第四十五話 ダンジョン探索部
第四十五話 ダンジョン探索部
サイド 矢橋 孝太
放課後、すぐに職員室に向かう。幸い上級生とは階が違うので遭遇することはないだろう。
「おい、矢橋っているか?冒険者部なんだけど」
危ない、タッチの差で教室の前に冒険者部がいた。あれは、ネクタイの色からして同級生か?同学年にも部員がいたのか。
どうにかばれないように歩いて職員室へ向かう。途中で下山と合流して、ノックをしてから扉を開ける。なんとなく職員室って悪いことしていなくっても緊張する。
職員室にいた先生が一瞬だけこっちを見た後、興味なさげに視線をもどす。だが、一部がそのまま二度見してきた。
「すみません、高田先生いますか?」
「高田先生ならあそこにいるけど」
「ありがとうございます」
一番近かった先生に担任の場所をきき、そこへ近づく。
「先生、突然すみません」
「矢橋か?どうした」
担任が疑問符を浮かべてこちらをみる。
彼に、早速創部届を提出する。
「実は、部活を作りたくて来ました」
「部活?」
「はい。内容は――――」
あらかじめ決めておいた活動内容を説明する。担任は難しい顔で創部届を見ている。
「内容はわかった。だが、ちょっと問題があるぞ」
「と、言いますと」
「うちの学校にも冒険者をしているのはいるが、ほら、なんだっけ………そう、冒険者部。あれがあっただろう。部にはいる気がある奴はみんなあっちに行っているんじゃないか?」
「それでしたら、カードのレンタルからのまだ冒険者じゃない生徒の勧誘を考えています」
「レンタル?」
「はい。まだ冒険者でない生徒に声をかけていくつもりなので、冒険者部に興味はあるけど入れない生徒が集まるはずです」
そう、ばらまきである。いや貸すだけでレンタルなんだけど。
この作戦を実行するにあたり、自分は駅を二つまたいでオークのダンジョンまで行ったのだ。
レンタルする使い魔はオークとナーガを予定している。
どちらもCランクカードであり、並の冒険者からすれば垂涎の使い魔だ。二週間かけて四回ダンジョンに向かい、それぞれ十枚のカードを確保している。
これを餌に冒険者になりたい、けどお金がない、ダンジョンが怖いという生徒を勧誘する。ダンジョンに興味がある奴ならCランクカードの強さは想像がつくはず。
餌にするならエルフなどの見た目がいい使い魔の方が釣れるのでは、と考えたが、美形の使い魔はいらぬ諍いを生みそうなのでやめといた。まあ、作戦を話していたらナーガに反応した変態もいたが。
「レンタルなあ……冒険者部もやっているが、あまり教師としては……」
やはりというか、教員にはあまり評価がされなさそうだ。この高校はなんだかんだ進学校。学業に専念していい大学に行ってもらいたいというのが本音だろう。
だが、正直自分のようなコミュ障に派閥を作る手段はこういったものしかない。
「勿論、レンタル料の取り立てや利子がどうこうといったことはやりません。買い取りはありですが、それだけです。ロストした場合も金銭が動くことはありません」
冒険者部は、噂でしかないがノルマがあったりレンタル料という名の上納金があったりと、色々問題があるらしい。
表ざたにはなっていないが、教員もそういったことがこちらでも発生しないか心配しているのだろう。
「でもなぁ……ほさ、顧問も、この時期は見つけるの難しいんじゃ」
難色を示す担任に、心苦しいが最終手段、『ここまでの個人の実績を盾に校長と直接交渉』を実行に移すしかないか。
「高田先生、加藤先生、ちょっと」
そう考えたところで、いつの間にか職員室に来ていた校長が担任ともう一人の先生を呼ぶ。
目が合うと、にこりと笑いかけられた。なんだろう、人のよさそうな顔なのに凄く胡散臭い。
「協力……キャリア……」
「地域貢献……新しい生徒集め……」
「学校の宣伝……今後の社会の在り方……」
なんかあんまり聞こえちゃいけない単語が聞こえる気がするが、きっと気のせいだろう。そうに違いない。
「あー、この創部届は受理する。顧問は加藤先生がやってくれるそうだ」
「よろしく。吹奏楽部と兼任だからあまり部室には行けないだろうけどね」
加藤先生は白髪が目立つ年配の先生だ。たしか優しいと生徒に評判のはず。ただ、昔はおっかなかったという噂もある。
「よろしくお願いします」
「部室は部活棟の三階に空きあるからそれを使えばいいかな」
「そうですね」
加藤先生と担任が部室を決める。三階か……冒険者部がどの辺か知らないけど、近くないと言いなぁ。
「書類の受理とかあるから、活動は明日からかな。今日はもう帰って大丈夫だよ」
「わかりました。お忙しい中ありがとうございました」
二人に頭を下げた後、奥の方にいる校長にも下げておく。業腹だが、彼の援護射撃がなければ厳しかった。
