第56話 ガチ勢だった
知らない人と一緒にプレイすることになった。
今更だけど、私ってプロ以外と踊ったことないけど大丈夫かしら?
いいえ、これは遊び。
誰が相手でも楽しむのが一番よね!
「実は……このゲーム、結構やってるんです」
「そうなの?」
「でも、二人プレイは初めてで……」
「奇遇ね! 私も初めてよ!」
なんならゲームセンターもこのゲームも初めてよ!
「こはる、音楽はどうする?」
高得点取りたい反面、合わせるなら簡単な曲がいいのかな?
そう思っていたのだけど、人の気遣いを叩き落としたのは青年だった。
「あ、あの……せっかくなら、『BREAK THE NIGHT』で……」
「君、攻めるね?」
『BREAK THE NIGHT』。
前に音楽番組で某バンドと共演した時の曲だ。
歌は覚えている。
踊りは、間違えたら許してもらおう。
「初めていいー?」
「待って、上着脱いでいい?」
一般人は一般人でもこの人はきっと上級者。
ガチでいこう。
上着を猫に預け、髪もまとめる。
「こはるって負けず嫌いだよねー」
「気のせいよ!」
返しながら軽くジャンプして体をほぐす。
「皆も応援お願いね!」
わぁっと周りが盛り上がる中、音楽が流れ始めた。
いっくわよぉぉ!!
♪♪♪
気付けば周囲から手拍子が聞こえていた。
青年と呼吸が重なる。
リズムに合わせて自然と笑顔が浮かんだ。
その瞬間。
ゲームセンターの床が、一瞬だけステージに見えた。
――さぁ、ラストだ。
「みんな、ラスト行くよぉ!!」
片手を挙げてリズムを刻む。
声を合わせろ!
「「We'll see you again!!」」
ゲームが終わる。
画面に表示された結果は――99.8点。
「やったぁ!」
最高の結果にゲームセンター中がどっと沸いた。
「写真撮ろう! 猫、撮って!」
「はいはい」
青年と肩を組んでピースすると、周囲もきゃぁきゃぁ言いながら写真を撮ってくれた。
「勢いで写真撮っちゃったけど、君、顔だして大丈夫だった?」
「はい! あの、このゲームでダンスしている動画で配信しているんです!」
普通にガチ勢だったのね。
ミスしなくて良かった。うん。
「こはる~お腹空いた~、帰ろー」
「そうね、皆今日はありがと! またねー」
そうね、お店の人に怒られる前にさっさと帰ろう。
後日、こはると踊った青年のSNS
「あの瞬間、本当にステージでこはるちゃんと踊っている気がしました。」




