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発見された場所

維月は、急いで月から元不干渉地域へと降りた。

ルシウスが、それを気取って霧の中から実体化し、二人は共にデロイスが、その辺りを今、担当して見ているディオンと共に、地上で立って待っているのを見た。

二人の足元には、たくさんの天使たちに囲まれて、ベンガルの若者だったらしい、干からびた遺体が、並べて寝かされてあった。

「…なんということ。」維月が、地上へと降り立って、言った。「こんな…まるで、あちらで闇に襲撃された者達の成れの果てのような様よ。」

ディオンが、頷く。

「こちらもそのように。天使たちや人が霧に憑かれて対処せずに過ごしていると、気を補充することもままならぬから段々に干からびて、このようになる。しかし、デロイスは何もないと申しておったのに。なぜにこのような事に。」

デロイスは、言った。

「我は気取れなかった。ルシウスはどうであったか?」

ルシウスも、険しい顔で首を振った。

「我も全く。仮に神がやったにしろ、こんなことが行われておったら霧が発生せぬはずもないし、本来絶対に我には見えるはずなのだ。ゆえ、それを阻止することもできたのに、全く気取れなかった。そも、ここらの霧は余程のことがない限り、我やデロイスの言う通りにしか動かぬ。人や神に憑くのは習性であるが、それすら厳しく制限することができるのだ。現に、我が側近くで守っておるヴァンパイアたちは常、霧に晒されておるが、何もない。それが…なぜにこんなことに。これは霧にやられたのか?」

ディオンは、首を振った。

「分からぬ。主に分からぬと申すなら、我らにはもっとぞ。ただ、この様子は生気を吸い取られたとしか思えない。まだ成神前の神達と聞いておるのに、まるで老人のようにしわがれておるだろう。そんな死に方をするのは、霧に憑かれておったと我らの間では常識なのだ。どう考えても、主らの目をすり抜けて、霧がこれらに憑いて殺したとしか思えない。」

維月は、険しい顔をしながら、言った。

「…そうは言うても、我も気取れませなんだ。月から見ておって、恐らくルシウスよりも見える事もあるはずなのに、全く気配すら…。どういう事なのか。」

ルシウスは、維月を見た。

「我も、このままでは闇がやったと面倒なことになりそうであるし、この辺りを調べてみる。これらが見つかったという地下30キロの場所に降りて、何か分かる事は無いか見て参る。主は、月へ戻っておれ。後で知らせる。」

維月は、頷いてルシウスを見上げて、言った。

「…そう考えると、もしや闇との共存を否と思うておる、神の仕業とも考えられなくもないわね。何しろ、見つかったのはあなた方が潜んでいたあの場所なのでしょう。そこに、悪意を感じるわ。」

ルシウスは、黙って頷く。

だが、ディオンが言った。

「あの場所に、もはや闇は興味もないことは神なら皆知っておる。天使たちとて、我らに従っておってこれまで背いたこともないのに。あり得ぬと思うが。」

維月は、ディオンを見た。

「確かにそう信じたいのは確かでありますが、まだ分かりませぬから。我ら、どうしても長く虐げられて参った過去があるので、どうしてもそう考えてしまうのですわ。闇の気配は、今こうしておっても感じられませぬ。霧が悪さをしておっても、ルシウスならば気取れるはず。まして、地下のあの場所には霧が常充満しておって見えるはずなのに、ルシウスは見えなかった…何かの術が、働いているのではと考えるのが普通です。闇の目すらすり抜ける術があるのなら、気を付けて調べて参らねば。」と、足元の遺体を見た。「…哀れですが、まだ一人見つかっておらぬから。それが、逃げ伸びておることを祈りましょう。きっと、それならその理由を知っておるはずなのですから。」

