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14.千刃対炎舞

14.『千刃対炎舞』



片付けも終わり、目を覚ました生徒達は最前列の特等席へと移動していた。

アリアとリンは会場の中心でお互いに向かい合っているだけ。

暇そうにしているといえる。


『さて準備が整ったから始めるとするか』


軽い開始の合図だったけど私にとってはそれで十分。私は双剣をリンはガントレットを構える。

剣技と拳法。お互いに使う武器も技も違う。だけどお互いにまだ始める気はない。

まずは確認から。


「どうする、最初から全力で行く?」


「そっちの方がいいだろうね。私もアリアもさっきの戦闘で基本的な部分は見せているから」


身体的な能力は先程の生徒達との戦闘でお披露目は済んでいる。まだ見せていないのは個人技能。

リンが炎をかき消したのも個人技能の延長といえる。ただ全力でやりあって会場が持つかどうかは分からないけど。

観客席に被害が飛ばないようにしないといけないのは面倒。


「なら、展開」


「炎よ」


私は自身の周囲に魔法で構成した剣を4本創り出し、リンは拳から肘まで炎を纏わせている。

これがお互いの戦闘技能。遠隔操作と直接攻撃の威力上昇。


「行け!」


「いざ!」


私が剣を2本飛ばすと同時にリンも私に向かって突っ込んできた。その速度は生徒達とは一線を覆している。

通り過ぎてしまった2本を即座に呼び戻している間は2本と双剣でリンの攻撃を捌く。そうでもしないと手数で負ける。

格闘技に炎が加わっているので当たらなくても熱による火傷を食らってしまう。私は装備でそれを防いでいるけど。

実質、防御不能の攻撃となる。服なら燃えるし、鎧なら熱せられて着ていられないだろう。


戻ってきた2本を真上から強襲させるがバク転で避けられ、私もバク転による蹴りを避けることでまた距離が離れる。

だけど休んで暇はない。今度は足にも炎を纏わせて先程の速度よりも速く私に迫る。

流石に私でも反応が遅れる。展開していた剣を前面に重ねるように展開。


「うらぁ!」


重ねた剣の中心部に拳打が当たる。当たった瞬間にリンの肘から炎が噴出し拳の勢いを後押ししている。

これはもう少し爆発力が高まればパイルバンカーになるんじゃないかな。でもその威力に拳が持つと思わないけど。

4本の剣は威力に負けて刃を粉々に砕かれる。砕かれた破片が魔力の残滓となって舞い落ちる。


「どうしたの、この程度じゃないよね?」


「今の状況だとこの程度なの!」


正直周りに観客がいる所為で全力が出せない。剣を撃ち出しまくればいいけど、観客席の防壁魔術を貫きかねない。

太腿にある投擲用の短剣も同じ理由で使えない。こっちは確実に防壁を突破する。

だから目立たないところで剣を創り出したとして6本が目安だろう。


「あぁ、面倒臭い」


再度、魔法で剣を6本創り出す。ちなみに世間には魔術の応用で創り出している説明している。

詠唱していないのもそういうものだと誤魔化しているから問題にはなっていない。

Aランクにはこういった一つの技能に特化している者が多いのも疑われない要因。


「通り名の通りに千も出されたら私でも対応できないよ」


対応されても困る。それは人間やめているという範疇から余裕で抜き出ている。

それに千も出そうとは思わない。やろうと思えば出せるけど全部を制御できるはずもない。

私もそこまでハイスペックじゃないから。


「それは幾らなんでも目立ちすぎる」


今度はこちらから攻める。双剣で上下から挟むように右肩と左腹部を狙う。

同時に背後から2本、両側から2本を攻めさせ残り2本は緊急時用に自分の傍に待機。


「ふん!」


気合を入れるかのような声で全身から炎を爆発させるかのように噴出されて後退を余儀なくされる。

ただ遠隔操作の剣はそのまま突っ込ませた。でも炎が防壁の役割をしているのか身体まで届かない。

炎の特性を持っているけど、別物と考えた方がいい。通常の炎なら貫通するはずだから。

ただこのままだと何も通じない。ならこっちも対策を講じないといけない。


「氷結」


キーワードを唱えると左手薬指に嵌めた指輪が発光。魔法具を行使することを解禁する。

全ての武器が冷気を纏って、薄らと水色に輝くのを確認。これであの炎に対抗できるはず。

試しに突っ込ませて弾かれた4本の内、2本を再度リンに向かわせる。


「流石に今度は簡単にはいかないか!」


左右から襲い掛かってくる剣を拳で弾きながら私に向かってきた。更に4本で迎撃を行う。

拳で弾き、身体を捻って最低限の動きで避け、蹴撃で吹き飛ばす。

それでも剣は再度、リンを襲うからその対応だけで身動きが取れなくなってきている。

ただこれで終わるとは思っていない。この程度で終わるのならばAランクに上がっているはずがないから。


「ふぅぅ、炎龍掌打!」


全ての剣を弾いたと思った正拳突きのような構えから龍の炎を現出させた。いや、それって有り?

