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『普通の恋が、したかった。』  作者: vastum


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第1話 普通を極めた春

朝比奈湊の中学生活は、普通を極めていた。


悪い意味ではない。


いじめられていた訳でもないし、教師に目をつけられていた訳でもない。成績は中の上くらいで、体育もできない方ではなかった。休み時間に一人で机に突っ伏しているようなタイプでもなく、誰かに話しかけられれば普通に返せた。


ただ、それだけだった。


彼女ができる訳でもなかった。


卒業式の日に第二ボタンを欲しがられることもなかったし、誰かから手紙を渡されることもなかった。漫画やドラマの中で見るような、放課後の校舎裏に呼び出されるイベントなんて、当然なかった。


親友と呼べるような存在もいなかった。


一緒に昼飯を食べる友達はいた。ゲームの話をする相手もいた。移動教室でなんとなく並んで歩く奴もいた。


でも、休日にわざわざ会うほどではない。


悩みを打ち明けるほどでもない。


卒業したら、たぶん少しずつ連絡を取らなくなって、そのうち名前を見ても「ああ、いたな」と思うくらいになる。


湊は、それが嫌だった。


すごく嫌だった、というほど強い感情ではない。


ただ、ふとした時に思う。


このまま高校に行っても、また同じように三年間が過ぎるのではないか。


誰かの記憶に残ることもなく。


誰かを特別に思うこともなく。


ほどほどに笑って、ほどほどに合わせて、ほどほどに空気を読んで。


それなりに楽しかった、という曖昧な感想だけを残して終わるのではないか。


だから湊は、地元の高校を選ばなかった。


家から少し離れた、電車で二駅先の、地元より少し栄えた場所にある高校を受験した。


駅前には大きな本屋があり、ファストフード店があり、制服姿の高校生が当たり前みたいに歩いている。中学の時の知り合いがほとんどいない場所だった。


高校からなら、少しは変われるかもしれない。


そう思った。


もちろん、自分がいきなり明るい人気者になれるとは思っていない。


入学初日からクラスの中心で笑って、名前も知らない相手に肩を組んで、放課後には大人数でカラオケへ行く。そんな自分は想像できなかった。


けれど、今までよりは少しだけ。


自分から話しかけるとか。


部活に入るとか。


友達を作るとか。


そういう普通の高校生活を、普通に楽しみたかった。


普通の中学生活を送ったくせに、湊は普通の青春に憧れていた。


四月。


入学式の日。


朝の電車は思ったより混んでいた。


湊は真新しい制服の襟元を気にしながら、つり革につかまっていた。周囲には同じ高校の制服を着た生徒が何人もいる。男子も女子も、どこか落ち着かなさそうで、それでも何人かはすでに知り合いらしく、楽しそうに話していた。


