがり、研究所の外へ出る。

「お、おい。本気か。……まったく」

 教授の声はリリーの耳に届かない。


「……頑張れよ。女勇者」








「加奈子、今日は晩御飯はいらない。食べてくる」

「えっ、そうなの」

 リリーは一度加奈子の家に帰り、帰りは遅くなると伝えた。

「なっ、何で遅くなるの?」

「あっ、えーと、ほら加奈子の両親を探すためだ」

「そ、そうなの。それはありがたいけど、あまり遅くならないでね」

「うん、じゃあ行ってくる」

「あっ、ちょっと待って。私の両親、知ってるの?」

「えっ、あー、そういやどんな人だ?」

「じゃあ、これ。お母さんの写真持っていって」

 リリーは加奈子の母親の写真を手に入れた。

「名前は、百合子よ」

「そう、ゆりこか。お父さんのは?」

「ごめんなさい。持ってない……というか残ってないのよ」

「そうか、わかった。じゃあ行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい」

 加奈子はリリーの背中に手を振り、夫の帰り待つ。きっと、お布団を敷いて、お風呂も沸かして、「お風呂にする? お布団にする? それとも……」ということをすればいいだろうな。


 加奈子はきっと、リリーは帰ってくると信じて疑わなかった。








 リリーは電車を乗り継ぎ、吉原町に着いた。

 夕方でも、ギラギラと趣味悪い色のネオンが街中に光り輝き、欲望が渦巻く。

 キャバクラ、ホストクラブ、ラブホテル、ソープランド以外にもパチンコ、ディスコ、などなど不健全な店が並ぶ。

 そんな中、女子中学生の制服を着た女勇者リリーはその街を駆け抜ける。


「えーと、とりあえずキャバレーから行くか。おそらく裏口とかには黒服がいるだろう」

 リリーはキャバレーへとたったったと走る。風俗店街を走り回ると、リリーは気づいた。

「そう、だった。加奈子のお母さんも探さなきゃいけなかった。しかしなぁ、こんな風俗店街にいるかな」

 リリーはそう思い、この風俗街の案内所の入口に、呼び込みと言われる上着を脱いだタキシードの男に声をかける。

「なぁ、この女性を知らないか」

「ん? そう言えば似たような人が出勤してたなぁ」

「そうか、やっぱり知らんのか。じゃあ…………って、知ってるのか」

「これは、すっぴんだからはっきりは言えないが、化粧をすればここを通ったような」

「どこに、行った!」

「たしか、キャバレー極楽園に出勤してたような」

「そうか、ありがとう!」

 リリーは呼び込みの男に肩をぽんっと叩くと、キャバレー極楽園へと走っていった。

「……あいつ、学生だよな」




「はぁはぁ、ここか」

 リリーはキャバレー極楽園という看板のあるビルにたどり着いた。キャバレーは一階に入っておりすぐ目の前だ。

「よし、行くか」

 リリーはずかずかとキャバレー極楽園に入ろうとすると。

「ちょっと、お姉ちゃん? 学生だよね? 免許書とか年齢証明できるものない?」

 キャバレーの入口に客を案内する男性スタッフがリリーの入店を阻止した。

「何だ貴様は」

「えーと、ここはねお酒を提供する店なの。未成年は入店できない決まりになっていてね。まぁ、おっさんがセーラー服を着て入店することもあるけど、その服は制服だよね。学生かな? それだったら入店はご遠慮願いたいんだけど」

 リリーは年齢では中学生ではないが、理事長である魅杏に無理やり中学校に入れさせてもらった。見た目は高身長もあってか大人に見られないこともないのだが、今は勇者服ではなくて学生服である。当然ながら止められる。


「ああ、生徒手帳なら……」

「お引き取りください」









──統御学園理事長室

「魅杏! 免許書を作ってくれ!」

「無理よ! 偽造なんて、犯罪じゃない!」

 リリーはキャバレーの男性スタッフから追い出させれ、学園に戻ってきた。何とかできる理事長の魅杏様の力にすがったのだ。

「そこをなんとかぁ~。魅杏~」

「きゃっ、ちょっと! 抱きつかないで!」

「だって、必要なんだもん」

「何が!」

「実は…………」


 リリーは加奈子の母親のことは伏せて魅杏に話した。

「何で城東会の撲滅のために、キャバレーに潜入する必要があるのよ!」

「……私は勇者だ! 悪いやつは許せない」

 リリーは一点の曇りもなく、魅杏を見つめて言った。

「…………もぅ、そういうかっこいい事を言うから……ずるいわ」

 魅杏はリリーの耳には届かないほどの小声を漏らした。

「はぁ、わかったわ。でも、あなたは見た目は大人に見えるわ。だから、制服を着替えましょ」

「そうなのか、着替えたらもう免許はいらないのか」

 リリーは理事長室のクローゼットから、何故か男物のスーツを出した。

「これに着替えて」

「着方がわからん」

「…………仕方ないわね。手伝ってあげるわ」


 リリーはその場で、チャックを下しパサッと床にスカートを落とす。黒のレース。リリーは理事長室には女の子しかいないので、特に恥じることも気にすることもなく、セーラー服を脱ぐ。その時、リリーの大きなおっぱいにつっかかって、おっぱいがぷるんぷるんと揺らしながら、セーラー服を脱いだ。上下の黒のレース。リリーは下着姿になり、魅杏からはいっとスーツを受け取るべく手を伸ばすが。


