お盆、新御霊祭で夢ダンス、報酬500円
何でいまさらお盆なんだ……と、思われる8月の話題です。
いや……8割方8月に完成していたものを、いまさら引っ張り出してきた関係で……。
拝殿の一室に、軽快な音楽が流れている。普段の巫女舞のお囃子ではなく、聞いてて愉快を誘うポップ調のリズムだ。
珍しいのは二胡の音が混じってるところか。二人の巫女は旋律に身を委ね、優雅に……と思えばコミカルに、さまざまな表情を見せる舞を舞っていた。
時より、葡萄のように幾重にも鈴が連なっている神器、神楽鈴がシャンと弾け、鳳凰の尾のような五色布を導いている。
緋袴に包まれた二人の巫女のそのような姿は、普段から巫女神楽を見ている拝殿の家具たちには異様だろう。というか、舞ってる本人たちもこのような経験はない。
時に戸惑いながら、戸惑っていることにはにかみ、時に笑いながら、楽しそうに振りをつけていた。
そもそも何のための舞だろう。提案したのは櫻花であった。
少しだけ時間をさかのぼって七月の中旬頃。大幣の補修を畳の上でやっていたときの会話だ。
「もうすぐお盆だよね」
「そうですね。櫻花さんはどこか行くんですか?」
「馬鹿ねぇ。巫女がお盆休んでどうするの」
『盆も正月もない』とはよく言われるけど、巫女にとっては『盆と正月がむしろない』のよ……と、「うまいこと言ってやった」的な表情を浮かべた櫻花は続けた。
「そっか、朱里は去年、お盆にいなかったもんね」
「はい、兄に車を借りて友達と旅行に行ってました」
「今年は?」
「兄が車を貸してくれないので友達と旅行にいけません」
スネたような表情を浮かべる朱里。しかし、櫻花には都合がいい。
「じゃあ今年は新御霊祭を手伝ってよ」
「新御霊祭?」
「ま、つまりはお盆だね」
盆は(語弊があるが)仏教式であり、神道は基本的に祭り(祀り)をする。希望者たちに祝詞を奏上し、玉串奉奠をするという点で、神道で行われる他の多くの祭礼に準じているのは、仏教とは違い、神道でいう先祖の霊は神の一種だからだ。
ちなみに、神社で行うのはあくまで神に対してであって、故人に対して神道の教えに従って行事を行う場合は、故人の自宅で行う。
「まぁ、このご時勢、自分ちのお墓もない神社にわざわざ来て祝詞を聞きたがる人も多くはないんだけどね」
だから、新御霊祭自体に、正月のような忙しさはない。ただ、神楽神社はやや事情が違っていた。
「送り火を焚く時に、あたしが巫女神楽を舞うんだよ。これは自主的に……ね」
拝殿の中、お供えされた神饌物の前で、神社を頼ってきた神たちのために舞う。これは別に盆時の必須項目ではないのだが、櫻花は神たちが目を細めて喜んでいることを知っているから、自主的にそれを行っていた。
「これに今回は、萌え要素を加えてみます」
なぜか、ですます口調になって朱里を見据える櫻花。朱里はきょとんとした。
「萌え要素? なぜですか?」
「アンタ、この話が何のためにあるかわかってる?」
テーマは萌え要素だ。萌えとは何かがよく分からない作者が手探りでいろんな要素を提案しているものである。
「だから、萌え要素に当てはまりそうなものは片っ端からやってみないとね」
これは筆者談だが、最近ちょっと思ってるのが、小学生の頃髪の長い女の子が野球帽を被ってるのを見て、ちょっと新鮮な気持ちになったことがある。あるいはあれが萌えの一種なのではないだろうか。
櫻花も自分の経験から似たようなことを考えていた。
「巫女がただの巫女舞を披露しても、そうそう何度も萌えないと思うのよ。あたしがやってみたいのは「え? その格好でそれするの?」なの」
「はぁ……」
この昭和世代はどこへ向かおうとしているのか。
