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フェリザイ奪還-1

 2月5日 0543時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 空港のエプロンに並んだ航空機に燃料が入れられ始めた。サビク大将は航空部隊を幾つかのグループに分け、それぞれのグループに別々の作戦をほぼ同時に進行させるという戦術を取ることにした。そこで、ケレンコフとボンダレンコは事実上"ウォーバーズ"の指揮下に入ることとなった。

 

 今回の攻撃目標であるコソボ南部の都市であるフェリザイは、コソボのほぼ全域が占領しているセルビア軍の一大拠点の一つだ。コソボ政府は公式に抗議したものの、セルビア側はそれを黙殺し、今でも占領を続けている。恐らくは、ここを拠点にしてアルバニア全域を支配するための足がかりにする筈だ、とサビクは考えていた。フェリザイ市を奪還できれば、それだけセルビア軍がアルバニアへ侵入してくるまでの時間を稼ぐことができる。スペンサー・マグワイヤが無人機で偵察したところ、ここにはかなりの規模の機甲部隊が展開し、攻撃ヘリ部隊も待機しているらしい。問題は、セルビア側がどれだけの航空部隊をそこに送り込んでくるかどうかであった。

「・・・・・以上でブリーフィングを終わります。何か質問は?」

 アルバニア陸軍の少尉が集まった一同を見回した。すぐにレベッカ・クロンへイムが手を上げた。

「そこに対空兵器はどれだけ確認できているの?また種類は?」

「先日―――皆さんが到着した日の未明ですが―――、我々の友人である傭兵が、ミラージュでその一帯を偵察していました。ZSU-23や9K33―――皆さんの呼び方ではSA-8でしたね―――と9K37、つまりNATO名SA-11ガドフライが確認されています」

「ふむ・・・・厄介だな」

 ニコライ・コルチャックが唸ってから言った。

「そこで、先程説明した機甲部隊の出番です。幸いにも、我々には多くのT-72やBMP-3があります。この部隊に地対空ミサイルを排除させ、航空部隊の安全を確保します」

「何?」

 ワン・シュウランが目を見張った。

「まずは機甲部隊に対空兵器を破壊させ、ある程度対空兵器の脅威を破壊してから航空部隊による攻撃をします。航空部隊は敵の航空戦力を排除し、必要に応じて対地攻撃をお願いします。最終段階では、ヘリボーン部隊で敵の指令所となっていると見られる市庁舎を制圧、フェリザイ市を奪還します」

 佐藤は正面にある地図を眺めた。確かに、フェリザイ市を制圧・奪還できればコソボからセルビア軍を排除する拠点の一つとして使うことができる。だが、一つ、懸念材料があった。

「敵が焦土作戦に出る可能性は?」

「確かに、町を放棄すると同時に、短距離弾道ミサイルや地対地ミサイル、または巡航ミサイルで市街地を攻撃する可能性は残りますが、ここを抑えなければ、今度は敵の地上部隊がコソボ国内の街道を通ってアルバニア国内に雪崩れ込む可能性もあります」

「なるほど。厄介だな」

「さて、作戦に当たっては、先程も説明した通り、地上部隊を先行させます。航空部隊の攻撃のタイミングは対空兵器の数を減らしてからです。以上、説明を終わります」


 2月5日 0653時 アルバニア ティラナ・リナ空港


 ミハイル・ケレンコフは格納庫の中でSu-30SMを慎重に点検した。搭載する武器は、R-77とR-73、そしてKh-25空対地ミサイルだ。燃料は既に最大離陸重量より少し少ない程度にまで入れられて、エンジンのスタートを待つばかりとなっている。兵装を満載して飛ぶため、"ウォーバーズ"の3機の空中給油機が離陸してすぐに燃料の補給をする手はずになっていた。

「さて、地上部隊の方が先行して作戦をするとは。なんだか妙な気分だな」

 ゲンナジー・ボンダレンコは戦闘機の後席で兵装システムの確認をしていた。

「コソボ政府が守っている領域は、南西部のプリズレンしか残っていない。首都は制圧されているから、政府自体がまともに機能しなくなっている」

 ケレンコフはコックピットに乗り込むと、地上の整備員に輪止めそのままにするようにに指示した。

「だが、ちまちま土地を奪還していたら、そのうちセルビアの侵攻速度に追いつけなくて、コソボ全域が占領されてしまう。それどころか、今のセルビアのやり方を考えると、アルバニアやマケドニアすら攻撃しかねない」

「確かにな。後は、指示待ち、というところか」


 出撃準備をしていたのは、何も戦闘機部隊だけでは無かった。自分たちの仲間が万が一、敵に撃墜され、不時着をした場合に救難行動に出かける部隊も同様だった。


「まさか、こんな事で駆り出されるとはな」

 ロイ・クーンツはS-3Bのハードポイントに搭載されたAGM-65マヴェリック空対地ミサイルとロケットポッドを確認しながら言った。今回の作戦では、対水上戦や対潜戦は有り得ないはずだったが、彼らは捜索救難機として作戦に従事するよう、司令官から指示された。しかし、元々、このアイディアを提案したのはレーダー・オペレーダーの原田景だった。

 S-3BのFLIRは改修により、地上や海上にいる大人一人程度の熱源を拾えるようになっていた。そこで、仲間が撃墜された場合、オスプレイやスーパースタリオンに先行させ、パイロットを捜索させる。必要とあれば、敵に対して対地攻撃をすることも可能だ。

「ケイから聞いたんだが、航空自衛隊では、捜索救難には捜索レーダーや赤外線カメラを搭載したジェット機とヘリのコンビを使うらしい。俺達は、そのジェット機の役目ってわけだ」

 モーガン・スレーターが答える。

「なるほど。しかし、そういう事態になったら困るし、例えなったとしても、制空権は最低限確保してもらっておかないとな。そうでないと、すぐ撃ち落とされて俺達が捜索救難される方になってしまう」

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