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防衛戦隊ディフェンジャー  作者: きり
第1章 普通の(?)の女子高生
26/26

24 初めまして

「イテテテテ」

 投げ飛ばされた時に、まともに頭から地面に着地した私は、当然の事ながら後頭部を強打した。

「無事か!?」

 赤の人を跳ね退ける勢いで青の人が私の傍らに膝を突いた。

「おい、こら、危ないだろうが!」

 赤の人の主張は青の人に聞こえているのだろうか……。

 青の人に助け起こされながら、すみませんとかなんとか口の中でモゴモゴと答えた。

「だいたい、お前は何時もぼんやりし過ぎなんだ」

 次いで怒ると言うよりぼやく様に言いながら、赤の人は私が立ち上がるのを青の人と助けてくれた。

「ま、結果オーライでいいじゃねえか」

 さっさと変身を解いた緑の人が、バンと私の背中を強打して私達を追い越して行った。

 ……い、痛いです。

「またか。お前はどうして何時もそういういい加減な事を言うんだ!」

 舌打ちしながら赤の人が緑の人を追う為に手を離した。

 支えられていた左側が、行き成り外れ、私は軽くよろめいた。

「大丈夫か?」

 右側を支えてくれていた緑の人が、崩おれそうになる身体を引き上げ支えてくれた。

「すみません」

「いや」

 ……き、気まずい。

 助けて貰っておいてあれなんだけど、どうにもこの人は苦手だ。

 支えて貰っている今ですら、助けて貰っていると言うよりは寧ろ捕まっているという強迫観念に襲われるのは気のせいですか?