「失礼しました」
職員室をでて、ほっと一息つく。
「よかったな、矢橋」
「ああ、どうにか第一関門クリアだ」
滝沢たちも胸をなでおろしている。
さて、本当に大変なのはここからだ。明日からは学校の掲示板に部員募集のポスターを貼る予定だ。デザインは、滝沢と佐藤の三人で話したが、全員センスがなかったので味気ないものになってしまった。
下山にも見てもらったのだが、彼もこちら側のようだ。結局このままいくことになった。
ポスターを貼れば、伊藤や冒険者部にもこちらの動きがわかるだろう。何らかの攻撃があるかもしれない。特に冒険者部。
だが、ここまで来たら立ち止まれない。卒業まで安全に過ごすためだ。
それにしても、物で生徒をつって派閥を作り、教師の後ろ盾をえて活動する……なんか学園物の悪役じみている気がしないでもない。
翌日、授業を終えて職員室で加藤先生と合流した後、部室に向かう。
「ここが部室になる部屋だね。今後は職員室にカギを置いてあるから、それで出入りしてね」
「はい、ありがとうございます」
加藤先生と話していると、部室のドアが乱暴に開かれる。
「おい、どういうことだ!」
そう怒鳴り込んできたのは、ネクタイからして三年の先輩だった。
「どうしたのかね?」
「っ!いえ、その……」
先生の存在に気づいた先輩は苦い顔で部室を見わたし、自分と目が合うとずんずんと近づいてくる。
「お前が矢橋か」
「はい、そうですけど………」
「昨日も今日も教室に会いに行ったんだけどよぉ、いなかったがこんな事していやがったのか」
「まあ、はい」
「どういうつもりだ、おい。冒険者の部ならもううちがあんだろ」
やはり冒険者部だったか。
睨みつけてくる先輩に、こちらも意識して胸をはる。
「こ、この部は魔石や薬草の採取による地域貢献が主でして、そちらの冒険者になる事によって社会経験を積むという目的とは違うものでして」
ちょっと声が裏返ってしまった。というか先輩の目がやばい事になっている。
「どういう意味だ!俺たちの部は初心者用で、お前らの方が上だって言いたいのか!」
「そういうわけではありません。我々は」
「てめえ!見下してんじゃねえぞ一年のくせに!」
だめだ、話を聞いてくれそうもない。そこに、加藤先生が手をたたいて割って入る。
「まあまあ落ち着いて。ヒートアップしてはいけないよ」
「くっ」
教師の目があるのを思い出したのか、先輩が少し冷静になる。
「おい、どうした」
「ちゃんと話ついたのか」
部室の前に別の先輩たちがくる。言っている事からして他の冒険者部だろう。
「……今日は戻ります」
「そうしておきなさい。ゆっくり落ち着いて考えてから動くようにね」
「はい……」
加藤先生がニコニコしながら釘をさす。この先生、やっぱ少しこわいのでは?
自分から離れる直前、先輩がぼそりと呟く。
「……すっ」
よく聞こえなかったけど、聞こえていない方が精神衛生上いい気がする。
先輩たちが去っていくと、少し間を置いて加藤先生も部室を出て行った。
「じゃ、私は吹奏楽部の様子を見てくるから」
「あ、はい。ありがとうございました」
閉められるドアに、ため息をはく。
予想通り、冒険者部が動いた。だが、まさかここまで敵意を向けられるとは。やはり、年下がイキっていると思われているらしい。
「どうするよ矢橋、あの先輩めっちゃキレてたぞ」
「いや、予想通りだろ。放置でいいんじゃね?」
「中学の頃の僕だったらちびっていた自信があります」
滝沢たちが各々口を開く。一人いらん報告をしているが無視だ。
「とりあえず、あとはどれだけ部員が集まるかだな」
これで誰も集まらなかったら派閥も何もない。ちょっと胃が痛くなってきた気がする。
その夜、正樹さんから電話がある。
「もしもし、矢橋です」
『あ、孝太か?正樹だ。悪いな、こんな夜中に』
「いえ、まだ起きていましたので」
まあもうすぐ寝るつもりだったのだが、それは言わなくていいだろう。ちょうど金剛にスキルをかけたところだ。
それにしても、他の使い魔にはいいがゴーレムの大角は部屋に召喚できないので寝る前にバフをかけられない。どうしたものか。
『えっとさ、お前の高校ってもしかして『明英高校』だったりする?』
「はあ、そうですけど」
『そっかぁ………なんか、すまん』
「えっ」
ちょっと嫌な予感がするのだが、いったい何だと言うのだ。
『実は、そこに転校することになった。というか、明日転校する』
「………はあ?」
何を言ってるんだ、この人。
読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます。励みにさせていただいています。
今後もよろしくお願いいたします。