「朱里だってむやみに脱がされるよりはマシでしょ?」
「まぁ、それはもぅ……」
誰かがウィキペディアで『架空のキャラクターに対する「萌え」には性的興奮の意味合いが含まれることもある』と書いたおかげで、朱里はずいぶんとひどい目にあっている。 安易にそちらの方向へ流れないで萌えが達成できるのなら……というのは筆者の願いでもある。
「というわけで巫女舞にポップな要素を加えてみようと思うの」
「それで萌えるんですか?」
「わかんない」
だからやるんでしょう?……と、諭され、朱里も一応うなづいた。筆者の潮来にもなれる櫻花と違い、朱里には言ってることが半分理解できない。が、ゴネてみだりに裸にされるよりは、ポップな巫女舞に付き合ったほうがまだいいとは思う。
「どんな舞なんですか?」
「夢ダンス知ってるよね」
『夢』という歌に合わせて踊るダンスが、最近爆発的に流行っている。
「あれで舞う」
「あれで巫女舞ですか!?」
「実際、振り付けはほとんどあのまま」
「……それじゃ、ほとんど"二つの動画"の『踊ってみた』みたいになりませんか?」
"二つの動画"とは、日本の企業が提供している動画配信サービスである。二つ
(ふたつ)を"二個"と捉えて、通称"二個動"と呼ばれている。
「なっちゃうけどいいんだよ。皆が知ってるダンスを巫女が舞うってところが親しみやすいと思うんだよね」
「誰にも見せないのに?」
「ビデオ撮ろう。二個動に載せるの」
「ええええーーーーー!!」
「実際、あたし自身も舞の参考になるから、毎年ビデオは撮ってるんだよ。今回は朱里と 二人だから二個動載せてみて、みんなの反応みてみたい」
「櫻花さん、"二つの動画"の載せ方なんて知ってるんですか?」
「知らない」
「じゃあ無理じゃないですかぁぁぁ!!!」
頭脳が昭和ナイズされている櫻花だ。もしやと思ったが案の定だった。
「朱里なら知ってるんじゃないの?」
「知らないです」
「まぁ、それは撮ってから調べればいいよ。朱里が」
「わ、わたしですか……?」
「あたしが機械のことわかるわけないじゃん」
「もうちょっと進化してください!」
そもそも機械って……。
「適材適所だよ。巫女がエレキテルが扱えるとは限らないの」
エレキテルって……。
「あなたは何時代のイキモノですかぁぁぁーーーーー!!!」
「朱里」
櫻花はいつもの諭し声になった。朱里は少しどきっとする。
「例えば軌道戦士ガンダムの世界にいるからって、全員がガンダムを操縦できるわけじゃないでしょう?」
「……」
「その時代にそういうものが存在しても、みんなが扱えるかは別なのよ」
まぁ確かにそうではある。そういう例を用いられたら、確かにそうではあるのだけれど……。
「じゃあわたしが調べますけど、特別給とかもらってもいいですか?」
「ん? またガジガジ君?」
「お給料ですーーー!!!」
なにせタイヤがほしい。今の朱里は翼をもがれたダチョウのようなものだ。
「翼あっても飛べないじゃん……」
「セリフにしてないとこツッコむのはやめてください!」
「で? 二個動に載せるのを調べてくれるのにいくらほしいの? 五百円くらい?」
「や……」
安いと言いかけて止まった。冷静に考えてみて、万円を越える報酬が出るような内容ではない。それどころか千円もあやしい。
「……わかりました。手を打ちましょう」
「ありがと! 朱里!!」
愛嬌たっぷりの櫻花のウィンク。このウィンクはとてもかわいらしいのだが、されるたびに朱里は思う。
……なにか、また丸め込まれた気がする……。
ところで、夢ダンスを櫻花が選んだのは流行りモノだったからという理由だけではない。
