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ともだちの魔法使い  作者: 楠羽毛
12/27

夜あるく女

 こっそり外に出ると、あたりの灯はもう消えていた。

 住宅にあかりがないのはともかく、街灯すら消えている。停電だろうか、と思う。それとも、たまたま蛍光灯が切れたのか。

 月と、星あかりしか見えない。ほんとうの夜だ。

 足元に気をつけながら、細道をしばらく歩いて、大通りに出る。車は一台も走っていない。どころか、信号が止まっていた。ますます、おかしい。

「……いやあな気配が、濃くなって来たよ」

 えっちらおっちらと、膝関節をまげずにコミカルな足取りで先をあるくダースが、ちいさくつぶやく。


 いったい、なんなのか。

 そういえば、この子はいつから家にいたのだっけ。思いだせない。


 暗くてよくは見えないが、舗装された歩道を、ぬいぐるみが短い足でちょこちょこ歩く光景は、やはり異様である。

 そうだ、と思いついて、菜月は凪色のプリーツスカートのポケットから、スマートフォンを取りだした。これが明かりになるはず。

 つかない。

 電源が入らないのだ。

 何度か試してから、ため息をついて、ふたたび前に目を向ける。風がごうごうと音をたてる。5月だというのに、やけに寒い。もっとちゃんとした上着を着てくればよかった。薄手のカーディガン一枚では、鳥肌がたちそうだ。


 ここは、どこだろう。


 あたりを見回してみる。暗いせいもあるが、知っている道とはとても思えない。ざわざわざわ、となにかがざわめく音がする。


 くすくす、くすくす、と笑い声が。


 ダース、と声をかけようとして、思いとどまった。笑い声は、幾人もの声がいりまじったようで。

「風が、笑っているだけさ。」

 と、少しそっけない声で、ダースがいう。

 菜月はこわくなって足を速めた。前をいくダースは、歩幅が人間の半分もないくせに、ずいぶんと進むのが速い。

 理屈にあわないことばかりだ。

 菜月はこめかみをコツコツと叩いた。集中したいときの癖だ。


 ……ふつっ、ふつっ、と、なにかが細くなって切れるような感触がする。


 ふりむくが、何もない。けれども、感じた。

 たしかに、ここでなにかがいま、切れたのだと。

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