「お疲れ様」

 ポンと軽く肩を叩かれた。

 見ると既に変身を解除した桃色の人が笑顔を見せて先を行く二人を追い掛ける様に通り過ぎて行く所だった。

「お疲れ様です」

「解除」

 桃色の人を目で追っていると、隣から青の人が呟くのが聞こえた。

 反射的に横を見ると、青の人が変化を解いた所だった。

「しないの?」

 目が合うと、青の人が言った。その顔は何を考えているのか分からない何時もの無表情な物だった。

「え? ……しないのって?」

 言葉を繰り返す私に、青の人が私に覆い被さる様に左手首を取った。

「……え」

「解除」

 掴んでいたのは、私の腕ではなかった。正確には、腕にはめていた変身ブレスだった。

 時間が止まった気がした。

「お前は誰だ?」

 私を見据え、青の人が言った。

 彼のその台詞で、私は変身を解かれた事を悟った。

「おい、帰るぞ!」

「早くしろよ!」

 先を行く皆が声を掛けて来た。

 青の人は無言で私の手首を掴んだままその手を後ろ手に押さえ込み、背中を押した。

 押されてよろけそうになった私は、地面に目を落とした。すると視界にある筈の無い物が入って来た。

 スニーカーにジーンズ。

 変身前には確かに制服姿だった私は、自分の今の服装が信じられなかった。

「誰だ、そいつ!?」

 素顔を曝した事よりも、今の自分の服装の方が信じられなくて半ば呆然としていた私は、緑の人の声に我に返った。

「イエロー」

 端的に答える青の人はそれ以上は答え様とはしなかった。

『皆さん、至急、お戻り下さい』

 私のも含む全ての変身ブレスからシロさんの声が聞こえて来た。

『そちらにいるイエローも必ず、お連れ下さい』

 一方的にそう告げると、通信は途切れた。

「イエローも、だそうだ」

 青の人がそう言うと、驚いている皆を残して私を聖神域から連れ出した。

「ほら、ぼけっとしてないでさっさと被る」

 聖神域から出た私が連れて来られたのは一台のバイクの前だった。その横には車が二台ともう一台バイクが止めてあった。

 青の人がバイクに留めていたヘルメットの一つを私に差し出した。言いながら自分もヘルメットを被ると彼はバイクに跨がった。

「早くしろよ」

 言われて慌ててヘルメットを被り彼の後ろに跨がった。

「しっかり掴まってろよ」

 そう言うと、青の人はバイクのアクセルを吹かした。



     *



「よっ!」

 基地に着くと、私は青の人に促されるまま、最初の日に入ったモニタールームに似た部屋に連れて行かれた。

 そこには既にシロさんが待っており、その横にはお兄ちゃんが立っていた。

「……って、お前」

 何故か私を見たお兄ちゃんがぎょっとした顔になり、何かを確認する様にシロさんの顔を見た。

 見られたシロさんが軽く頷くと、お兄ちゃんは珍しい生き物を見る様な目で私の顔をまじまじと見た。

 う、気持ち悪いから、お兄ちゃん。

「お前!?」

「鷺沼君!」

「いったいこれはどういう事なんだ!」

 その時、遅れて入って来たディフェンジャーの三人が背後で驚きの声を上げたのが聞こえた。

 そんな中、青の人だけは無言で私の横に立っていた。

「悪いな。実は、こいつ、俺の弟なんだ」

 近寄って来たお兄ちゃんが私の両肩を掴み、無理矢理私を皆の方向に振り向かせる。

 その言葉に、一斉に皆の視線が私に集まった。

「弟か。確かに、似ているな」

 緑の人がさっきのお兄ちゃんの様な視線を向けて来た。

 いやだから、気持ち悪いって。

「可愛い弟さんね」

 桃色の人がそう言って微笑んだ。

 ……って、皆さん、男の子と認識して疑わないんだ? 状況としてはとても好ましいけど、若干傷付くのは何故だろう。

「いや、問題はそこじゃねぇだろうが!」

 赤の人が話を元に戻す。

「こいつがお前の弟だってのは分かった。だが、聞きたいのは、何故こいつがイエローだったのか、って事だ」

 赤の人の言葉に私が身を硬くしていると、お兄ちゃんが私を安心させるかの様に、私の肩を叩いた。

「俺が今、就職活動中でこっちに時間を割けられないから、代わりにこいつにディフェンジャーをやって貰っているんだ」

 ちゃんと鏡異人の許可も取っているから、とお兄ちゃんが告げると、皆はポカンとした顔になった。

「……って、地球の一大事とお前の就活、どっちが大事だって言うんだ!?」

 いち早く我に返った赤の人がお兄ちゃんに掴み掛かった。

「就活に決まっているだろうが!!」

 赤の人の手を軽く叩き落とすと、お兄ちゃんは当然と言わんばかりに踏ん反り返って爽やかに宣言した。

 お兄ちゃん、気持ちは分かるよ、気持ちは。でも時として、もう少しオブラートに表現する術を覚えて欲しいと思うのは我が儘ですか?

「そんな事で地球の平和なんて守れる訳ないじゃないか!!」

 もう、本当に至極ご尤もです。

 私はお兄ちゃんの大人気無い発言に顔が赤くなる思いだった。

「だったらお前が俺の老後の面倒までみてくれるのか!!」

「自分の面倒くらい、自分でみられないのか!! この役立たず!!」

 互いに顔を近付けて怒鳴り合っている姿に、身内じゃなくとも情け無くって涙が出そうだ。

「子供の喧嘩ね」

「封神笛が使えるんだし、別に問題ねぇんじゃねぇの?」

 桃色の人と緑の人が呆れた様に呟いた。

「貴方はどうお考えですか?」

 シロさんが私に問うた。

 見ると二人を除く全員が、私の答えを待つ様に私を見詰めていた。

「あの、わた……僕が兄の分まで頑張りますから!」

 最後は叫ぶ様に言う。

 すると言い争っていた二人はぴたりと口を閉ざした。

「俺も早いとこ就職先を決めるつもりでいるから」

 黙り込んだ赤の人にお兄ちゃんがぼそりと告げた。言葉にはしていなかったけど、その言葉には“頼む”という言葉が含まれている気がした。

「鏡異界の方達はどう思っているんですか?」

 赤の人がシロさんに尋ねた。

「勿論、了承するしかないでしょう」

 と、きっぱりとシロさんは言い切った。

 その答えに赤の人が何かを言おうと口を開き掛けるのをシロさんは片手を挙げて制した。

「それに第一、もう彼は何度も貴方がたと共に戦っているのですから」

 シロさんの言葉に、赤の人が呆然とし、緑の人はそれで背が縮んだのかと納得し、桃色の人はそうだったのと感心し、青の人は……何時もの無表情だったので何を考えているのか分からなかった。

「おま……それは反則だろうがー!!」

 我に返った赤の人が叫んだ。

 それは言っちゃあおしまいだよ。

 私は一人溜め息を吐きつつ、桃色の人にトイレは何処かと尋ねた。

「あ、じゃあ一緒に行こうか」

 私は彼女に連れられて、喧騒の中を出て行った。

 廊下を歩いて直ぐの所に扉が二つ並んでいた。

「ここよ」

 その内の一つを彼女が指差し促されるままに私はトイレに入った。

 ……って、ここ、男子トイレじゃないか!

 男子トイレ特有の立って用を足す物体に、思わず乙女らしい悲鳴が漏れそうになった。

「待て待て! 落ち着け、私!」

 そう呪文の様に唱えながら視線を足元に落とした。すると視界にスニーカーとジーンズが入って来た。

 そうでした。私は今、“男の子”でした。

 どういう仕組みなのかは知らないけれど、変身を解除した私は男の子の格好に変わっていた事を思い出した。

 ふと、何かを感じ、振り向いた私を見ていたのは懐かしさを感じる見知らぬ男の子だった。

 短髪にダボッとしたシャツにジーンズという姿の彼に、私は固まった。

 恐る恐る手を挙げると、彼も手を挙げた。

 ……鏡?

「え? え? え?」

 ……こ、れって?

「いやーーーっ!!」

 男子トイレに私の悲鳴が(こだま)したのだった。

.

 兎にも角にも、問題山積みの私のヒーロー生活は今新たな幕を開けたのだった。

 ……で、これから私どうなるの!?

※2006年10月22日~2007年9月24日自サイト(閉鎖済み)にて連載。

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