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聖女転生~異世界旅行は黒猫と共に~  作者: うえりん
第一章 聖女蘇生
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第四話 センパイ

新キャラ続々登場。

 実は神さまに会って生き返りました。豊穣祈願については大丈夫です(多分)。え? この猫ですか? ええっと……実はこの子も神さまに会ったっぽくて……名前? 名前は先輩……そう、センパイです! わたしのパートナー(?)です!


 落ち着いた村人に詰め寄られたミラは必死に説明した。

 転生については触れなかったが、嘘にならない程度に適当に。


 だが、まず最初の言葉からしてまずかった。なにしろ神さまに会ったと言ってしまったのだから。


「なんと……! では、あなたに奇跡が起きたというのですね!」


 クロイス神父のミラを見る目が、丸きり神さまに向けられるものになっていた。口調もすごく丁寧。他の村人はただ寝て起きただけじゃね? くらいにしか思っていないようだが、ミラとしてもそちらの方がなにかと楽だった。

 なにしろ、この世界における宗教は法より深く、王よりも広く信奉されている。面倒なことになるに決まっている。


 ともあれ、ミラは復活の聖女として祀り上げられてしまった。

 先輩の生まれ変わり(だと思う)の黒猫も一緒に。


「とにかく、一度魂を召し上げられ、復活したのは事実。今はゆっくりお休みなさい」


 お言葉に甘え、ミラは与えられた教会の一室に引きこもることにした。まさか生まれ変わってまで引きこもりになるとは思わなかったが、今は仕方ない。迂闊に出歩けばたちまち人に囲まれ、ボロが出ないとも限らない。


「ねえ、センパイ。センパイって先輩の生まれ変わりなの?」

「にゃ~あ」


 これだけは確認しなければと思いベッドの上でセンパイと向かい合っているのだが、どうも要領を得ない。相手は猫だから仕方ないのかもしれないが、話していてもあくびばかりしている。小鳥を追いかけに行ってしまったこともあった。これで本当に元人間なのだろうか。


 実はわたしの勘違いじゃないか? そう思い始めていた。


「まあいいか。神さまの言ったことは気になるけど、話し相手がいるのは嬉しいし。ねー? センパイ?」


 センパイはミラの膝の上で丸くなり、すぐに寝てしまった。


 しかし暇である。

 耳を澄ませば教会の中で忙しなく動き回る足音が聞こえてくるが、ミラは完全に放置である。


 とりあえず、状況を整理しよう。

 佐藤心美はミラとして生まれ変わった。田舎の村に住む不幸だが普通の少女だ。

 言葉がわかるのはありがたい。前世では英語は苦手だった。

 これが夢でないなら、ここは間違いなく異世界のはず。村人はみな日本人には見えなかったし、植物も見慣れぬものばかりだ。猫は普通にいるみたいだが。


「なら、能力もあるはず」


 努力が報われる能力。これこそ、ミラが今最も気になっていることだ。

 あの時はやる気満々でお願いしてしまったが、冷静に考えるともったいなかったかもしれない。努力すれば一定の成果が得られるのは前の世界でも同じだ。


(やはり魔法の杖とかの方がよかったか? いやいや、チートを使って得た成果なんて胸を張って自分のものだと言えはしない)


 生まれ変わったミラは前向きなのだ。


「しっかし、この能力、どうやって使うんだろう?」


 そんな独り言を呟いていると、コンコンと、控えめに扉がノックされた。反射的に居住まいを正してしまう。


「どうぞ」

「失礼、します……」


 そう言って扉を開けたのは見覚えのある女の子、村娘のシェイラである。ほっとして入室を促すが、どうしたことかシェイラはミラを見つめたまま固まってしまった。


「シェイラ?」

「……ハッ! ごめんなさい。じゃなくて! 申し訳ございません!」


 我に返ったシェイラはその場に膝をついて首を垂れた。


「わたくし、聖女さまの身の回りのお世話を仰せつかりました、シェイラでございます。どうぞ、なんなりとお申し付けくださいませ」

「ちょ、ちょっと、そんな畏まらないでよ。いつもみたいにミラちゃんでいいから」

「いいえ。滅相もございません」


 顔を上げようともしない。顔を見るのは失礼にあたると思っているのだ。


(どこの王さまだわたしは)


「とにかく、顔を上げてよ。わたしはなにも変わって……ないこともないけど、ちゃんとシェイラのことも覚えてるし、普通に接してくれた方が楽だから」

「しかし……」

「ね? お願い。聖女さまのお願いだよ? いい子のシェイラは聞いてくれるよね?」


 ミラが笑いかけると、シェイラはぐっと喉を詰まらせ、突然駆け寄って来た。センパイが慌てて飛び起き床へと逃げた。


「ミラちゃん!」

「おっと。はいはい、ここにいるよ。心配かけたね、ごめん」


 腕の中で泣きじゃくるシェイラを見て、ミラもまた、思い出していた。


(先輩が死んだときのわたしも、泣いたなあ……)


 自分の死を悲しみ、復活を喜んでくれる人がいる。それに気付ける人が一体どれだけいるだろう。

 多くの人は己の死に一切干渉できない。人の優しさに気付けるのはとても幸せなことだ。

 シェイラが泣き止むのを待って、ミラはセンパイについて訊ねた。


 センパイは半年前に聖域の中で見つけたという。聖域とは、ミラが目覚めたあの洞窟のことだ。掃除を頼まれたシェイラが祭壇の下で丸くなっている子猫を見つけ、それがセンパイだったのだ。


 生まれて間もないと思われるセンパイを不憫に思ったシェイラは、秘密で飼い始めた。幸い聖域に近づく者は少ない。掃除を任されたシェイラが一番出入りするくらいだ。村に余裕がない今、子猫を飼うなどもっての他だが、シェイラは自分の食事を分け与えた。


 そして半年後。ご祈祷が行われることになったので、一時的に他の場所に移していたのだが、どうしたことかそこを抜け出し聖域に入って来てしまった。ミラが聞いた叫びはそのときのものだ。少女の願いも空しく、センパイは聖体(生贄にされる娘をこう呼ぶ)にちょっかいをかけ始め、ミラはそれに反応して目覚めたというわけだ。


「チョビ……あ、その子の名前。チョビがまさか神さまのお使いだったなんて知らなかったよ。名前を呼んでもそっぽ向いてたのは、そのせいだったんだね」

「どうかな。でも、先に名前がついてたならそっちで呼ぼうか。ねえ、チョビ?」


 センパイはツンと顔を背けてしまった。


「もう、センパイは昔っから意地っ張りなんだから」

「ミラちゃん、気にしないで」

「いいや、気にするね。あ、閃いた。二つ合わせてチョビセンパイにしよう! これならいいでしょ。わたしは単にセンパイって呼ぶからさ」


 センパイはしばし嫌そうな顔をしていたが、小さく「にゃ」と鳴いた。変なところで人間臭い。了承は得られたのでよしとしよう。不思議な黒猫チョビセンパイの誕生だ。


 シェイラが世話役に任命されたのは普段の働きぶりを評価されてのことと、センパイの発見者兼育ての親だったかららしい。


 ミラとしても不満はない。

 普段からよく遊んでいたし、センパイを助けてくれた恩人なのだから。


改行や段落にズレがあるかもしれません。

慣れるまで、どうか温かい目で見てやってください。

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