第40話 歌で覚えよう
収録は無事に終わった。
一切のトラブルも、NGすらなく、嫌味なくらいスムーズに。
「じゃあ、行こうか」
キラキラ王子に促され、私たちはそのままスタジオへ向かった。
「頑張ろうね」
「うん……」
「おう、頑張れよ」
田中専属イエスマンは今日は一緒には行こうとしない。
仕事があるから……という建前だけど、本当は私や田中と同じで歴史が苦手らしい。
次に機会があったら絶対に道連れにしてやる!
「わー、何度来ても凄いスタジオだね」
「うん。本当に」
この本格スタジオが個人所有だなんて、いまだに信じられない。
……いえ、違うわね。
スタジオだけじゃない。
建物ごと、あいつの持ち物だった。
「これが歌詞。メロディは今から付けるから、先に目を通しておいてね」
「……がんばろうね」
「田中、目が死んでるわよ」
歌詞がひたすら反復だった。
叩きこむつもりだ。
これ、私と田中が覚えるまで解放されないやつじゃ……?
「田中」
「うぅ無理だよぉ」
「いい、ここを私が歌うから、田中はこっちね」
「えー……」
分かりやすいように色ペンでパート分けして……ああ横で流れるようにメロディが作られていく。
自分を甘やかす時間が欲しい!
「出来たよ。通そうか」
今日は見本なしなのね、ええ、知ってたわ。
「行くわよ田中」
「帰ってご飯食べたいよぉ」
「私もよ」
泣き言をいって通じる相手じゃないのが辛いわね。ええ本当に。
週刊誌にすっぱ抜かれてスキャンダルになればいいのに……その週刊誌を潰しそうよね、怖い。
流れてきたのはまるでアニメのオープニングみたいな、勢いのあるロックだった。
待って、今作ったのよね?
音源はどこ、か、ら……。
背後を振り返ると、スタジオの奥にあるDJブースに熊さんがいた。
いい笑顔で手を振ってくれたけど、え?
熊さんってドラマーじゃないの!?




