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到着

 2月2日 1045時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 "ウォーバーズ"の航空機が最終アプローチに入った。今回は、このティラナ・リナ空港を拠点として活動することになるが、アルバニアとコソボ国内にあるあらゆる飛行場を自由に使うこともできる。よって、他にはクチョヴァ、ジャデルを代替利用空港にしようとスタンリーは考えていた。これらの空港には、傭兵たちが集結し、アルバニア軍の指揮下でそれぞれ大なり小なりのグループを作って作戦行動をしている。


 コソボ治安軍司令官、イグリ・サビク将軍は次々と着陸してきた航空機を見ていた。戦闘機、輸送機、空中給油機にAEW・・・・・。将軍は"ウォーバーズ"が到着する前から、航空作戦の大まかな指揮を彼らに一任しようと考えていた―――そもそも、航空作戦が可能なのは傭兵部隊だけなのが現状だ。コソボとアルバニアは突然のセルビア軍の攻撃にさらされて以来、即座に共同防衛体制に入った。具体的には、アルバニア軍とコソボ治安軍との間に物資の融通体制、お互いの軍による相互支援体制、基地の相互提供だ。どちらも軍の規模は小さく、装備も旧式のものが大半を占めているため、当然、それだけではセルビアの侵攻を食い止めるのは困難だった。そこで、外国人傭兵部隊を臨時に編成した。特に、航空部隊を中心に、国内の天然資源と飛行場を自由に使用する権利で雇うことにした―――拠点を持つことが少ない傭兵にとって、自由に使える中継基地は重要な場所である。それ程数は多くないが、傭兵部隊による防空体制はできつつあった。


 2月2日 1118時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 "ウォーバーズ"は到着後、早速、空港の格納庫とエプロン、宿舎の一部を使う権利が与えられた―――ケレンコフらと共用ではあるが。佐藤はF-15Cから降りると、すぐに機体の点検をした。先程の空戦でのダメージは無く、日常整備だけですぐに出撃できるようにはなっている。物資は既に倉庫へ運び込まれた。滑走路の方を見ると、自分たちが雇った航空会社のB747-8FやC-5が離陸体制に入っていた。ツァハレムやゲイツは格納庫で輸送されてきた自分たちのヘリの点検をし、作戦ができるようになっているかどうか確認している。


 スペンサー・マグワイヤと高橋正は輸送機で運ばれてきた、屋根にパラボナアンテナが付いたコンテナに入っていった。マグワイヤが電源を入れると、中の照明が点灯し、その中にある飛行機のコックピットそっくりなコンソールが見えた。これはMQ-9リーパーの遠隔操縦装置だ。彼らは、このハイテクのテレビゲームのようなものを、今回、実戦では始めて使うことになる。

「よし、電源は問題なく入ったな。後はシステムのチェックだな」

 高橋がキーボードを叩くと、MQ-9の操縦装置がシステムチェックモードになった。診断ソフトが作動し、不具合が無いかどうか、コンポーネントを順に調べていく。

「センサー・・・・OK、これもOK。ISRレーダーも異常なし。エンジンテスト・・・・」

リーパーがターボプロップ音を立ててうなり始めた。かなり静かな音で―――単発ターボプロップの小型機とそれほど変わらない―――すぐ近くでイヤマフ無しで作業をしていても、全く苦にならない。


 ゴードン・スタンリーはAEWから降りると、先程、自分たちを救ったSu-30の方に向かった。ケレンコフはそれに気づくと、さっと敬礼をして、近づいてきた。

「あなたが司令官?」

 ケレンコフが話しかける。

「ああ、そうだ。ところで、ここを取り仕切っているのは誰だ?」

「そいつは俺だ」

 スタンリーが振り返ると、少しくたびれているが、立派な軍服を来た50代くらいの男が立っているのが見えた。

「コソボ治安軍司令官、イザリ・サビク大将だ」

「"ウォーバーズ"司令官、ゴードン・スタンリーです」

「到着早々で悪いが、状況を説明したい。部下たちを集めてくれるか?」

「わかりました。場所はどこで・・・・?」

「空港の会議室だ。それと、そこのロシア人も一緒に来てもらうことになるな」


「・・・・・・以上で状況の説明を終わります。質問はありますか?」

 情報担当の中尉が傭兵たちの顔を見回したが、誰も手を上げる気配は無い。みな、ブリーフィング中はメモを取ったり、地図やタブレットで情報を照らし合わせたりしている。現在、セルビアはかなりの地上戦力をコソボとアルバニアとの国境付近に展開させており、それが両国に雪崩込んでくるのはもはや時間の問題であった。既に国境と接しているコソボとアルバニアの小さな町や村は、セルビアの機甲部隊に占拠されてしまっている場所もある。

「今の双方の戦力比は?」

 ロバート・ブリッグズが手を上げた。

「傭兵部隊もあわせると・・・・・我々と奴らとで2:3といったところでしょうか。全体でですが。実は、我々と敵の両方に切り札のようなものがありまして・・・・・」

「何?切り札だと?」

 ウェイン・ラッセルが顔を顰めた。

「ええ・・・・・。奴らは地上発射式の弾道ミサイルを持っています。情報によれば、それはスカッドとノドン、アグニ2などと確認されています。一方我々には―――厳密には、我々が雇った傭兵ですが、B-52Gが4機、Tu-22Mが8機あります」

「戦略爆撃機か!そいつはすげぇ!」

 オレグ・カジンスキーが思わず大声を上げた。

「とは言え、虎の子なので、むやみに出すことはできないのです。ここぞという時に使わねば」

 ここで、イザリ・サビクが腰を上げた。

「さて、最初の作戦だが、セルビアに占領されているフェリザイ市の奪還をするつもりだ・・・・・」   

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