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展の巻 劉煌と東方の喧者たち  作者: 柳 しゅあん


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第二章 逸脱

架空の国、架空の時代


9歳で叔父の裏切りにより国を追われた西乃国皇太子:劉煌は、亡き父の遺言である蒼石観音の秘密を解き、幼馴染たちの協力のもと22歳で敵を討ち祖国で即位した。

だが、12年想い続けてきた初恋の人:小春は、中ノ国の皇后となり、失恋の痛手から劉煌は祖国復興に邁進する。そんな中巡り合った女医に、劉煌は知らず知らずのうちに心ひかれてしまうが、彼女の正体は東乃国の皇女で、彼と同様国内の乱から逃れてきたことを知る。彼女の姿に過去の自分を見た劉煌は、彼女を安全に祖国に帰すことに成功するが、正式に彼女を西乃国の皇后と迎えるにあたり、思わぬ妨害が入ってしまった。


劉煌に向けられた刃を身を持ってかばった彼女は一度絶命し、フェニックスの叡智で蘇ったものの、何故か劉煌と劉煌にかかわる人たちに関する記憶を無くしてしまい、、、


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるのでR15としていますが、それ以外は笑いネタありのラブコメ

 そう翠蘭が思って目をつぶった瞬間、彼女の前でバキッという音と共に矢が真っ二つに割れて、力を失った矢はそこで地面にボトッと落ちた。


 翠蘭は何が起こったのか全くわからなかったが、麒麟はその目でしかと目撃した。

 すでに離れ業と思っていた劉煌の、さらなる神がかり的な技を。


 くノ一の訓練で視野が300度もある劉煌だからこそ、矢が1本あらぬ方向に飛んだことを見逃さず、すかさず左手で手裏剣を打ったのである。その手裏剣は矢よりも早く空中を音もたてずに一直線に突き進み、翠蘭の顔わずか1mの目前で矢に命中すると、そこで矢は真っ二つに割れて力尽きたのだった。


「蘭姉ちゃん!大丈夫?」

 慌てて翠蘭の元に麒麟が駆け寄り、少し遅れて劉煌が全ての仕掛けを出しつくさせてから翠蘭の元に文字通り飛んできた。

「怪我はないか?」


 翠蘭は何とか二人に向かって頷くと、劉煌に向かって聞いた。

「陛下、私は陛下が剣を持って、、、その、、、今のようにクルクル動いているのを上から見ていたことがあったと思いますか?」


 劉煌はすぐにそれが黄敏らに襲われた時のことだと気づくと優しく微笑んで答えた。

「ああ。京安で襲われた時に君を屋根の上に避難させたんだ。もっとも、その頃はまさか君が皇女だとは思ってもいなかったけどね。」

 ”やっぱりそうだった...” 

翠蘭は自分の記憶が正しかったのに、心は重くなっていた。


 そんな翠蘭の顔色の悪化を見た劉煌は、疲れが出たのではないかと翠蘭を諭し、麒麟と二人で建物の中を探すので御所に戻って休むよう伝えた。しかし翠蘭は首を縦に振らなかった。


「父は私に蒼石観音を託していたのですから、残りの2体も私が探さなくては、、、」


 人一倍責任感の強い翠蘭は、そう言うと建物に向かって歩き出した。


 男二人はやれやれという顔をしてお互いに顔を見合わせると、翠蘭の後を追った。


 建物の正面に来た時、階段を登ろうとしている翠蘭に劉煌がまた待つよう促した。

「まだ鍵を取っただけだ。他に仕掛けがあるかもしれないから、朕が鍵を開けて中の安全が確認されてから入られるがいい。」


 簫家の二人とも先ほどの仕掛けと劉煌の人間離れした回避術を目撃したことから、今度は劉煌の申し出にまったく抵抗することなく素直に劉煌に従った。


 劉煌は彼らを扉の正面から移動させると、まず鍵と同じ重さの自分の玉を引き出しに入れた。すると引き出しはゴトゴト音を立ててまた元の親柱の中に入って行った。


 劉煌はかなり警戒していたが、その仕掛けは重さだけで動くようになっていたようで、追加の仕掛けは何も起こらなかった。


 劉煌はさらにくノ一モード全開になると、全感覚を研ぎ澄まして八角円堂の入口の扉の鍵穴に鍵をグッと差し込んだ。


 鍵を開ける時とは対照的に扉をバーンと勢いよく開けた劉煌は、懐剣を鞘ごと扉の内側に放り込んだ。


 しかし中から仕掛けが動く様子はなく、劉煌はまた鍵を開ける時と同じくらい慎重に中の様子をうかがってから扉の中へそーっと入って行った。


 暗目付モードに目を切り替えた劉煌は、蒼石観音を見つけるためというよりか、建物の中に仕掛けが無いかを上から下、右から左と、隅から隅までチェックしていた。


 その建物は、扉を開けるとただ一部屋だけの間取りで、広くもなく狭くもない、とても一国の皇帝の占有の建物とは思えないほど、よく言えばシンプル、悪く言えば閑散とした部屋だった。外壁とは対照的に室内は全てが白一色で、天井も床も置いてある机までも白かった。壁には何もかけられておらず、装飾品は机の上に飾ってある数点くらいで、東の壁一面だけが蔵書で埋めつくされていた。彼は蔵書の白い棚に目をつけ、それが密室につながったり、仕掛けが無いかも確認したが、ごくごく普通の棚のようだった。


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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