第二話 冒険者ギルド
洞窟の中は再び静まり返った。
リンネはしばらくその場に立っていたが、やがて変身を解除した。
『シュゥゥゥ……』
光が消え、元の姿に戻る。
「……異世界、か」
自分でもまだ信じきれない。
だが、あの経験値の声と、空中に現れた光の板。
あれが幻とは思えなかった。
「とにかく、ここにいても仕方ない」
リンネは洞窟の奥から差し込む光を見つめた。
「外に出てみるか」
洞窟を抜けると、そこには広い草原が広がっていた。
見たこともない植物。遠くには石造りの建物。
そして――
「街、か?」
煙が上がっている。
人が住んでいる証拠だ。
「行ってみるしかないな」
リンネは歩き出した。
数十分後。
リンネは街の門の前に立っていた。
石の壁に囲まれた、小さな町。
門番が二人立っている。
「止まれ!」
槍を持った男が声をかけた。
「見ない顔だな。旅人か?」
リンネは少し考えた後、頷いた。
「ああ……そんなところだ」
門番はリンネを上から下まで見た。
「犯罪鑑定をしたが、犯罪歴はなしか。なら問題ねえな」
「この街に入るなら、まず冒険者ギルドに行くといい」
「仕事もあるし、身分証にもなる」
リンネは眉を上げた。
「冒険者ギルド?」
「知らねえのか?」
門番は少し呆れた顔をした。
「魔物を倒したり、依頼を受けたりする連中の集まりさ」
「まあ、とりあえず行ってみな」
門番は街の奥を指差した。
「あのでけえ看板が出てる建物だ」
街の中は賑わっていた。
露店。鎧屋。酒場。
「……完全に異世界だな」
リンネは呟く。
しばらく歩くと、大きな建物が見えてきた。
木の看板にはこう書かれている。
『冒険者ギルド』
リンネは扉を開けた。
ギィィ……
中は騒がしかった。
酒を飲む冒険者。地図を見ているパーティ。武器を磨く剣士。
その中央に受付カウンターがある。
「いらっしゃいませ」
受付の女性が笑顔で言った。
「冒険者登録ですか?」
「はい、お願いします」
「では、まず鑑定を行います」
女性は小さな水晶玉を机の上に置いた。
「この水晶に手を置いてください」
リンネは少し迷ったが、手を乗せる。
すると――
ピカァァ……
水晶が光り、空中に文字が浮かび上がった。
『STATUS』
名前 :リンネ
レベル:1
ジョブ:未定
スキル:変身
ランク:未定
受付の女性は首を傾げた。
「……あれ?」
「レベル……1?」
周囲の冒険者もちらちら見始める。
「おい新人、レベル1だってよ」
「マジかよ」
「赤ん坊じゃねえか」
クスクスと笑いが起こる。
受付はもう一度表示を見る。
「スキル……変身?」
「これは……どういう能力ですか?」
リンネは少し考えて答えた。
「正義のライダーに変身する能力です」
一瞬、沈黙。
「……は?」
受付の女性は目を瞬かせた。
「正義の……ライダー?」
周りの冒険者たちもざわつく。
「なんだそれ」
「聞いたことねえ」
「変身って言ってもモンスターか何かだろ」
「ライダーは悪と戦う者のことで…」
リンネは必死に説明しようとしたが、どうやら誰も聞いていない様子だ。
受付は困ったように咳払いした。
「えーっと……」
「とりあえず…レベル1ということなのでFランクからのスタートになります」
その瞬間、ステータスのランクがFに変化し、ジョブは冒険者になった。
そして受付は言った
「とりあえず依頼を受けてみてはどうでしょうか」
「わかりました、とりあえずどんな依頼がいいですかね?」
「ええっと、スライム討伐なんてどうでしょうか、難易度も低くレベル1でも達成しやすいと思います。」
「ギルド裏の森に多く生息していますね」
そんな話をしていた時、後ろから声が聞こえてきた。
「おい、あいつ雑魚のスライム討伐だとよ」
「報酬があってもゴミみたいな額なのにやる意味あんのか?」
周りの冒険者が笑う。
「新人には十分だろ」
「スライムなら死なねえしな」
受付も少し申し訳なさそうに言った。
「最初は皆そこからですから……」
「依頼、受けますか?」
リンネは少し考えた。
そして――
小さく笑った。
「わかりました」
「スライム討伐の依頼を受けさせていただきます」
周りの冒険者がまた笑う。
だがリンネは気にしない。
心の中で呟く。
スライムか…まあ、肩慣らしにはちょうどいい。
リンネはゆっくり扉へ向かった。
そんな時、声をかけられた。
「新人、お前もFランクでスライム討伐か?」
声をかけてきたのは、ボロボロの鎧を着た男だった。
腰には剣があるが――
刃が途中で折れている。
「俺は剣士のガルドだ」
「まあ……見ての通り弱いけどな」
男は苦笑いした。
その隣には、ローブの女の子。
「ぼ、僕は魔法使いのミリスです……」
ミリスは小さな杖を持っていた。
「火の魔法を使えるんですけど……」
ボッ
杖の先に、蝋燭くらいの小さな火が灯った。
「……これだけです。」
リンネは少し黙った。
そしてもう一人。
白い服を着た少女が手を挙げた。
「ヒーラーのエナだよ!」
「回復魔法が使えます!」
リンネは少し期待した。
エナは両手を構える。
「えい!」
……
何も起こらない。
「……あれ?」
「実はまだ成功したことないんだよね!」
ガルドが笑った。
「まあ、俺たちFランク仲間だ」
「新人、お前も一緒に行くか?」
リンネは頷いた。
「俺はリンネだ、スキルは変身だ、よろしく」
「へんしん?まあいいか、よろしくな!」




