第84話 甘い誘惑
バックコーラスが完璧だった。
猫じゃなくてキラキラ王子だったけど。
こいつの特技欄どうなってるの?
パパじゃないけど、神様の依怙贔屓が行き過ぎてる!
私にも分けてほしい!
「僕もっと前に出ようか?」
「遠慮してください!」
エンディングまで乗っ取られてたまるかっ!!
もっと声を出せってことよね!? これでも頑張ってるのよ!
「こはる頑張って~」
きぃぃぃ!!
猫は応援しているだけ。
じゃあ音源操作は誰がやっているんだろう?
キラキラ王子は私の横。
そう言えば黒い人がいないわね。
背後霊並みにセットなのに。
そう思って視線を巡らせたら、ガラスの向こう側にいた。
キラキラ王子もそうだけど、黒い人も案外なんでもこなすわよね。
それにしてもいくら寡黙とはいえ、居たことに気付かないなんて、ちょっと周りが見えてなかったかもしれない。
もっと余裕を持たないと駄目ね。
「ちなみに今日の夕食はここ」
キラキラ王子が目の前に差し出したのは、一枚の豪華な招待状だった。
紙質がすでに高級。
チケット一枚にいくらかかってるのかしら?
「……高級ホテルのチケット?」
「よく見てご覧」
『肌寒い季節に、心ほどける甘いひと時を。特製チョコレートフォンデュご招待券』
チョコレートフォンデュ!
甘いひと時って書いてあるから、大人向けのビターなチョコじゃない!
私が食べたかった甘いチョコ!
「それでね」
ふわりとキラキラ王子が笑顔を浮かべる。
普通ならその綺麗な笑顔にぽーっとするところだろうけど、私には悪魔の微笑みにしか見えなかった。
「このイベント、今夜限りなんだ」
「……」
「でも曲が完成しないと行けないね」
「やったらぁぁああ!!」
待ってなさい、私のチョコフォンデューー!