「同じクラスだったらいいよな」


「てか、知ってる奴いるかな」


「部活どうする?」


そういう会話が、耳に入ってくる。


湊はスマホを見るふりをした。


本当は何も見ていない。


画面には、母から来た「入学式、頑張ってね」というメッセージが残っていた。


頑張ってね。


何を頑張ればいいんだろう。


勉強か。


友達作りか。


それとも、高校生っぽくなることか。


駅に着くと、生徒の流れに押されるようにホームへ降りた。改札を抜けると、春の空気が少し冷たかった。桜はもう散りかけていて、歩道の端に薄い花びらがたまっている。


高校までは徒歩十五分ほどだった。


道の途中、同じ制服の生徒が少しずつ増えていく。


湊はその中に混ざりながら、なんとなく周囲を観察した。


明らかに中学からの友達同士で固まっている奴ら。


一人でイヤホンをしている奴。


親と歩いている奴。


女子同士で笑いながら写真を撮っている二人組。


すでに高校生活が始まっているように見える人もいれば、湊と同じように、どこに視線を置けばいいか分からない人もいた。


校門が見えた。


思っていたより大きい。


門の前には「入学式」と書かれた看板が立っていて、その横で写真を撮る親子が何組も並んでいた。


湊は一瞬だけ足を止めた。


ここから始まる。


そう思った。


けれど、胸が熱くなるというよりは、胃のあたりが少し重くなった。


始まってしまう。


そっちの方が近かった。


体育館での入学式は、想像通り長かった。


校長の話。


来賓の話。


在校生代表の言葉。


新入生代表の言葉。


拍手。


起立。


礼。


何度も同じ動作を繰り返すうちに、湊の緊張は少しずつ眠気に変わっていった。


周りも同じなのか、咳払いの音や椅子のきしむ音がところどころで響いた。


式が終わると、新入生はクラスごとに教室へ移動することになった。


湊は一組だった。


廊下を歩きながら、心臓が少し速くなる。


入学式よりも、こっちの方が本番だった。


教室。


これから一年間、自分が過ごす場所。


そこにどんな人間がいるのか。


自分はどの位置になるのか。


中学の時より上に行けるのか。


それとも、また同じなのか。


教室に入ると、すでに半分ほど席が埋まっていた。


黒板には大きく座席表が貼られている。


朝比奈湊。


名前を探す。


窓側から二列目、後ろから三番目。


悪くない席だった。


前すぎず、後ろすぎず、窓も近い。教師からも目立ちにくいし、周囲の様子も見やすい。


湊は指定された席に座った。


机の上には配布物がいくつか置かれている。入学式のしおり、学校生活の手引き、部活動紹介の冊子、提出書類の封筒。


湊はそれらをなんとなくめくった。


その間にも、生徒が次々に入ってくる。


「え、ここ?」


「やば、知ってる人いないんだけど」


「同じ中学の人いた?」


「いたいた、あっち」


教室は少しずつざわめきを増していった。


湊は顔を上げる。


クラスには、もう空気の中心になりそうな奴が何人かいた。


声が大きく、笑い方が自然で、初対面でも距離を詰めるのが上手い男子。


髪を綺麗に巻いて、周囲の女子とすぐに打ち解けている女子。


まだ誰とも話していないのに、なぜか人が寄っていきそうな雰囲気を持っている奴。


そういう人間は、どこにでもいる。


中学にもいた。


そして湊は、そういう場所に自然に入っていくのが苦手だった。


話しかけるタイミングを考えてしまう。


今行ったら変じゃないか。


会話に入って、微妙な反応をされたらどうしよう。


名前を聞いて、その後が続かなかったらどうする。


そんなことを考えているうちに、結局机に座ったままになる。


普通。


また普通だ。


湊は少しだけ息を吐いた。


その時、隣の椅子が小さく引かれた。


女子が座った。


湊は一瞬だけ視線を向ける。


黒髪の女子だった。


髪は肩より少し長いくらいで、特別整えている感じはない。制服もきちんと着ているが、目立つような着方ではなかった。


特段可愛いという訳ではないが、普通の女子、という感じだ。


教室にいても、誰かが振り返るほどではない。


クラスの中心にいるタイプでもなさそうだった。


ただ、どこか落ち着いていた。


周囲のざわめきに流されず、机の上のプリントを一枚ずつ確認している。その手つきが妙に丁寧で、湊は少しだけ目に留めた。


女子はプリントをめくり、ふと湊の机を見た。


「それ」


小さい声だった。


湊は自分のことだと気づくのに少し遅れた。


「え?」


「それ、裏もあるよ」


女子が指さしたのは、湊が今見ていた学校生活の手引きだった。


湊は紙をひっくり返す。


本当だ。


裏面に提出期限と保護者記入欄があった。


「……ほんとだ」


「先生、言わなかったから」


「ああ、うん。ありがと」


「うん」


会話はそれで終わった。


女子はまた自分のプリントに目を戻した。


湊も前を向いた。


それだけだった。


本当に、それだけ。


でも湊は少しだけ安心した。


隣の席の女子は、少なくとも話しかけても変な空気になるタイプではなさそうだった。


それだけで、かなりありがたい。