『夢』は夢野寛、通称"夢カン"がソングライティングしたものだが、随所に埋め込まれている、いわゆる"ヨナ抜き音階"が、雅楽の一ジャンルに通じていて櫻花の耳には心地よく、彼女の中での意欲を刺激していた。
「このダンスは基本的にその場所から動かないし、直立だから、袴でも充分いけると思うのよ」
「ていうか、神様はそんな舞でいいんですか?」
「いいの。こっちにしてみりゃ無料のサービスなんだからね。ケチつけられるいわれはないわよ」
「……」
櫻花にとって、"神様"というのはどれくらいの地位にいる人たちなんだろう……たまに朱里は思うことがある。
しかしとりあえずそれを口にしないでいると、櫻花は神楽鈴を朱里に手渡した。
「ただしこれは持ってね」
「これですか?」
本来の夢ダンスは素手で行っている。
「アンタねぇ。ただの遊びじゃないのよ? 神様にささげる舞に神楽鈴を持たないでどうするの」
「あ、はい……」
なんとなくさっきの言葉と矛盾してるようなしてないような言葉に翻弄されながら、結局朱里は言われたとおりにセッティングされるしかない。
「でも、拝み手だったり手首が複雑に動くところはどうするんですか?」
夢ダンスは手首から先の歯切れのよさが魅力であり、長い五色布を伴う神楽鈴はどうしても手枷になってしまう。
……と思えば、櫻花は何てことない顔で神楽鈴を持ちながら超高速で手首を返してみせた。
「できるじゃん」
「あなたの手首はどうなってるんですかぁ!!!」
「まぁ巫女舞何十年も舞ってりゃね。この程度のことはできるようになるわよ」
巫女舞にそのような早い動きはないはずなのだが、まぁ一流のプロスポーツ選手が、その競技の道具を使って競技とは関係のないパフォーマンスも一流にこなすようなものなのかもしれない。
「朱里もちゃんとついてきてくれなきゃダメだから、ちょっと筋トレしようね」
「え!?」
「まず腕立て三十回を三セット」
「九十回!?」
「ううん、三十回を三セット」
「同じじゃないですかぁぁぁ!!!」
「全然違うよ。じゃあ朱里は朝昼晩のご飯の量を一食で全部食べられる?」
「……」
……何か間違ってる気がするのに、どうしても朱里は櫻花に勝てない。
~ ひとときの思い付きだよと、うそぶき
何気ない顔して、すり抜けてく帰り道
趣味なんか何もないよと、首振り
無個性な奴だと、嘲られて生きるんだ ~
フレーズに合わせて、小さくて切れのいい動きに袴の裾がなびく。普段は重く荘厳な舞を舞う二人だけに、神が見たら目を点にして唖然とするだろうが、彼女らは割り切って、慣れない動きを楽しそうに受け入れている。文化祭や体育祭などで、普段経験がないのに、いきなり俳優然と役を演じだしたり踊りだしたり……そういうノリに似ているか。
~ 子供の頃からずっと、思い描くことがある
形になるまできっと、言い出せないけれど ~
指を鳴らしながら膝でリズムをとったり、ちょんちょん小刻みに回転しながら小さく跳ねていく姿に、「わたし、何で今こんなことやってるんだろう」的な、はにかんだ笑顔が自然に漏れてかわいらしい。
これはまぁ朱里が美人なのも手伝っているかもしれないが、総じて楽しいことをしている時の女性の笑顔というのはかわいらしい。冒頭にも言ったように、戸惑いながら、笑いながら、楽しそうに振り付けをしている二人の、自然に咲くはつらつとした表情は、拝殿にとても魅力的な空気を作り出していた。
ただ……もともと二人の舞う巫女神楽は動きが大きい。大きく腕を広げて、神鳥が大空へ飛び立つが如く、外へと広がってゆくような……なめらかでゆったりとした、艶のある美しさを身上とする。手の元へ楽しさを集めながらかわいらしく踊るこのダンスの中に、時々ぞくりとするような優雅さが垣間見え、もともとの夢ダンスとは少し別の雰囲気を形成している。