「…………魅杏?」

「…………リリー。あなたっておっぱい……大きいのね」

「何、赤くなって言ってんだよ。いいから、着せてくれ」

 魅杏はリリーにスーツを着せる。ズボンは男物のなのでだぼっとしている。パンツスーツのようにぴったりとしてないのが残念だ。

 次にワイシャツを着せる。男物のなのでボタンは逆になっている。これはメイドが貴族に着せることに由来している。故に魅杏からは着せやすかった。魅杏ははち切れんばかりのおっぱいワイシャツをじーと見ている。それを早くしろとリリーに言われる。おっぱいが大きいので一度サラシを巻く。これで端から見れば男の胸だ。

 次にネクタイをくくる。その光景はまるで旦那様にネクタイを結ぶ奥様のよう。新婚さんかな?

 最後に背広を着せて完成。

 男装の麗人、リリー。


「どうだ? 魅杏」

「……かっこいい。素敵……」

「だから、何で赤くなって言ってんだよ。違うだろ。女ってバレないか?」

「えっ、ああ。うん。バレない」

「よし、じゃあ行ってくる」

 リリーはそう言って、ガチャっと理事長室のドアを開ける。

「行ってらっしゃい」

 魅杏は男装したリリーの背中を見て送る。新婚さんの朝の様である。









「おう、ここはいい姉ちゃんはいるか?」

「ええ、もちろん」

 さっきとは違う態度で男性スタッフはリリーをキャバレー極楽園に迎える。

「お客さま、本日は初めてですか?」

「おう、そうだ」

「指名はございますか?」

「ママを頼む」

「ははは、わかりました。本来ならお得意様に接客するのですが、本日は空いております。どうぞごゆっくり」

「ああ、それとこれ」

 リリーは男性スタッフの手に十万円のチップを上げた。そのお金は魅杏がリリーに渡したものである。キャバレーで女の子と話すのならけっこうなお金がかかるから持たせたのだ。

「……本日はV.I.P.ルームが空いております」

 男性スタッフはニヤリとして、V.I.P.ルームに案内した。




「いらっしゃーい」

「何をお飲みになります?」

 リリーはV.I.P.ルームの席に着くと綺麗な姉ちゃん二人が席に着いた。両手に花である。

「本日はご指名ありがとうございます」

 着物を着たママが深々とリリーに頭を下げる。

「ウイスキーロックを頼む」

「きゃあ、ありがとうございます」

 リリーはウイスキーロックを頼んだ。別にリリーが飲むわけではない。女の子に飲ませてあげるのだ。といっても頼んだけど飲んではいけないわけではない。あくまでも、酒を飲みながら女の子との会話を楽しむのだ。

 リリーは加奈子の母親を探すため、城東会撲滅のために潜入しただけで、遊びに来たわけではない。


「お仕事は何をしてらっしゃるんですか?」

 右に座った女の子が訊いてきた。



【選択肢】


①『勇者だ』


②『サラリーマンさ』


③『国立理系の大学生さ』


④『開業医なんだよ』


⑤『自衛隊でね、アフガン帰りさ』


⑥『貿易会社の社長なんだよ』


⑦『……無職童貞です』


⑧『人には言えない仕事だ』



「貿易会社の社長をしているだよ」


「きゃああ! 本当ですか!」

「本当だよ」

「ねぇねぇ、来て来て。この人、若いのに貿易会社の社長をしているんだって」

「しかも、年商8000億なんだって」

「海外にも、会社を何十社も持ってるだって」

「国内外にも不動産を持ってて」

「プライベートビーチも持ってて」

「プライベートジェットコースターも持ってるんだよ」

(やばい、社長だなんて嘘ついたら……みんな尾ヒレをつけてる。ってかプライベートジェットコースターって何だよ! プライベートジェットならまだしも)