教室の前のドアが開き、担任らしき教師が入ってきた。


三十代くらいの男性教師だった。


「はい、席ついて。もうついてるか。えー、今日から一年一組の担任になりました、山崎です」


黒板に名前を書く。


山崎修平。


字はあまり綺麗ではなかった。


「まずは入学おめでとう。今日から高校生です。中学とは色々違うこともあると思うけど、まあ少しずつ慣れていってください」


ゆるい。


湊はそう思った。


中学の担任はもっと声が大きくて、初日から規則の話ばかりしていた。山崎はどちらかと言えば、面倒なことは後でいいと言いそうなタイプだった。


「で、早速だけど、配布物の確認をします。机の上のやつ、全部あるか見て」


教室中で紙の音がした。


山崎が一つずつ読み上げる。


入学式のしおり。


学年通信。


保健調査票。


部活動紹介。


学校生活の手引き。


提出物一覧。


湊は机の上に並べながら、隣の女子がすでに綺麗に順番を揃えているのに気づいた。


性格が出るな、と思った。


湊の机の上は少し雑だった。


「あと、学校生活の手引きは裏も見ておいてください。提出物の期限書いてあるんで」


山崎がそう言った瞬間、隣から小さく息が漏れた。


笑ったのかもしれない。


湊は思わず横を見る。


女子は前を向いたままだった。


表情はほとんど変わっていない。


でも、ほんの少しだけ口元が緩んでいるように見えた。


さっき教えてくれたのは、それを先に見つけていたからだ。


湊はなんとなく、負けた気がした。


別に勝負していないけど。


ホームルームはその後も続いた。


校則。


明日の予定。


写真撮影。


教科書販売。


提出物。


連絡事項。


山崎はところどころ話を脱線させながら説明した。


「部活は強制じゃないけど、何か入っておくと友達できやすいです。先生は高校時代、帰宅部でしたけど」


教室に少し笑いが起きた。


湊も周囲に合わせて笑った。


自分の笑い声が、ちゃんと馴染んでいるか気になった。


そういうところが嫌だった。


何も考えずに笑えればいいのに。


休み時間になると、教室の空気は一気に動いた。


前の方の男子が近くの席に声をかける。


「名前なんだっけ?」


「どこ中?」


「部活やる?」


女子たちも少しずつ固まり始めた。


同じ中学の知り合いを見つけた人は強い。


最初から話す相手がいるだけで、教室での立ち位置が安定する。


湊は机の上のプリントをまとめながら、どうするか考えた。


このままでは中学と同じだ。


分かっている。


話しかけるなら今だ。


周りもまだ探り探りだから、多少ぎこちなくても許される。


隣の女子。


さっき話した。


自然にいけるかもしれない。


湊は少しだけ横を向いた。


女子はスマホを見ていた。


画面を親指でゆっくりスクロールしている。


話しかけていいのか。


スマホを見ている時に声をかけるのは邪魔ではないか。


でも、今話しかけなければ、次のタイミングはもっと難しくなる。


湊が迷っていると、女子の方が先に顔を上げた。


目が合う。


湊は反射的に視線をそらしそうになったが、なんとか踏みとどまった。


「えっと」


自分から声を出した。


女子はスマホを伏せた。


「うん」


「名前、なんだっけ」


言ってから、変な聞き方だったかもしれないと思った。


座席表を見れば分かるだろう。


けれど女子は特に気にした様子もなく答えた。


「雨宮。雨宮栞」


「あまみや、しおり」


「そう」


「俺は朝比奈。朝比奈湊」


「知ってる」


「え」


「座席表、見たから」


「ああ」


また少しだけ、負けた気がした。


雨宮栞は、真面目そうに見えて、少しだけ淡々としている。


冷たい訳ではない。


ただ、余計な愛想を足さない感じだった。


「同じ中学の人、いる?」


雨宮が聞いた。


湊は少し驚いた。


会話を続ける気があるらしい。


「いや、たぶんいない。雨宮は?」


「一人いるけど、別のクラス」


「じゃあ、ほぼいないみたいなもんか」


「まあ、そうかも」


「地元?」


「電車で三駅くらい」


「俺二駅」


「近いね」


「近い、のかな」


「知らない」


湊は少し笑った。


雨宮も、ほんの少しだけ笑った。


その笑い方は大きくない。


声も出ない。


でも、目元が少しだけ緩む。


湊はそれを見て、少し安心した。


この人とは、たぶん話せる。


そう思った。


もちろん、そこに特別な意味はない。


恋愛感情なんてものは、まだどこにもなかった。


ただ、新しい教室で、隣の席の人と少し会話ができた。


それだけで、入学初日の湊にとっては十分だった。


昼前には解散になった。


親と帰る人。


中学の知り合いと駅に向かう人。


さっそく何人かで固まっている人。


教室は一気に騒がしくなった。


湊は鞄に書類を入れながら、なんとなく周囲を見た。


もうグループの芽みたいなものが生まれている。


中心になりそうな男子たちは、部活の話で盛り上がっていた。女子の数人は連絡先を交換している。まだ一人でいる生徒もいるが、そういう人たちはなるべく目立たないように帰り支度をしていた。


