10 フェンリル様を洗ってみた
「痒いところはありませんか~」
と聞いたら頭、背中、脚と全身を示された
・・・フェンリル様、ちょっと大変すぎやしませんかね?
いえねフェンリル様が宿屋の外の小屋で寝ていたんだよ
え?
宿屋に入れてあげて?
フェンリル様は小型のダンプカーくらいあるので無理です
宿屋の馬小屋?を占拠して御休みです
神獣とはいえそこは3次元に縛られて有限な存在(笑)
結構汚れていました
あ~やっぱり洗うのオレなんだよな?
異様に綺麗好きな日本人の血がドンブラコと入っているオレは思ったね
気が付かなければいいのに気が付いてしまう日本人の血が憎いよね
と言う訳でご領主さまである伯爵様に相談した
助けて!、と
結論として、この世界に石鹸はありませんでした
・・・古代エジプトにすらあったという石鹸がないって絶対に設定ミスだと思う
三幻神を従えた王様だって石鹸を使って身体を洗っていたはずなのに!
と言う訳で伯爵様の権力を使ってお肉の脂身を集めました
街中の肉屋で捨てられる予定の脂が伯爵様の御屋敷に集まったという訳だ
脂身がある肉は美味しいけど、100%脂身はさすがに食べられませんからね
あと灰もね
灰を水に入れて沸騰させればアルカリ液の出来上がり
その上澄みを温めながら脂身を入れてかきまぜていくと石鹸の出来上がり
ただし完全に固まらないのでドロドロの液体状なのはお約束
ちなみに洗浄力は弱かったりする
そりゃそうだ
日本の石鹸は優秀すぎるからな
台所から出る廃油を使った手作りエコ石鹸なんてこんなものだ
あと匂いもいまいち
日本の石鹸は(以下略)
なんちゃって石鹸が出来上がったので伯爵様の御屋敷の外の洗い場 ~石畳が敷かれていて水が排水溝に流れるところ~ を借りてフェンリル様を洗うことにした
もう大変だったよ
なにせフェンリル様は大きいんだ
まず右前脚から洗ったのは正解だった
全身にお湯をかけていたら洗っているうちに湯ざめしてしまったことだろう
・・・なろう小説ではそんなの全然書いてなかったじゃん!ってオレは文句を言いたい
実際に洗ったことがある人間だけが判るアルアルだよな(涙)
あ、ちなみにお湯は伯爵様の使用人の方一同が用意してくれました
フェンリル様を洗えるのはオレ一人
だからフェンリル様とオレが石畳の上で洗っているじゃん?
少し離れた所でありとあらゆる鍋を持ち出して竈を作って火を熾してお湯を作ってくれてます
・・・そりゃそうだわな蛇口を捻ればお湯が出る日本じゃないんだもの
伯爵様を頼ったオレを褒めてやりたい
一人でやっていたら大変だった
というか一日で洗い終わらなかったわ(汗)
あまり汚れが落ちない手製の石鹸を使ってのフェンリル様の毛を洗う作業
バケツを使ってフェンリル様にお湯をかける作業
洗った後はブルブルして水を払ってもらった後にタオル ~伯爵様の使用人が用意してくれました~ を使って水分を取る作業
それが前足、後ろ足、頭、背中、お腹、尻尾とあるのだ
終わった時にはヘトヘトでした
・・・もう二度としないと思った
でも後日フェンリル様が催促してきた時にはさすがにorzになった
ちくしょ~~~っ
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●石鹸(せっけん)
アルカリ溶液と脂を混ぜることによりできる洗浄用アイテム
昭和の時代では天麩羅等の料理に使った廃油を使うことでエコになると主婦が地域で作っていたことがあった
洗浄力が微妙であることと、匂いがあんまりよくないことと、手間がかかりすぎることから人気がいまいちだったので活動はすぐに廃れた
でも異世界小説では中世のお風呂文化がない設定のため、主人公が成り上がるチートアイテムとなっている
本来、石鹸にかぎらず、味噌や納豆等も含めて自作するのが常識なのであるがそれに気が付いていない人間が多い
資本主義の弊害だと言える
『悪魔の辞典@小説家になろう(連載版)@焼ミートスパ著』より