 ……遊びに来たわけではない。



 さらに女の子がV.I.P.ルームに着いてきて総勢六人がリリーの両脇をかためる。リリーの正面にはテーブルをはさんでママがいる。

 リリーは本題を切り出すべく、ママに問うた。

「ママ、この人知らない?」

 リリーは加奈子の母親の写真をママに渡した。

「あらっ、この人……マコちゃんだわ」

「マコちゃん?」

 加奈子の母親の本名は百合子である。当然ながら源氏名で働いている。


「ちょっと、呼んでくるわ。マコちゃん。マコちゃん」

「はい、ママさん何ですか?」

「この人があなたを探してたって」

 マコと呼ばれる女性は見た目アラフォーだ。それなのに金髪。おそらく、ウィッグだろう。

「ほら、写真を持って」

 ママはマコに写真を見せた。その時、マコの表情が強張った。

「な、何でこの写真を……まさか、『あなた達』が来たの……」

 マコは何かが乗り移ったように豹変し、バックヤードへと脱兎のごとく逃げ去った。

「あっ、マコちゃん。マコちゃん!」

 ママがマコを呼んでも、マコは帰ってこなかった。

「ごめんなさい。マコちゃん、今日は体調が悪くて」

 ママはリリーに謝る。リリーは何かを感じて立ち上がった。

「ママさん、この小切手に値段を書いて」

 リリーはテーブルに魅杏から貰った、魅杏が払う小切手を置いた。

「待て!」

 リリーはマコを追うべくバックヤードへと消えていった。








「待て!」

「いや、離して!」

「待ってください! 私は女です。ほら」

 リリーは背広を脱ぎ、ネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを開け広げ、サラシを引きちぎった。そこには大きなおっぱいがあった。

「あら、本当」

「でしょう」

「でも、『あなた達』ではないという証拠ではないじゃない」

 マコはリリーにがっしりと掴まれた腕を振りほどこうとするが、リリーの方が力が強く、振りほどけない。



【選択肢】


①『「あなた達」って、何のことですか?』


②『加奈子さんにあなたを探すように頼まれたんです』


③『私はただ、貴女に一目惚れしただけなんです』



「私はただ、貴女に一目惚れしただけなんです」


「えっ!?」


「本当なんです! 貴女のことが好きだから!」

「いや、それはちょっと困ります。ストーカーなら警察を呼びます」

「あっ、嘘、嘘、嘘、嘘! 嘘だよ。本当は加奈子さんにあなたを探すように頼まれたんです!」

「えっ!? 加奈子が……」


 マコは冷静さを取り戻し、金髪のウィッグを取った。

「えーと、百合子さんですよね」

「ええ、そうよ。そう、加奈子が……」

「加奈子さんはご両親のことを心配していました。なので、加奈子さんに会ってはどうですか?」

「……それは、まだできない」

「どうしてです!」

「ごめんなさい。言えないわ」

「そうですか」

 リリーは落胆し、掴んでいた百合子の腕を解放する。


「でも、これを」

「これは?」

「手紙です。加奈子に渡してください」



【選択肢】


①『分かりました。任せてください』


②『私とデートしてくれたら渡してあげるよ』


③『私と加奈子さんとの恋愛を認めてくれるなら……!』



「私と加奈子さんとの恋愛を認めてくれるなら……!」


「えっ! 恋愛! えっ、あなたは女の子よね……いや、そういう恋愛もアリだと思うわ。けど、そういうことは加奈子が決めることだわ。私が関与することではないわ」

「本当ですか!! お義母さん!!」

 リリーはがしっと百合子の手を握った。

「お、お義母さん!? あなたにそう呼ばれるなんて……まぁ、あなたなら構わないけど……」

「ありがとうございます!!」

「きゃっ」

 リリーは百合子を強く抱き締めた。


「それじゃあ、加奈子によろしくね」

「もちろんです! お義母さん!」

 リリーは敬礼して百合子をキャバレーに送った。





「さて、帰るか」

 リリーは百合子からの手紙を加奈子に渡すために加奈子の家に帰ろうとした。その時である。

「ん?」

 建物の裏で何やら太った黒服の男が、悪徳社長風の男にブリーフケースを開け、現金およそ一千万円を見せつけた。

「まさか、城東会の取り引き!?」

 リリーは建物の影に隠れ、その取り引きを見ていた。リリーはもしかしたら城東会の何かの手がかりになると思って。

 リリーはその取り引きに夢中になるあまり、後ろからやって来る長髪の黒服の男に気づかなかった。

「ぐあっ」

 リリーは長髪の黒服の男に背後からバットで殴られ、意識が遠のく。

 ドサッとリリーが地面に倒れ、その音に太った黒服の男が取り引きを見られていたことに気づく。


「ア、アニキ……。殺りますか」

「いや、待て。チャカはまずい。これで眠らせる」

 長髪の黒服の男はリリーの髪の毛を掴み上げ、口にカプセル薬剤を入れ、水を流し込んだ。

「おい、運べ」

「へい、アニキ」

 リリーは太った黒服の男に身体を黒いワゴン車に入れられる。

「行くぞ」

「へい、アニキ」






 どくん、どくん。

 心臓が激しく鼓動する。

 熱い。熱い。

 身体が熱い。


 はぁ、はぁはぁはぁ、はぁはぁ


 熱い! 熱い! 熱い!

 あつーーーーい!




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