湊はどこにも入っていなかった。


でも、完全に一人という感じでもなかった。


隣に雨宮がいる。


ただそれだけで、少しだけ違った。


雨宮はプリントを綺麗にファイルへ入れていた。


「ちゃんとしてるな」


湊が言うと、雨宮は手を止めた。


「普通じゃない?」


「俺、今そのまま鞄に突っ込もうとしてた」


「後で折れるよ」


「だよな」


湊は少し迷ってから、プリントを封筒に戻した。


雨宮がそれを見て、小さく頷いた。


「え、今の何?」


「成長したなって」


「初対面で?」


「初対面だから」


湊はまた笑った。


こんな風に自然に返せたのは、自分でも少し意外だった。


中学の時なら、女子と会話するだけで少し構えていた気がする。


雨宮が特別話しやすいのか。


それとも高校初日の空気がそうさせているのか。


分からない。


でも、悪くなかった。


教室を出ると、廊下は新入生で混んでいた。


湊は流れに乗って歩く。


少し前に雨宮の後ろ姿があった。


並んで歩くほどでもない。


声をかけるほどでもない。


ただ、同じ方向に進んでいる。


昇降口で靴を履き替え、外に出る。


春の日差しが眩しかった。


校門の方では、まだ写真を撮っている親子がいる。部活動勧誘の上級生たちが、少し離れた場所でチラシを配っていた。


「新入生? サッカー部どう?」


「軽音興味ない?」


「マネージャー募集してます」


一気に高校らしい音がした。


湊は何枚かチラシを受け取った。


断るのが苦手だった。


気づけば手元には、サッカー部、写真部、文芸部、バドミントン部のチラシがある。


どれに入るかは決めていない。


でも何かには入りたい。


高校では変わりたい。


その気持ちは、まだ消えていなかった。


駅へ向かう道で、湊は前を歩く雨宮を見つけた。


一人だった。


歩く速度は普通。


スマホを見るでもなく、周囲を見回すでもなく、ただ歩いている。


声をかけるか迷った。


朝から迷ってばかりだ。


けれど、ここで声をかけたら、少しは何かが変わるかもしれない。


そう思って、湊は少しだけ歩く速度を上げた。


「雨宮」


呼ぶと、雨宮は振り返った。


「あ、朝比奈」


名前を呼ばれた。


それだけなのに、少しだけ胸の奥が軽くなった。


「駅?」


「うん」


「俺も」


「だと思った。二駅って言ってたし」


「ああ、そうだった」


会話はそこで途切れた。


でも雨宮は歩き出した。


湊も隣に並ぶ。


本当に自然だった。


いや、自然に見えるように、湊が必死に歩幅を合わせていただけかもしれない。


二人の間には、まだ人一人分くらいの距離があった。


近すぎない。


遠すぎない。


ただのクラスメイトとして、ちょうどいい距離。


「部活、入る?」


湊が聞いた。


「まだ分からない」


「俺も」


「チラシ、いっぱい持ってるね」


「断れなかった」


「分かる」


「分かるんだ」


「私も二枚ある」


雨宮は鞄から少しだけ紙を見せた。


美術部と図書委員の案内だった。


「図書委員って部活じゃなくない?」


「たぶん違う」


「なんで持ってるの」


「渡されたから」


「断れなかったんだ」


「うん」


湊は笑った。


雨宮も少し笑った。


駅までの道は、思ったより短かった。


朝はあんなに長く感じたのに、今はあっという間だった。


それはたぶん、隣に話す相手がいたからだ。


駅前に着くと、人の流れが分かれた。


湊は改札の方へ向かう。


雨宮も同じだった。


「方向、同じ?」


「たぶん途中まで」


「何線?」


「こっち」


雨宮が指さしたホームは、湊と同じだった。


「じゃあ、ほんとに途中まで同じだ」


「そうみたい」


二人は改札を抜けた。


ホームにはすでに電車を待つ生徒が何人もいた。見覚えのある制服だけでなく、別の高校の制服もいる。駅のアナウンスが流れ、風が線路の方から吹き抜けた。


湊はホームの端に立った。


雨宮も隣に立つ。


会話はなかった。


けれど、沈黙はそこまで苦しくなかった。


不思議だった。


初対面の女子と並んで黙っている。


普通ならもっと気まずいはずなのに。


湊は線路の向こうを見た。


今日、自分は何か変われただろうか。


クラスの中心に入れた訳ではない。


友達がたくさんできた訳でもない。


高校デビューに成功したかと言われれば、たぶん違う。


けれど。


隣の席の女子と話した。


駅まで一緒に歩いた。


名前を呼ばれた。


それは、中学の頃の自分からすれば、少しだけ前に進んだことのように思えた。


電車が来た。


扉が開く。


人が降りて、人が乗る。


湊と雨宮も車内に入った。


席は空いていなかったので、二人はドアの近くに立った。


電車が動き出す。


窓の外で、春の街が流れていく。


「朝比奈」


雨宮が言った。


「ん?」


「明日、提出物忘れそう」


「俺が?」


「うん」


「なんで?」


「プリント、そのまま鞄に入れようとしてたから」


「信用ないな」


「初日だから」


「初日なのに?」


「初日だからこそ」


湊は笑った。


「じゃあ、忘れないようにする」


「うん」


雨宮はそれだけ言って、窓の外を見た。


その横顔は、やっぱり特別目立つ訳ではなかった。


特段可愛いという訳でもない。


普通の女子だ。


新しいクラスにいる、隣の席の女子。


ただ、それだけ。


それだけのはずだった。


でも湊は、その日、家に帰ってから提出物を確認した時、ふと思い出した。


雨宮栞。


隣の席。


裏もあるよ、と教えてくれた声。


初対面なのに少し淡々としていて、それでいて冷たくはない話し方。


名前を呼ばれた時の、ほんの小さな安心感。


高校生活が始まった。


まだ何も起きていない。


劇的な出会いも、運命みたいな出来事もない。


ただ、隣の席の女子と、少し話しただけ。


それでも湊は、明日が少しだけ嫌ではなかった。


それは中学の頃には、あまりなかった感覚だった。

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