ともだち
それから、3日後──
「……ねーえ、ナツちゃん」
甘えたような声で。
美羽は、菜月の部屋のベッドで、ぬいぐるみに囲まれて寝そべっていた。胸の下に、大きなうさぎのぬいぐるみを敷いて、うつぶせに。
少年のような、袖のないTシャツと半ズボンで。
「これ、続きないのー? 4巻は?」
ぺらぺらと、読み終えたまんがの単行本をめくりながら、足を動かす。あいかわらず、ひとときもじっとしていない。生まれたての猫のようだ。
「知らない。はるねえの家に行けばあるんじゃない?」
菜月はベッドの下で、クッションに肘をついて、美羽と似たような姿勢で寝そべっていた。だらけきった、サイズのあわないスウェットの上下、まんが本のかわりに、小説の文庫本。もう何十回と読み返した、古いお気に入りの。
「えー、」
不満げに頬をふくらして、乱暴にマンガ本を伏せる。借り物だよ、といいかけて、菜月は面倒になって口をつぐんだ。遥はこのくらいでは怒るまい。どうせ、もらったようなものだし。そう、自分にいいわけをして。
「あ、そういえばさ」
ふいに、美羽は話題をかえた。
「ん?」
「……莉子、見つかったって」
「え?」
菜月はびくんと顔をあげて、美羽の目をじっと見た。何を考えているのかわからない。めずらしく表情のない、澄んだ目。
「ニュース見てない? もうみんな噂してるし。……下流のさ、どこだっけかの支流のとこで。骨が、出たんだって。」
「へえ……、」
それから、また、話題がかわる。
「……あと、さ。ナツちゃん、あたし、病院に行くことになった。」
言いながら、美羽は、ちょっと目をそらした。これは言いにくいらしい。
「え、」
「相談に行くんだって。来週の土曜日。まだ、よくわかんないけど……」
「……そう、」
菜月は、美羽の両親の顔を思い浮かべた。よりこさん。それから、いつも無表情な、美羽の父親。
ボンヤリと、白い壁の建物を思いうかべる。病院。現実感のない単語だ。よいことなのか、悪いことなのか、よくわからない。
ちょっと首をかしげて、うなずく。
「そういや、わたしも報告があるの。……留年、決まっちゃった。こないだ親にも言った」
「おぉ」
美羽は一瞬きょとんとして、軽く手を打ち合わせた。
「りゅーねんって、どうなるの? 卒業できないってこと?」
「とりあえず、一年生をもう一回。必修ぜんぶ落としちゃったからさー。まあ、仕方ないよね」
眉をしかめて、思い切るように首を振りながら。
「あと5回留年したら、あたしと同級生になれるね」
「……やめてよー、洒落になんない!」
ふたりは目を見合わせて、ぷっと吹き出した。
笑い声。それから、
部屋のすみで、あらいぐまのぬいぐるみと、……小さな影が、微笑んだ。