大技だろうことは見れば分かるけど、明らかに防壁を突破するだけの威力を秘めている。

避けることは出来るけどそうなると凄惨な被害がでることも明らか。これを防げと?

魔法を使用として防ぐことは容易だけど、この場でやることは出来ない。なら方法は限られる。


「集中しないと」


これからやることは一歩間違えば私自身も大怪我を負うし、後ろに被害を出してしまう。失敗は許されない。

まずは龍の左目にかけて一閃。本体を避けつつ首の根元を断ち切り、胴体を次々と刻んでいく。

魔力の綻びを見つけ、結合を断っていく。そうなればどうなるか。


「それって!?」


リンが驚くのも無理はない。私が実践したのは魔力破壊。姿を維持することが出来なくなった炎の龍は魔力の残滓だけとなり下がり霧散する。

威力も何も無くなったのだから、防壁に辿り着くこともできない。それにその隙を見逃しもしない。

展開している剣を上空からリンへと向かわせ一斉に串刺しにする。もちろんリンの周辺の地面を。


「これで身動きできないでしょ」


剣で腕を挟まれ、身動きできないように周囲にも剣を突き刺している。彼女のが本気で動けばすぐに外れるだろうが、その隙を見逃すはずもない。

どちらにせよ、リンは詰んだのだ。


「はいはい、降参さんだよ」


両手を上げてポーズを決める。同時に会場が割れんばかりの喝采が鳴り響く。

そこまで派手な戦いをした覚えはないけど、この反応からすればリジェネの要望を叶えたことになるかな。

それにしてもまさか勝てるとは思わなかった。

どちらも本気など出していないのだから、隠し事が多い方が不利なのだと分かっていた。

その多さで言えば私が一番多いのだが、リンがあの大技を使ってこなかったら危なかった。


「それにしても最後のあれは何?一応、私の国じゃ秘奥に属する技のはずなんだけど」


「それで合っているよ。私は知っているから使えたけど誰でも使えるものじゃないよ」


「使われたら私の立場がないよ。これでも流派では免許皆伝を貰っているんだから」


その流派について本当なら色々と知りたい。多分私の想像通りの人が開祖であると思う。

そして拳法以外流派もあると思っている。これは想像でしかないがあの人だけが開かなったとも思えない。


「リンの流派って巴流とかそんな感じ?あと楓流刀剣術とか知らないかな」


「アリアに喋っていないよね。それにもう一つの流派については絶対に喋っていないよね!」


興奮するのはいいけど掴みかかって来ないでほしいかな。でもやっぱりあの2人は生きていたか。

3000年前の話だから現代に生きてはいないけど、それでも後の戦争に2人が関わっていない方が助かったと思う。

まぁ当時の2人は客人として招いていて戦争が終わった後にすぐに帰国したのだろう。


「あの技だって楓流の秘奥のはずなのにアッサリと使っているし」


「アッサリと使える技じゃないけど。魔力の流れを見れないと話にならないし、それを可能にする技量がないと意味がない」


「私の相棒でも習得するのに四苦八苦していたのに」


私は魔力の流れを見るという分野において現代人より先を行っているから課題の一つを楽々と突破している。

だから武術さえ習得できれば扱うことは容易といえたかもしれない。それが難しいんだけど。

魔法ばかりに頼っていた前世では使おうとすら思わなかったからね。


「リンの相棒もこの会場に?」


「ううん、私とは別行動をしているから今はいないかな」


それは助かった。また色々と聞かれると面倒だから。

でも会ってみたいかな。その流派の人から私も色々と聞きたいことがある。

それを考えると迷うなぁ。でもリンから話を聞けばあっちからやってくる可能性は高い。


「それじゃお仕事終了。リンもお疲れ様」


「そっちはこれから大変だね。色々と」


最後にお互いに握手を交わしこれにて終わり。私にとっては始まりかもしれないけど。

学園で私のことを知らなかった人達から質問攻めとか、私に指導を頼む人とか。

全部逃げるつもりだけど、学園生活が一変するのは間違いないだろうね。

それを考えると憂鬱だな。


遅くなってすみません。

書いている途中で3人称になったりと試行錯誤。

戦闘描写は難しい。

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