ついでに、要所要所で力強く手首にスナップをつけ神楽鈴を翻すため、シャンと鳴る神秘的な音が、振りに不思議な清涼感を与えていたり、ところどころ巫女舞独特の要素が加わったり……。単純にダンスとしてみると、ごった煮のようになっていて好みが分かれるのかもしれないが、巫女衣装の赤と白が軽快な音楽に、はためく姿は美しく、先ほど唖然とした神々も「まぁいいか」と許してくれるのではないかというほどの完成度をもって成立していた。
~ 僕の中にある衝動、見失いがちになること
でかい夢があること、いつも忘れないで ~
拝殿の外には、日が暮れても容易に鳴き止まないセミたちが終わらぬ夏の暑さを伝え、それが『夢』という熱しやすく冷めやすいフレーズをいつまでも暖めようとしている。
巫女たちはもったりと分厚い空気の中で汗を散らしながら、夜が更け往くまで何度も繰り返し踊り続けた。
~ 誰にも言いづらいこと、趣味といいたくないもの
夢に飛び込む僕の、小さな意地、熱い気持ち、いつかかなう日まで ~
「おっけー、ありがと朱里」
野菜や果物、米、塩、お神酒を並べて、白地の垂れ幕を施した部屋は、障子を開け放てば縁がある。外の空気と一体化している造りは古い日本家屋であれば普通だが、拝殿のそのような様子は、現在の一般的なマンションに住む朱里にはとても開放的に思えて、特に夏は好きだった。
縁側に焚かれた送り火。おがらという、送り火の際に用いる麻の煙がふわふわとうだる暑さに乗って空へと還ってゆく。
新御霊祭の祭典のあと、宵の明星と共に静かになった神楽神社で、一月練習した例の"夢ダンス風巫女舞"を披露して、それをビデオカメラに収めた櫻花が録画ボタンの停止をしながら朱里に礼を言った。
「やってみたかったんだよ、こういうの。一人じゃなくて二人でさ」
……確かに、実際やってくれる巫女を探そうとしてもなかなかいないだろう。というか、言い出せまい。
朱里がくるようになってからの櫻花は毎日が楽しそうだ。ずっと一人で切り盛りしていた神楽神社だから、トコトコといつも後をついてきてくれる妹的存在は彼女の生活のハリになっているのかもしれない。
「じゃあお願いね。二個動にアップされたの確認したら五百円渡すから」
そういってビデオカメラを朱里に渡す。朱里はそのビデオカメラを、生まれて始めてみた道具のようにしばらく見入った。
「あのぅ……このビデオカメラからどうやって今の映像をパソコンに送るんですか?」
「え? 知るわけないでしょ。テレビで見られるんだからパソコンで見られるんじゃないの?」
誰がやってくれたのかは知らないが、神楽神社はすでにそういう環境がセッティングされているため、ビデオの画像をテレビで見ることは可能だった。
「それを含めて調べてくれないと困るわよ」
「わかりました。兄にも聞いてみます」
実際、ホントに困っているのは朱里のほうだろう。
苦心の末、ようやくパソコンにビデオカメラを繋ぎ、"二つの動画"へのアップの仕方を知って、「さぁアップしましょう」と動画を確認した時、朱里は座ったパソコンの椅子から転げ落ちるような勢いで神楽神社に電話をした。
「櫻花さん!!!」
「はいもしもし、どしたの?」
携帯の向こうから聞こえる能天気な声。眠そうな声ともいえる。
「大変なことになってます!!」
「だからどしたの? アンタ、タイヘンなことじゃなかったら深夜一時にあたしを起こした代として五百円もらうからね」
「そんなことされたらわたし、タダ働きじゃないですかぁぁぁ!!!」
いや実はビデオカメラに繋ぐ方法や"二つの動画"への登録の仕方を兄に聞いていて、ちゃっかりした兄にアイスをおごらされているので、正確には赤字になる。
