第26話 アイドルとヒーロー
「♪凍てつく風が世界を包む――」
届け、届け、あの高みに。
思いを込めて歌い終える。
すぐに駄目だしされないと思っていたら、キラキラ王子は腕を組んで何かを考え込んでいた。
(どうだろう)
上手く歌えたと思う。
少なくとも今の私のベストだったはず。
「……うん」
ぽつりと呟いて視線が合う。
「このまま一曲通してみようか」
「えっ」
駄目だしじゃなく、通しの許可が出た!
(認められた!?)
やった!
ついに!
監督に褒められるより難易度高かっ……。
「まずはアイドルの日向こはるで」
まずは?
嫌な予感にキラキラ王子がにこりと笑った。
「その後、僕が歌ったやつと聞き比べしようか」
つまり要約すると、今までの歌い方はブルーじゃないと。
頑張ったのに。
「うぅ……」
観念してマイクの前に立つ。
そしてアイドルの日向こはるとして、マンドラゴラ・ブルーのキャラソンを一曲歌い切り、宣言された通り二つの歌い方を聞き比べすることになった。
スタジオに流れる私の歌声。
明るくて、キラキラして、きっと皆に笑顔を届けられる。
でも……グリーンの歌い方は違った。
「君の歌い方はアイドルだ。皆に笑顔を届けるなら、あれでいい」
「はい」
「でもブルーは違う」
「ブルーは、クールなキャラだから」
「正解」
キラキラ王子が頷く。
「勘違いしてはいけないのは、ブルーは冷たいキャラじゃない。仲間の後ろから皆を守る。それがブルーだ」
私がやっていたのは日向こはるの声で、ブルーのキャラソンを歌っていただけ。
グリーンが求めているのは、ブルーの声で歌うことだった。
つまり。
「じゃあ、もう一回」
やっぱりそうよね!?
「難易度が高い!」
思わず噛みついた私に返ってきたのは楽しそうな笑顔だった。
「大丈夫、もう出来てるから」
「出来てないわよ!」
リテイクの理由をやっと理解しただけなんだから!
「新曲を歌った時は出来たでしょ」
「……あ」
思わず言葉に詰まる。
「監督に褒められた時のブルーはどんな感じだった?」
あの時は仲間を守ろうっていう決意を強く抱いたシーンだった。
ブルーの表情は変わらなくて。
でも胸の中は誰より熱い。
自然が傷付くことが許せなくて。
逃げる人間たちよりも、自然を守ることを選ぶ。
そんなキャラクターだった。
「うん」
グリーンが満足そうに頷く。
「だから君はもう出来る」
……人間より自然を選んでるわね。
結構非道では?