捜索に出ていたイゴールの軍神達が、あちらから飛んで来るのが見える。

「…後の説明は頼みました、ディオン様。」

維月はそう言ってからルシウスに無言で頷き掛け、ルシウスは頷き返してデロイスと共にスッと形を崩して黒い霧となって地下へと流れて行く。

維月は、光になって月へと打ち上がって戻って行ったのだった。


月の宮へと実体化すると、維心が今日の政務を終えて、月の宮へ来たところだった。

蒼が、一緒に維心の対に来ているのが見えていて、維月は急いで維心の対へと向かった。


居間へと入って行くと、維心が顔を上げて、蒼がこちらを振り返った。

「維月。」維心は、パッと明るい顔をして、手を差し出した。「これへ。」

維月は、頭を下げた。

「お待たせしてしまいまして、申し訳ございません。少し、気になる事がありまして。」

維心は、首を振った。

「良い、蒼から聞いて知っておる。」と、こちらへ寄って来た維月の手を握って、隣りへと座らせた。「イゴールの臣下の子らが、見つかったとか。」

蒼も見ていたのか、と維月は頷いた。

「その通りですわ。ですが…見つかったのは4人で、皆生気を吸い取られた時のように干からびた遺体で見つかりました。神達は皆、その遺体を霧や闇によるものだと判断しておりましたが、実際のところはわかりませぬ。そもそもが、霧や闇の仕業だったらルシウスに分からぬはずがないのです。それに、見つかった場所は地下30キロの、昔ルシウス達が籠っておった洞窟の底。霧が充満しておって、必ず分かるはずなのに。見えなかったということは…何か、嫌な術でもあるのではないかと思うて落ち着きませぬ。何しろ闇との共存は、内心、否という神もまだ居りますので。」

蒼が、言った。

「また仙術とか?」

維月は、首を振った。

「分からないの。今、ルシウスが地下の発見現場を調べに降りておるけど。」

そこへ、十六夜の声が割り込んだ。

《…ってぇことはルシウスにも見えない術を、誰かが編み出して使ってるかもなのか?》

維月は、聞いているのは気配で分かっていたのか、窓の方を見た。

「ええ。とにかく調べてみないと分からないの。新しい闇の存在は、ルシウスにも見えてないし感じ取れてないから…どう考えても、術を使う神の仕業と考えるのが妥当よ。神を殺して闇達にその責任を押し付けるつもりなのかしら。」

十六夜は、答えた。

《分からねぇ。そうだとしても神にはリスクが高い企みだけどな。バレたら自分だってあの子供と同じことになるんだし。神はそれがよく分かってるから、そんなことをするとは思えないけど。》

維心が、言った。

「神はな。ならば、人は?」え、と皆が維心を見た。維心は続けた。「何やら気が大きな人がどうのと言うておらなんだか。昔、仙人がそこそこ居った時に、そんな風な奴らが居たのは確かぞ。仙術がどうのと申すなら、まさか仙人が手を出しておるのでは?」

蒼が、それには顔をしかめた。

「ですが維心様、たかが人に。オレもその人の気配は見ましたが、特にちょっと大きい気なだけで他と比べて特別な色なんかありませんでした。荷運びの仕事をする普通の生活を送る人で。それに、あれから気を付けてルシウス達もその人を見ておったし、変わったことがあれば分かるでしょう。仙人でもありませんでしたしね。」

十六夜が、答えた。

《そうだな、オレも見てたが真面目に働いてるただの人だった。もちろん、地下に潜ったりしてねぇよ。そもそも遺体が見つかったのは、さっきなんだろ?霧が充満してるのに、持って来たらルシウスには見えただろうに。》

維月が、考え込みながら言った。

「…でも、デロイスにもルシウスにも、あそこには何もないように見えていたわけだし。なのにいきなり見えたのよ。術のせいで見えてなかったのかも知れない。だったら、その人を監視し始める前のことでしょう。」

十六夜は、言った。

《だからそれ以前に持って来たらその時見えてるはずが、見えてないわけだろう。見えるようにするには術を解かなきゃならねぇし、どっちにしろそこへ降りてかなきゃならねぇはず。それが見えてない事実が説明できねぇんだ。》

維心は、ため息をついた。

「…まあ、ただの人には神世の現状を知る術すらないゆえ、何故にそんなことをするかということになるしの。根本的に、人には動機がない。我は状況からそうではないかと思うたが、よう考えたら仙人であっても闇と月の事情など知る由もない。そんなことをして何も得はしないのだ。人に地下30キロまで何も機械を使わずに降りるのは無理ぞ。ゆえ、やはり闇や霧の仕業でないなら、神だとしか思えぬな。」

困ったことになった。

維心は、ため息をついた。

状況から、神から見たら闇が知っていて見逃した、もしくはわざとそうして神を殺したように見えてしまう。

維月が言うように、隙があれば闇との共存に異論を唱えたがる神も、居ないわけではないのだ。

それらがこんなことをしでかしたとしても、おかしくはない。

せっかく四方完璧に見張って面倒のない世の中になっていたのに、こんなことがと頭が痛くなる心地だった。

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