第77話 失恋経験はありませんか
恋をしたこともないのに、どうやって失恋の心境を現せばいいんだろう。
猫にお菓子を取られた時の気持ちじゃダメかしら。
ちょっと想像してみよう。
……イラッとした。
多分これじゃないわね。
よし、明日みんなに聞いてみよう!
お肌の為にも今日はさっさと寝るわ!
翌日。
「おはようございまーす!」
収録スタジオの扉を開ける。
さて、最初は誰に聞こうかな。
「こはるさん、おはようございます」
「お義母さん!! おはよう!」
いた!
人生経験豊富そうで恋愛してそうな人が!
「お義母さん、失恋ってどんな感じ!?」
「そうねぇ、私はあまり経験がないかな。失恋は相手が勝手にするものだから」
「なるほど!」
お義父さんみたいに外見でフラッと惹かれて、勝手に期待して失恋するパターンとかかな。
それは確かに参考にならない。
「白藤さんおはよ……ひぇっ!」
「お義父さんおはよう! 失恋ってどんな感じ!」
「僕は白藤さん一途なの!」
「そっか」
まさかの初恋が叶ったパターン?
お義母さんが肉食で良かったね、お義父さん。
お兄ちゃんの返答は「幼稚園の先生あたり」だった。
答えが雑なので真偽は不明。
答えてくれただけ律儀かも。
「俺は連日失恋中ですよ! あははは!」
そう答えてくれた成瀬さん。
悲壮感が全くないので参考にならなかった。
田中に声を掛けるのは止めた。
隣に陣取る番犬の視線が怖かったとかじゃない。
「おはようございます」
そして現れたのは、万年新婚夫婦な空気を持つキラキラ王子カップル。
こいつらには聞いても無駄そう。
「九条君、日向さんの暴走を止めて!」
「何があったんですか?」
「失恋について聞いてるだけよ!」
「朝から会う人全員に聞いてるんだよ!」
お義父さんの言葉にキラキラ王子の目が楽しそうに弧を描いた。
「どうして聞いて回ってるの?」
「レコード会社から失恋ソングを歌わないかってオファーが来たらしいの。でも恋したことないから分からなくて」
「え、ないの? 10代の女の子なのに!? 君、アイドルだよね?」
お義父さん煩い。
「花より団子なんです」
「……ああ」
学校に通っていた時も、友達がお化粧とか恋でキャッキャしているのを横目に、屋台のおじちゃんの所に通い詰めてたわね。
たこ焼き、美味しかった。