しかし櫻花は落ち着いたものだ。
「タイヘンなことならいいのよ。とにかくなに?」
「ダンスの映像に……!」
「うんうん、そんな大声じゃなくても聞こえるよ」
そういえば櫻花は地獄耳だと言っていた。巫女なのに。
朱里はもう一度パソコンに映っている映像をチラ見して、言い放った。
「ダンスの映像に、変なのが映ってます!!」
「えー? なに? 朱里のパンツでも映っちゃった?」
「違います!!!」
確認する。たしかに"いる"。
「お……お化け……?」
「お化け?」
電話口で櫻花が首をかしげているのが、朱里側からもわかる。
「なーにを子供みたいなこと言ってんのよ。お化けなんているわけないでしょ」
もう一度チラ見した朱里。
「いますーーー!!! 変なのがーーー!!」
人間、ではない。緑色の肌に、人間とするには長すぎる腕が二本突き出ている。みすぼらしい麻の服を着て、しかしそれが陽気に、朱里と櫻花の裏で踊っていた。
「あーーー、それね」
特徴を悲鳴混じりに説明すると、櫻花は眠そうな声を上げる。
「それは神様だから気にしないで」
「ええええーーーーーーー!!!」
「アユタっていう土神様だよ。今年はアユタ様だけ?」
言われて、咄嗟に朱里は画像を早送りする。
「白いのも出てきましたーーーー!!!!」
「"白いの"とか言わないの。神様なんだから……」
「どんどん増えてます!!! ああっ!! 最後のほうなんて宝塚のラインダンスみたいになってますーーーーー!!!!!」
「……そりゃお盆だもん……当たり前でしょ……」
「何が当たり前なんですかぁぁぁぁ!!!!」
「アンタ、お盆って何のためにあるか知らないの?」
神道の場合、ご先祖様の御霊を迎え入れて、良い神となり家を護ってくれることを願う。
日本の慣習は仏教と神道が入り乱れたところがあるから、どこまでがもともとある神道の考えなのかは定かではないのだが、いずれにしても日本という国に、古来から営々と築き上げられてきた先祖供養、崇拝の考え方が根付いていることは間違いなく、盆には神となった先祖たちが多数、現世を徘徊していても不思議ではない。
「神様たち、楽しそうなんでしょ? 奉げる巫女神楽としても大成功じゃん」
「そうかもしれませんけど!!!」
だってこんな、妖怪学校の運動会みたいな画像……
「『二つの動画』なんかにアップしたら大炎上しますーーー!!!」
「んーーーー、なんで?」
「なんでって聞くなーーーー!!!」
毎度、価値観が違いすぎて説得できないが、これは何とか説得しないと……。場合により社会問題になるかもしれない。それでなくても自分の顔も映ってるのに……。
「えーー、だって、お盆で何もしない家もないものでしょ?」
「まぁ……はい」
「お盆は御先祖様を迎え入れるためにやってるわけでしょ?」
「はい」
「日本中がそれをやってるわけだよね?」
「……はい」
「御先祖様が帰ってくるためのお膳立てをしておいて、いらっしゃった御先祖様に驚くっておかしくない?」
「……」
「そんなの、カップラーメンにお湯を注いで、三分後にカップラーメンができるのを驚くのと同じじゃない?」
「……」
わたしはどうしたらいいんだろう……朱里は返す言葉もない。
「とりあえずアップしてみればいいんじゃないかなぁ。悪いことしてるわけじゃないんだし……」
どうしてコノヒトはこの映像を知っていながら、こんなに能天気なんだろう。
「五百円あげるから……ね?」
「……」
五百円で世間を大騒ぎさせてもいいものだろうか。
「ね? 朱里、お願い☆」
「いや、☆をつけられても……」
お盆の夜は、更けてゆく……。




