第70話 みんなで中華
「はいはい、そこまで」
お義母さんの一言で、本日の収録は完全に終了した。
「何を食べに行くか決めたの?」
「味が濃い物!」
「僕は監督が美味しく食べている所をレポできればそれで」
「怖い!」
「はいはーい! 僕中華食べたい!」
お兄ちゃんの後ろから手を挙げたのは猫だった。
「いつ来たの?」
「いまー!」
なるほど、収録が終わる時間に合わせて現れたのね。
つまり皆で食事に行かなくても、猫との予定が入っていたと。
「この人数なら個室がある店がいいよね」
いつの間にか近くにいたキラキラ王子がスマホを取り出した。
「玄、おすすめはある?」
「予約なしで入れる方がいいよね」
あるらしい。
さすが熊さん。
結局、猫が選んだ少し遠い中華になったので、スタッフが車を回してくれることになった。
……熊さんも乗れるやつよね?
そして到着した店は、想像していたより、だいぶ高そうなお店だった。
◇ ◇ ◇
緒方とこはるの暴走に頭を悩ませる高瀬監督。
本来なら収録後のこの時間も、アニメのことで頭を悩ませているはずだった。
でも緒方が優秀なので、仕事には余裕がある。
悩みの種なのに仕事では頼りになるので、拒否するとこちらがワガママを言っているような扱いをされる。
何より白藤と食事に行ける機会を逃したくなかった。
「監督」
頭を抱えながら移動していたら、隣を歩いていた白藤が声を掛けてきた。
そして内緒話をするように肩を寄せてきた。
「緒方君と日向さんの暴走を、一時的にですけど止める方法がありますよ」
「え! 知りたい!」
「皆の前で発表しましょうね。大丈夫、私に合わせてください」
「はぁい」
にっこりと白藤に笑顔を向けられ、何も考えずに返事を返す監督。
彼は知らない。
この後、白藤がとんでもない爆弾を落とすことを。
「あの時、発表の内容を聞いておけば」と後悔したり、「いやでもぉ」と否定を繰り返す未来を。




